95 桜に降り注ぐ光
◇
何事もなく過ぎる日常は後から思えばあっという間で、気付けば雪が降る季節となっていた。桜華学園がある地域は都会だから比較的暖かい方ではあるものの、たまにほんの少しだけ雪が降っていることもある。
高校三年生二学期の中間テストと期末テストを終え、冬休みに入った私達は残る学年末テストと大学入学共通テストに向けて猛勉強中。……とある人のお屋敷で。
「咲良お前、緊張しすぎ」
「うん、私もそう思う。咲良はこういうの一番気にしないタイプだとばかり」
そうだよ、これが他の人の家ならね。ただの豪邸に住んでいる友人宅ならばここまで緊張することはない。だけど今回は『結城家』なんだよ。多くの医者が瑠衣に注目するけれど、その注目の相手が瑠衣からすれば結城家になる。結城家は瑠衣のように替えの効かない唯一無二の存在はいないけれど、それ以外の部分で優れているところが多い。この場合、結城家というのは蓮くんのご両親どちらも当てはまっているよ。どちらが経営している病院も、同じくらいすごい存在。跡取りだからこその緊張感なのかな……?
「蓮、そういえばご両親は?」
「今日は早いって言ってた気がするな。お前らが帰る頃くらいか? 妹はもう帰って、」
「蓮兄ただいま!」
「……おかえり」
『妹はもう帰ってくる』。蓮くんは恐らくそう言おうとしたんだろうね。最後まで言い切る前に突撃してきた方が約一名いらっしゃって、額に手を当てたまま項垂れてしまったけれど。
妹さんは蓮くんから何も話を聞いていなかったのか、帰ってくるなり知らない人と目が合って首を傾げている。将来の同業者に挨拶……したいところだけど、素性を明かしていないので今は蓮くんの友人としてご挨拶させていただこうかな。
「はじめまして、お邪魔しています。私は瑠衣咲良。こっちは……」
「天宮海斗です」
「私は伊島藍那と言います!」
蓮くんの友人です、と立ち上がって声を掛けると、彼女は驚いたように上品な仕草で口元を隠した。さっきはノックもなしに蓮くんの部屋に突撃してきたのに、こういうところはお嬢様なんだね。顔も良く似ているけれど、そういう部分でも兄である蓮くんにそっくり。
「あら……蓮兄にもご友人がいたんですね」
「おい」
「失礼しました。そこの馬鹿兄の妹、結城姫花です。皆さんよろしくお願いします!」
「無視すんな。誰が馬鹿兄だ」
「私の兄って二人以上いたっけ?」
「俺だけだな」
「うん、そういうこと!」
ちなみに来年から高校生で、桜華に通う予定です~! と元気いっぱいに笑顔で言う蓮くんの妹さん。私、今すごく感動してる。蓮くんをここまで思うままに振り回せる人間って存在するんだなぁ、って!
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