89 桜の望む日常は
「咲良おっはよー!」
「うん、おはよう。なんだかテンション高くない? 何かいいことでもあった?」
「私の頭に注目してください……!」
あっ……私がプレゼントしたヘアピンだ! 何が言いたいのか理解し、嬉しそうにしている藍那と目を合わせるとその通りだと言わんばかりに大きく頷かれた。
「昨日の下校中、誰かの家の塀に置かれてたの! たぶん誰かが拾って見えやすい場所に移動させてくれていたんだと思う!」
「良かったぁ……」
「本当にね。びっくりしすぎて、手に取る時に塀の向こう側へ落とすところだったよ……」
「お前ら、今回は仲直り早かったな」
「だね。俺だけ理由がよく分からないんだけど……」
あー、うん。海斗くんはとりあえず分からないままでいいかも。いつか藍那に告白された時に理解することになるでしょうから。こればっかりは蓮くんも藍那も視線を逸らして誤魔化そうとしている。海斗くんの方も話してもらえないことが分かっているのか、肩を竦めて残念そうにしているだけ。深く聞いてこようとはしない。
ちなみにあの後、家に帰った私はもう一度藍那に断ったことを報告した。相談を受けてるって言ってたし、蓮くんも海斗くんから聞いていると思う。
「そういえば咲良、体調は大丈夫? 昨日長時間外で待ってくれてたみたいだけど」
「見ての通り元気だよ。海斗くんが出て来る三十分くらい前までは校舎内にいたしね」
「それなら良かった。……って、蓮? どうかした?」
「いや……海斗お前、いつから咲良のこと名前で呼ぶようになったんだ?」
「昨日からだけど……俺だけずっと名字呼びだっただろ。だから変えた」
少し照れ臭そうに言う海斗くんに、目を丸くしている蓮くん。そんなに驚くことかとも思ったけれど、よく考えたら二年以上名字で呼ばれていたわけだし。それがこのタイミングで変わったら驚くのも無理ないかもしれない。
「へぇ……何か言いたげだが、俺は変えるつもりないぞ伊島」
「なんでよー! 咲良のことは名前で呼んでるのに!」
あはは……また何かやってるよ。私も蓮くんが私にだけ『咲良』って下の名前で呼んでくる理由が気になってるけど、彼の言動に意味を聞いても無駄だと思ってるから何も言うつもりはない。蓮くん、私に色々言ってくるけど自分も同じくらいよく分からない人間なんだ、っていう自覚ないからね。
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