55 休む桜に覆う影
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ずっと懸念していた推薦型競技の藍那とのバトンパスが成功して気が抜けたのか、一気にここまでの疲労に襲われた私は、みんなとゆっくり観戦しようと言っていたけど部活対抗リレーで頑張っている彼らを応援する気力は残っておらず、テントから少し離れた木陰で静かに観戦させてもらうことにした。
とは言っても始まって時間が経っているので現時点ですで後半に入っており、一番最後の男子運動部が走っている最中だった。
一年生は知らないと思うけど、うちの学園の先生は割と愉快な人が多い。だから運動部男子のリレーには『先生チーム』というものができて一緒に走ることになっていた。『なっていた』と言っても知らされるのは直前なんだけどね。恒例行事に盛り上がる二、三年生と困惑しつつ面白がっている一年生。先生チーム、運動部男子が相手で勝てるはずないのは当然なんだけど、意外と速いから余計に面白いんだよね。今年も先生チームがあるんじゃないかって、少し前から期待してる生徒もいるくらい。
「咲良ちゃん、体調は大丈夫ですか?」
「うん、問題ないよ。真紀ちゃんもこっちで休憩?」
「ええ。さっきのリレー、本部の方で見ていましたが色々とすごかったですね。過去一盛り上がったのではないでしょうか?」
「やっぱりそうかな? 私もそんな気がしててちょっと嬉しかったの! 歓声もすごかった」
あれだけ応援してもらえると一位をプレゼントしたくなっちゃう、と笑って言うと『分かります』と同じように笑顔で返された。真紀ちゃんも誰かの期待に応えたい気持ちは同じらしい。
私は別に、誰かに期待されるのが嫌なわけではないんだよ。ただ、すごく追い込まれているタイミングで期待されるばかりだとうんざりしてしまうというだけ。だからこういう場での期待が込められた応援はただただシンプルに嬉しいと感じる。
藍那とすれ違う原因になったやつは、練習や準備で忙しかったから余計にストレスになったんだと思う。何事も適度なのが一番だよ。
「真紀ちゃんも剛腕奪取、すごく活躍してたの蓮くんと一緒に見てたよ? 借り物競争も一位だったよね。生徒会長としての仕事もあっただろうに、たくさん練習してるんだろうな、すごいな~って思ってたの」
「本当ですか? ありがとうございます! まさか咲良ちゃんに褒めてもらえる日が来るとは思いませんでした」
「真紀ちゃんは私を何だと思っているのかな……?」
微笑んで首を傾げると、『憧れの人です!』と元気いっぱいに返された。たしかに、以前そんなことを言っていた気がする。あの話は本当だったんだね。
そんなことを思いながら話していると、部活対抗リレーが終わったのか一段と大きい歓声が聞こえてきた。
運動部男子で一位は陸上部、二位が野球部、三位はバレー部で以下その他部活と先生チーム、という結果になったらしい。部活対抗リレーが終わったなら残るは閉会式のみ。この時に発表される特別賞ですべてが決まる。特別賞は三から五つと正確な数は言われていないのもあって、もし一つの団がすべての賞を独占するようなことがあれば青団と緑団以外が優勝する未来もあり得る。だから一番怖いのはここでの逆転かな。この特別賞が青団にとって吉と出るか凶と出るか……
「真紀ちゃん、閉会式始まるしテントに戻ろうか」
「そうですね」
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