66 どれも違う色の桜
「海斗、もうちょっと跳べ!」
「はい!」
二十五点先取の三セットがルールとなっている試合で、一セット目は無事に桜華学園が勝利した。作戦会議の後に選手交代やポジション変更などを行い、二セット目が始まって少し。今度は相手チームが優勢になっているけれど、まだ十分取り返しは付く段階。そんな中で監督が叫んだのが冒頭の言葉。
桜華学園側は慣れているのか表情に変化はないけど、相手チームの選手はすごく驚いてる。それもそのはず、海斗くんのジャンプ力はすでにすごく高かったから。まだ高いところから打つことができるのか、と思っているのでしょうね。
これは言葉通りもっと高いところから打てと言っているのか、それともスパイクの回数を増やせという意味なのか……あの感じだとその両方かな?
「ひえぇ……海斗、あれより上があるの……?」
「あいつ身軽だもんな。特別小せえわけでもないのによ。さっすがバレーボール歴十二年目、エース歴三年以上の男はレベルが違えな」
実力も、求められるものも、と蓮くんが感心したように言う。監督も注意してるとかではなく、単純に『まだできるだろう?』という感じだからできなくても怒られはしないんだろうけど、よく通る声で返事をした海斗くんはしっかり有言実行していた。
海斗くんが高く跳べば跳ぶほど、コートに入ってくるボールは勢いがついてより取りづらくなる。そうして海斗くんを警戒していると、他のポジションの人がボールを返したりするので、相手チームは完全に桜華学園のやり方に翻弄されていた。作戦はすごくシンプルなんだけど、実力で殴ってるから上手くいってるんだよね。一人ひとりのレベルが高いからこそ、作戦はシンプルな方がやりやすいのかも。
それに観戦していて私が一番すごいと思ったのが、全員どのポジションでもすごく上手いんだよね。苦手な場所とか全然分からないし隙がない。二セット目はついさっきまで相手チームが優勢だったけれど、それもタイムアウトという休憩時間のおかげで見事に流れが止まった。
「そういえば、去年の順位で考えると今この会場に桜華学園より強いチームはいないんだった……今年も決勝トーナメントには進出できそうだね、この感じだと」
「だな。そのまま優勝できるのが一番だが」
三年生の引退試合であるインターハイだからか、両チームとも全員が試合に出られるよう何度も選手交代をしている。桜華学園もみんな一回ずつは交代しているんだけど、唯一エースである海斗くんだけは一度もコートから出ていなかった。まあそうだよね。みんな上手くて十分強いけど海斗くんが抜けると痛いでしょう。今のところ海斗くんのスパイクは一割くらいしか返されていないし、ひとまずパスは海斗くんに回せば大体得点が入る。交代させる理由がない。
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