78 桜の奇跡
「うーん……ここまで来ると、全制覇したくならない?」
「ならねえ。お前、全力で楽しみすぎだろ。特に食事」
ええ……そうかな? そうでもないと思うんだけど。どうなんだろ……あ、でも地元の夏祭りとか私は一人で行っていたから、帰って報告した食事代に驚かれてた気がしなくもない。甘いものからしょっぱいもの、ご飯系……その日一日何も食べず、夜に全力で満喫するのがデフォルトだったから、たしかに全力で楽しんではいるかもしれない。お祭りってわくわくするもんね。
「でもそろそろお腹いっぱいだよ」
「そりゃ、あれだけ食えば当たり前だろ。俺も口に押し込まれすぎてこれ以上何も入らねえわ」
結局全部シェアしてんだからこれ以上何も買うなよ、と呆れ気味に言われる。でも、蓮くん優しいよね。色々言ってくるけど結局ずっと私に付き合ってくれているんだし。食べ物も全部一人で食べるとすぐお腹いっぱいになってしまうからと言って、毎回半分くらいは食べてもらってる。んー、私もいい友人を持ったものだね。蓮くんは『こういう時だけ都合がいいな』って言うと思うけど。
「瑠衣先輩に結城先輩、こんにちは!」
「こんにちは。日向くんも今は自由時間?」
「はい。と言っても、おれのクラスは学園全体を巻き込んだスタンプラリーの主催なので、当日である今日はほとんどのクラスメイトが自由時間しかないのですが」
「スタンプラリー? って、まさか飲食物の屋台とか……言わねえよな?」
「あれ、内容は秘密で当事者、または噂話からしか伝わらないようにしていたのによく分かりましたね?」
もしかしてどこかで聞きました? と首を傾げる日向くんに、私と蓮くんは顔を見合わせた。えっと……そのスタンプラリー、もしかしてスタンプじゃなくて……
「学園長がノリノリだったのもあって、今回オリジナルのステッカーを用意したんですよ。それを対象の屋台で買い物をした人にだけ配ることになっていて、五枚集まるごとに景品を渡しているんです」
「……あれこれ買い食いしまくったおかげで十枚はあるな。結構もらえるから何か意味があるのかもしれない、とは話していたが」
「まさかスタンプラリーのものだったとは……ちなみに景品は?」
「お菓子の詰め合わせです。おれのクラス、一年四組に行けばもらえますよ。まさか先輩達がもう集めているとは思わなかったのでびっくりしました!」
それはまあ……私が全力で文化祭を満喫していたからとは言えず、呆れた視線を向ける蓮くんと、なぜかキラキラとした目で見つめてくる日向くんから全力で目を逸らし、あはは……と適当に笑っておいた。
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