9 微笑みの桜
◇
「ここがカフェテリアだ」
「食堂として利用されることが多いけれどここで活動をしているクラブもあるし、生徒同士の交流の場でもあ、る……!?」
「瑠衣先輩!」
「先輩もここに来ていたんですね!」
「いいか? これが桜華学園名物、『微笑みの咲良』だ」
ちょっと蓮くん、そんな説明いらないから助けて……!
雑談をしながらカフェテリアに向かい、到着したので蓮くんの言葉に繋げて説明をしていると、いきなり背後から数名の生徒が現れた。突然の出来事に動揺している間にも私を見つけた生徒がどんどん集まってくる。あっという間に囲われてしまい、気が付いたら遠くで眺めている蓮くん達とかなりの距離ができていた。
「はいはーい! みんな学園見学中でしょ! 瑠衣ちゃんに用があるなら休み時間に話しかけようね!」
「咲良、大丈夫?」
「うん。ありがとう、二人とも」
「いえいえ! 人気者は大変だねえ……瑠衣ちゃんも次は全力で逃げなね」
「それができれば苦労しないんだけどね……」
私を囲っていた集団を蹴散らすように手を叩きながら現れたのは同じクラスの女子と藍那。二人は同じ班になったらしい。彼女も藍那ほどではないけどよく話す仲の良い子。離れたところで眺めているだけの蓮くんと違い、私が困っていたらいつも助けてくれる。騎士様かな……?
「基本的にここまでが一連の流れだな」
「蓮くん? よくも私を見捨ててくれたね。蓮くんのことも集団の中に放り込んであげようか」
「おー、怖え女。でも仕方ねえだろ? 俺が助けに行けばこっちまで巻き込まれる」
それはたしかにそうだけど、蓮くんは高嶺の花って感じの雰囲気があるから遠巻きに見つめる子の方が多いと思う。
蓮くんが言っていた『微笑みの咲良』というのは私の二つ名で、他にも『親しみの藍那』『清爽の海斗』『カリスマの蓮』というものがある。私達はまとめて『四大巨匠』と呼ばれ、桜華学園の名物になっているらしい。知らない間に学園中に広まっていたから、最初にこの二つ名を聞いた時は驚いたね。
「咲良先輩、さすがの人気ですね」
「あはは……」
あすちゃんの言葉には笑うことしかできない。自分でも分かっているからね。今のように困る時もある。だけど……この地位があるうちは安心して笑っていられる、かな……
「みんな、待たせちゃってごめんね。次の場所に移動しようか」
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