68 桜の縁が交わる時
◇
「────これ、結城家のご両親から」
蓮くん達に話した通り、私は今年もお盆休みに東京の実家へ帰ってきた。お父さんとお母さんは一緒にいたらしく、使用人から仕事が終わって今から帰るらしいとの報告を受け、二人を出迎えるために預かった封筒と共にリビングで待っていた。車のエンジン音が聞こえたのはそれから約十五分後だった。
「結城家から? ありがとう。あと、おかえり咲良」
「ただいま。お父さん達もお疲れ様」
「ねえ咲良、聞いたわよ? 桜華学園の男子バレー部、今年のインターハイは優勝したって! お友達がエースとして出場していたのだったかしら?」
「うん。予選は応援に行ったんだけど、エースって言われるだけあるなと思ったよ」
話の内容がバラバラすぎる。二人ともマイペースだね……と苦笑するお父さんは椅子に腰を掛けながら使用人に食事の準備を頼んでいた。
お母さんの言う通り、今年は海斗くん達のチームが優勝したんだよ。神奈川の県大会と関東大会で優勝していたり、インターハイの予選でも当たったすべてのチームに勝利していたから元々優勝候補ではあったらしい。ちなみに去年優勝したチームは準優勝、準優勝だったチームは三位。つまり、去年負けた相手の実力を今年は上回ったと。相変わらず海斗くんの活躍がすごかったと聞いている。決勝トーナメントの日、予想通り一日中結果が気になって仕方なかった。だからメールで優勝の報告を見た時はすごく嬉しかったの。
「……咲良」
「ん? あ、その封筒開けたんだね。中身は手紙? なんて書いてあったの?」
「えっとね……怒らないって約束してほしいんだけど」
「それなら聞きたくない」
このセリフに続く言葉は私が怒るようなことなのでしょう? こういうお願いをするってことは間違いない。定番のやつだよね。
お父さんの言葉に首を傾げたお母さんは許可を取った後、その手紙を覗き込んだ。反応を見ていると、読み進めるに連れて表情が引き攣っていく。
「……それじゃあ私はこれで。お先に失礼」
「咲良、ストップ。ここに座りなさい」
「嫌だと言ったら?」
「社長命令だよ」
ということは、仕事関係のことなんだね。まあそれはそうか。対して親しくもないはずの結城家からの手紙なんだから。
「単刀直入に言うよ。これは結城蓮と瑠衣咲良の縁談話だ」
……は? ちょっと待って、聞き間違いじゃなければ私と蓮くんの縁談って……たしか蓮くん、内容は知らないと言っていた。私にこの話を持ち掛けてきたということは、今頃蓮くんも話を聞いている……? 何となく、『瑠衣咲良』ではなく『瑠衣家の令嬢』という風に向こうには伝えている気がする。根拠はない、ただの勘だけれど。
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