71 それは桜だけ
◇
「結城くんに瑠衣ちゃーん! それ終わったらこっち手伝ってー!」
「はーい!」
現在九月上旬。勉強、帰省、お出掛けなど、高校生活最後の夏休みはあっという間に終わってしまった。すでに新学期が始まって数日が経過しており、初日の始業式の日はインターハイやその他引退試合の結果報告なんかもあった。インターハイで優勝し、全国一位に輝いた男子バレー部は特に称えられていたかな。
夏休みが終わればすぐに文化祭の準備が始まる。たった二週間ほどの猶予しかない中で、事前に決めていた出し物を用意しなければならない。ちなみにうちのクラスは『執事・メイド喫茶』を予定している。主に裏方と接客、調理の三種類に分かれており、裏方の人は当日までの準備がすべて。当日は自由に遊びまわることが許されている。その分当日までが忙しくなるけれど。
蓮くんと並んで座り、家から持参したパソコンで配布用のチラシを作る。そう、私と蓮くんは裏方を担当することになっていた。理由は一つ、生徒の中から『絶対変な輩が現れるから』らしい。半強制的に決まったんだけど、私は何一つ不満はない。蓮くんも同じ。接客なんてしたら面倒なことになるに決まってる。ちなみに藍那と海斗くんは接客だよ。クラスメイト曰く、あの二人は『まだ安全』らしいから。
「んー……」
「お前、デザインのセンス」
「こういうのは苦手なの!」
「刺繍作品は上手いのにな。残りは俺がやるから、お前はこっちの発注してくんね?」
「分かりました」
蓮くんの言うように、何かをデザインするということ自体は普通にできるんだよ。でもチラシのように、文字とイラストの配置や色、フォントとか、そういうバランスまで考えなければならないのが苦手。発注はリストに書かれた通りにすれば良いだけだから、代わってくれてありがとね。
「それにしても、私、蓮くんの執事姿も見てみたかったなぁ……」
「いきなりなんだ?」
「こんなだけど、蓮くん容姿端麗でしょう? 絶対似合うと思うんだよね。こんなだけど」
「うるせえ、強調すんな」
ほら、そういうところだよ。後で誰もいない時にこっそり着て見せてくれない? と言ってみると、『覚えてたらな』だって。絶対忘れたふりするやつだ。
私達の会話が聞こえたのか、驚いたように振り返る生徒が何人かいた。でも心配しないで、覗き見しようと考えたところでこの感じだと無駄だよ。
「俺はお前のメイド服も気になるけどな」
「冗談。メイドなんて見慣れているでしょうに」
「使用人は一般人が良く想像するメイド服なんて着ないけどな。そうじゃなくて、俺に対してこの感じの咲良が着るからおもしれえんだろ」
言いたいことは分かるけど悪趣味だよ。せめてもうちょっと褒め言葉になるものを選んで言ってほしい。そんなだからモテないんだよ……?
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