84 桜もやがて大木へ
結局、あれから私と藍那は一言も交わすことなく、今日を迎えた。明日は海斗くんに告白の返事をしなければならない。藍那関係の悩みまで増やしてしまったけれど、一つずつでも解決しないと頭がおかしくなりそう。ということで、ひとまず藍那とのことについて蓮くんに相談することにした。
「蓮くんは……海斗くんが私に告白すること、知っていたんだよね」
「まあそうなるな。一昨日も言ったが、海斗の恋愛相談を聞いていたから」
「そう……藍那のこと、私はどんな行動を取るのが正解だったのかな……」
「そりゃ、どの結末を望むかによるだろ。例えばお前があいつを心底では嫌っていて、距離を取りたいと考えていたのであれば早々に告白されたことを自慢すれば良かった。だろ?」
そうだね。誰だって恋愛相談をしていたはずの親友にそんな裏切りをされたなら、さっさと縁を切ってしまうと思う。それなら、保留になどせず強引に告白を断ってしまえばある意味では藍那のためになるのかもしれない。でもそれは私にとって最良の結末にはならないんだろうな。
「お前が望む結末は?」
「今まで通りの関係。願わくば藍那の恋が叶えば良いと思うけど、それは私が決めることではないから、せめてちゃんと仲直りしたいよ」
「それだけ答えが出てるなら十分だろ。あれだ、体育祭の時と同じように一回腹を割って話してみるのが一番だな」
「そう簡単にできれば苦労しないのだけど」
「でもお前、今朝辛いことがあったんじゃねえの? 伊島の姿見た瞬間、珍しい顔してただろ」
それは……藍那がいつものヘアピンを付けていなかったからだね。去年藍那の誕生日にプレゼントした、私のリボンと同じ色合いのもの。藍那は陸上部だった時の名残で髪を伸ばすのが好きじゃないらしく、ずっとショートヘアだから短い髪でもかわいくなるようにプレゼントしてみたものだった。嬉しいことにすごく気に入ってくれていて、あれから毎日付けてくれてたんだよ。それが今日に限ってなかった。こればっかりは本当に堪えた。
「それも合わせて聞いてみようかな……藍那に限ってそんなことはしないと信じたいけど、もし『咲良のこと嫌いになった』とか『ヘアピンは捨てた』とか言われちゃったら慰めてね」
「おー、任せとけ」
今日は移動教室が多いし、放課後も用事があって話す暇なく帰らないといけないから、明日声を掛けようと思う。大丈夫だよ、今度はできる。前回初めて藍那とすれ違った時、こういうのは時間が経てば経つほど拗れるし精神的に辛くなると学んだから。
「今気付いたんだけど、蓮くんと海斗くんはずっと仲良しだね?」
「そうでもないぞ? 本気の喧嘩になったことはねえが、下校中に急にピリつくこととか普通にある。一瞬で普段通りになるけどな」
「へぇ……初耳だよ。じゃあ今後も仲良くしててね」
私、二人がたまにする『普通の男子高校生』って感じのノリとテンション、大好きだから。そう言って微笑むと先ほどと同じように『任せとけ』と言われた。今度は優しい笑みではなく、にやりと楽しそうな表情で。
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