94 桜に必要なもの
「咲良って、モテるのはもちろんだけどその中でもかなりの人数を一生レベルで虜にしてそうなのが怖いよね~!」
「元気いっぱいに怖いこと言うね……」
失礼なのは承知だけど、好きでもない異性に何十年も好かれ続けるって普通は怖いと思う。私は真逆の意見なんだけど、なんで藍那はそう思うのかな? そもそも高校生の恋なんて長続きしないものだろうに。
「自覚があるのかないのか分からないけど、咲良は蓮のようなカリスマ性があるんだよ。そうじゃなきゃ、都会出身で知り合いがいないのはもちろん、価値観や文化なんかも全然違うのに普通は入学早々あの人気にはならない。知れば知るほど肉汁のように溢れる魅力を感じるし、それが恋愛感情になってしまったらもう後戻りはできないでしょ」
肉汁のように……突っ込みたいところはあるけれど、今は聞き流すことにする。藍那の言う『カリスマ性』というのは、たしかに多少はあると思うよ。蓮くんが隣にいれば霞んでそのまま消えてしまうようなものだけれど。
私のそれは、恐らく幼少期からお父さんの姿を見てきたから自然と身に着いたものだと思うんだよね。お父さん、医者であると同時に瑠衣病院の経営者兼社長だから人を導くのが上手なの。だから少なからず関わってきてはいると思う。蓮くんの場合、それが両親共にだったからカリスマ性がすごいんだと思うよ。
恋愛感情は……まあ、それが目的ではないけど私がこの立場を維持しているからだろうね。四大巨匠『微笑みの咲良』であれば自ずと注目を集めるものだし。
「藍那、東京に行ったことある?」
「小さい頃に一度連れて行ってもらったことがあるくらいかな? でも全然覚えてない。そんなに遠くもないけど、今のところ行く理由がなくてね」
「そっか。じゃあ夢を壊しちゃうかもしれないけど、東京って神奈川とそんなに変わらないよ。もちろん都心部はすごいけど、全体が大都会ってわけでもないから」
価値観や文化は藍那が思うほど違わないんじゃないかな、と続ける。実際、私の実家はすごく栄えているところだけど都心部からは少し離れている。都心部なんて落ち着いて暮らせないだろうからね。病院は別だけど。
「そうなんだ!? でも東京いいな……卒業した後、春休みとかで一緒に東京で遊ばない?」
「いいね。どうせなら私の実家に泊まる? うちの両親、家にいる時間すごく短いから何も言われないと思うよ」
むしろ大歓迎だろうね。特にお母さんは。『あなたが咲良のお友達? いつも仲良くしてくれてありがとうございます~!』とか言ってそう。駄目だな、想像したら頭が痛くなってきた。あることないこと吹き込まれそうな気がするよ。その時はお父さんの出番かな。……これだけで我が家の事情を全部知られちゃう恐ろしさ。
「本当!? それならぜひお邪魔したい……!」
「私も楽しみにしてるよ」
藍那の他に海斗くんや蓮くん、予定が合えば真紀ちゃんあたりも誘って東京を案内するのも楽しそうだよね。ちなみに私が実家に招待すると言ったのは、その頃にはもう素性とかを明かしている予定だから。卒業までにっていう約束があるからね。長く一緒にいたいのなら約束は守るべき。藍那達が私の素性や過去を知って態度を変えるタイプじゃないのはよく分かってるよ。だから後は私の問題。もう少しだけ待っててね。
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