83 割れたガラスは桜色
◇
「海斗~! 瑠衣に告白したんだって?」
告白されたことを藍那には話さない。でも海斗くんにはしっかり向き合う。そう決めた文化祭の翌日、お昼休みに藍那と話していると、突然クラスメイトのそんな声が教室内に響いた。休み時間なので当然、教室内にいる生徒も多い。
「……おい、それどういうつもりで言ってんだ? こんなに人が多い場所で言うことか? 無神経すぎるだろ」
海斗くんの答えを待つように静まり返った教室に、いつも通り冷静ながらも怒りを滲ませた声で指摘したのは蓮くんだった。蓮くんは相談を受けていたらしいし、昨日の告白のことも知っているんだと思う。だからこそ、親友の恋愛事情に踏み込んでくるような発言が許せなかったんだろうな。サッと周囲に利かせた睨みには『変な噂を広めるなよ』と言っているのが声に出さなくても分かるくらい感情が込められている。
咄嗟の判断力と行動の素早さがすごい。対する私は絶望にも近い場所へ突き落とされ、たった一言声を出すこともできなかった。海斗くんも目を見開いたまま固まっている。
蓮くんに詰め寄られた彼が言うには、『昨日偶然忘れ物を取りに教室に戻ったら海斗が告白する場面に遭遇してしまった。最後まで聞きはしなかったが、海斗がフラれるとは思えないし、からかうと同時に祝おうと思っていた』とのこと。あの時教室の外に人がいたこと、全然気付かなかった。
自分の席に座る私の横で立っていた藍那をそっと見上げれば、呆然としながらも思い切り唇を噛み締めていた。思わず声を掛けようとし、だけど私が口を開くよりも早く藍那は教室の外へ出て行った。
「悪い……本当にごめん、海斗」
「……いいよ、もう。だけど全員、これ以上この件に触れないでくれると助かるかな。瑠衣もごめん、巻き込んじゃって」
「…………」
巻き込まれてしまったことはいいよ。海斗くんが悪いわけではないのだし、百歩譲って許せる。でも藍那を……こんな形で藍那を傷付けたことに関しては絶対に許せない。わざわざこんな場所で騒ぎ立てた彼も、私自身のことも。
冷静ではあるものの、いまだかつてないほどに蓮くんが怒っていること、海斗くんが誰の目から見ても明らかなくらいはっきりと壁を作ったこと。そして藍那が海斗くんに恋愛感情を抱いていることを知っている人に関しては、藍那が教室から出て行ってしまったのも見てるはず。これだけの材料があれば、きっと学園内で変な噂が出回ることはない。この学園の生徒にとって大きな存在であるからこそ起こった事件で、でもその立場があるおかげで無駄に騒がれなくて済む。本当に、私達の立場は諸刃の剣だなと常々思うよ……
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