77 桜の花びら、ひらひら揺れる
◇
あれから、世にも奇妙な蓮くんとの恋バナをやめ、いつも通り雑談をしながら桜華学園に帰った。その間も私は今後どう藍那にアドバイスするのが正解かぐるぐる考えていて、だけど結局答えは分からないままだった。教室に戻って買ってきたものを渡し、ものすごく感謝されながら二人で教室を出る。
「……で、俺と咲良二人でどっか行くとか珍しくね? 何するんだ?」
「とりあえず、お腹空いたから何か買いたい」
「りょーかい。ってか、お前さっきも何か買ってなかったか? いや、幻覚に幻聴か……」
そんなにすぐ自分を疑うことある? 私が答える間もなく自分で完結してしまってるし……普通に買ってたよ、フルーツたっぷりのクレープ。他クラスの出し物のやつだね。だから幻覚でも幻聴でもない。
「なんだその顔」
「面白い男だな、と」
「うるせえ。じゃあやっぱ気のせいではなかったのか?」
「まあそういうことになるね」
突然黙り込んだ蓮くんを見上げると、明らかに引いたような顔で私の顔と手元にある唐揚げを何度も交互に見ていた。
「何か言いたいことでも?」
「……体型の話は、っ痛てえな!」
「次行くよ」
「咲良、お前その顔のどこからこんな力が……」
力に顔とか関係ないでしょう。恐らくさっきの『そんな不健康な食生活でこの体型が保てるとでも?』と言ったやつの話をしているんだろうね。だから余計なことを言うお口は閉じましょう、とすぐ隣にある腕を抓った。睨みながら腕を摩っているけれど、それは少しオーバーリアクションだと思う。
「もしかして、蓮くんって女の子は少食であるべき、みたいな考え方の人?」
「なわけねえだろ。さっきなんか言ってたから突っ込んだだけだ。飯は美味そうに食ってる奴の方がかわいい」
「……かわいい?」
「なんだよ」
「今私の隣にいるのって結城蓮じゃないのかなと思って。影武者とか? ドッペルゲンガー? 私の知ってる蓮くんはこんなこと言わないよ」
蓮くんが何かに対して『かわいい』なんて言葉を使う姿を見たの、二年以上一緒にいて初めてだよ。私に対して言ってるわけじゃないのは百も承知。だとしても、あまりにも似合わない。
「失礼なこと言うな。俺だってそれくらいっ……」
「うるさいよ。それよりあの教室入ろ! たしか美術部の展示だったよね?」
「……お前、ほんと俺にだけは態度が雑だな」
「安心して、他の人にはしない」
「だから言ってんだろ!」
手元に残っていた唐揚げを蓮くんの口に押し込み、パンフレットを見ながら次の目的地へ向かうべく彼の腕を引く。私も別に食いしん坊ってわけではないんだよ。ただ、こういうお祭りごとでは我慢したくないじゃない? 特別な時に何も気にせず楽しむために普段頑張っていると言っても過言ではないのだから。
「こいつ、マイペースが過ぎんだろ……」
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