73 初桜
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そんなわけで文化祭当日。今日も生徒の保護者や許可証を持った人がたくさんこの学園に訪れている。桜華は行事の準備に使う時間がすごく短くて、特に文化祭なんかは必要最低限と少しくらいしか時間を用意されていない。だから自分達で事前に準備しておくのが基本となっている。
今回の文化祭はお父さん達は来れないらしい。出張が決まったとか言っていたかな? 手術を頼まれたんだろうね。それにお母さんも同行するとのこと。文化祭は体育祭と違って出番が少ないし……というか、私は裏方担当だったから当日は展示物くらいしか見れないし、わざわざ県外まで出て見に来てくれる必要はないと思う。
出番が少ないで思い出したのだけど、今年もミスコンとミスターコンがあるらしく、開催決定を聞いた時、同時に私も参加してほしいと言われた。でも私は『人気者』ではあっても他人に点数を付けて見定められるとか嫌だから断ったよ。藍那や海斗くん、蓮くんも同じく。意外かもしれないけど、真紀ちゃんも生徒に慕われているからか誘われていたんだよね。彼女は忙しいからという理由で断ってたかな。たしかに、文化祭なんて生徒会長からすると多忙すぎる一日でしかないだろうね。さっき流れていたオープニングムービーも生徒会が制作したもの。
「ねえ藍那、今日チャンスじゃないの?」
「なにが?」
「『恋を叶えよう、ドキドキ大作戦』だよ。せっかくだし、担当の時間が終わったら海斗くんと一緒に楽しんだら? 私は蓮くんと一緒にいるから」
三年生の初め、この作戦を実行することに決めたけど、結局全然話が進んでいなかった。卒業まであと半年くらいなのだし、そろそろ本格的に動き出した方が良いと思う。藍那と海斗くん、大学は分かれることになるでしょうし、疎遠にはならなくても関わる機会が減るのは間違いない。
「うーん……そう、だね。頑張ってみようかな」
「じゃあ蓮くんには私から伝えておくよ。海斗くんのことは自分で誘ってね!」
「いきなりハードモード……」
だって、こういうのは自分から動くことに意味があるのでしょう? 海斗くんならきっと断らないし、そんなに心配しないで良いと思う。
藍那は私達がいれば普通に接することができるけど、海斗くんと二人きりになると途端に緊張し始めるらしい。恋ってそういうもの……?
「藍那だって、海斗くんを他の女の子には取られたくないでしょう? みんな焦り始めるタイミングだろうし、あの人気なんだから少しでも早めに動きださないと」
当事者でもない私が偉そうに言うなって感じだけど、最初に海斗くんを好きになったという報告を聞いた時、『自分では動けないかもしれないから、いざという時は多少強引にでも咲良に手伝ってほしい』って言われているんだよ。こんなお願いをされてしまったら仕方ないなと思ってね。私は別に他人の恋愛に興味があるわけでもないし、本当に親友からお願いされたから背中を押してるってだけ。
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