96 桜街道へ向かい
「……ねえねえ、姫花ちゃん。私にも蓮くんで遊ぶ……振り回す方法を教えてもらえない?」
「あらお姉さん、いい笑顔。もしかして蓮兄に恨みでも……?」
「ある意味では?」
彼女はさっきまでご友人と遊びに行っていたらしく、今度は私達に混ざって勉強することになった。遊びから帰ってきてちゃんと勉強できるなんて偉いね。しかも私達の中で一番頭がいいであろう蓮くんよりも成績優秀らしい。何でも、同じレベルの問題を難なく解けるのだとか。
だから『良かったら冬休みの課題、分からないところがあったら教えていただけません?』なんて言いながら混ざってきたけれど、全然その必要はなく同級生のように私達と一緒に机を囲んでいる。
蓮くんの隣の部屋は書庫になっているそうで、彼が参考書を取ってくると席を外した隙に小声で姫花ちゃんに話しかけた。
「そうだなぁ……やっぱり甘える時と突き放す時のメリハリ? 普段からの仕込みが大事ですよっ!」
「なるほど……!」
「舐めたアドバイスに納得すんな。ひめ、お前も咲良に変なこと吹き込むんじゃねえ」
「蓮兄お口悪いよ?」
「うんうん、私もそう思う!」
「咲良とひめ、お前らぜってえタッグ組むな!」
小悪魔コンビだろ、と大きなため息を吐きながら座る蓮くん。ちなみに藍那と海斗くんは完全に二人きりの世界で勉強しているから、こちらの遊びには気にも留めてない。ところで蓮くん、姫花ちゃんのことを『ひめ』って呼ぶんだね? その呼び方かわいい。姫花ちゃん、本当のお姫様みたいだし。
姫花ちゃんは蓮くんとよく似た顔立ちで、髪の毛は長い黒髪を耳くらいの高さでハーフツインお団子にして結んでる。下ろしてる方の毛先はふんわり巻いてるのかな。遊びに行くためにおしゃれしたのではなく、基本的にいつでもこんな感じらしい。全部がかわいい女の子だね。
「そういえば皆さん、受験勉強はどんな感じですか? 私も今頑張っているところなのですけど」
「姫花ちゃーん! 聞いてくれる!? この中で私だけ仲間はずれなの……!」
姫花ちゃんの『受験』という言葉に即反応した藍那が思い切り抱き着きながら噓泣きを披露する。こればっかりは私も何も言えない。悪いけど、苦笑するしかない。
「何かあったのですか?」
「裏切り者その一、海斗。彼はプロのバレーボール選手を目指しているのだけど、今年の夏にあったインターハイが終わった後に志望校から推薦をもらったらしくて、ちょうど昨日合格発表だったの! 結果は……」
「あはは……もちろん合格」
「ほらー! おめでたいけど、もう受験が終わってるんだよこの人!」
もう本当に涙でも出ているのではないかというくらい、本気の訴えだね。普段通りの声量で必死に叫んでる姿、傍目に見ると少し面白い。ちなみにしっかり祝った後だから、『受からないでほしかった』とかそういう意味で言ってるわけではないのは分かる。
「裏切り者その二、咲良と蓮! 蓮のことは姫花ちゃんも知っていると思うけど、二人も成績優秀だから志望校から推薦もらったらしいの。それで一次選考は合格、二次選考もこの前終わったって。後は共通テストだけ!」
「たしか蓮兄は東都大学の医学部だったっけ?」
「ああ」
「というわけで、共通テストを除けば私以外の三人は受験が終わったようなものなの……!」
みんな私を置いて行かないで、と泣き真似を続ける藍那に姫花ちゃんは『あらあら』なんて言いながら呑気に藍那の頭を撫でている。
みんなは私がどこの学校を受験したのか知らない。まだ秘密にしているからね。蓮くんとは学校も学部も同じだし、知った時には特に驚くだろうな。
「まあまあ、俺ら全員で勉強を教えてあげられると思えばいいんじゃない?」
「助かるけど……それはそれで鬼畜だからね!?」
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