53 エピローグは桜と藍と、仲間の力で
青団女子の第一走者は二年生で陸上部の子。短距離を得意としているらしいけど、基礎体力があるからこれくらいの距離なら余裕で全力疾走し続けられると言っていた。だけど相手も……というか、リレー選手はほとんどが運動部か今まで運動をやっていた人だから全員レベルが高い。藍那も今でこそ何もしていないけど、体力作りは欠かしていないとのことだからハンデはほとんどないんだよね。大体みんな実力が拮抗している。
そういう私も運動をしていた時期があるし、藍那には敵わなくてもこうして選手に選ばれるくらいだから負けてない。
まずは三位の状態で第二走者にバトンが渡った。一位とは少し差があるけど、二位の団とは僅差。上々の出だしなんじゃないかな?
私達の場合、サンドイッチ型だった蓮くん達とは違って一気にラストスパート掛けるパターンの走順になっている。だから今の順位を保ったまま私にバトンをくれたら十分に勝ち筋はある。前を走る人とそこまで距離がなければ四位五位でも構わない。私や藍那の相手となる第五、第六走者の人も足は速いけれど、私達はどちらも追っかけ型だからね。こういう競技なら中の下くらいが一番走りやすかったりする。もちろん上位でもいいけどね?
このことは他の四人にも話し、もし抜かれても気にせずできる限り差を開かないようにだけ頑張ってくればいいと伝えてある。そのおかげか、順位の割に余裕を感じられる冷静な顔で走っているね。
「藍那、復習だよ。私はバトンパスのゾーンに入ったらさらにスピードを上げて藍那にバトンを渡す」
「私は咲良との距離が五メートルくらいになったら、咲良のことは何も気にせず最初から全力で走る!」
「うん、大丈夫だね」
じゃあ行ってくる、と第四走者の子が二周目に入ったタイミングでコースに入る。現時点で彼女は最下位、そしてそれなりに距離を開かれてしまっている。これだと私のターンで一位に持っていくのは難しいかな。……いや、私はバトンパスのことだけを考えていればいい。ついでに前の人との距離を少しでも縮められたら、あとは藍那が頑張ってくれる。
「先輩! ごめんなさい、あとは頼みました……!」
第四走者の彼女からバトンを受け取り、全力で四位の生徒と距離を詰める。残り十メートル、五メートル……ひとまず、ただ前の人との距離を詰めることだけを考えて走れば、いつの間にか一周差が付いていた三位の女子の隣まで追い上げていた。現在三位、一位と二位はもうアンカーにバトンが渡っている。夢中で気が付かなかったけれど、今グラウンド内はすべての団の声援で溢れていた。
……もう少しでバトンパス。これだけは絶対に決めなければならない。練習の時蓮くんに言われたのを思い出し、歩幅を広げて思いっきり地面を蹴ってみると、しっかり再加速することができた。
「咲良、頑張れー!」
走り出す準備を整え、白線の前に立った藍那の声援が一際大きく耳に届く。そしてついに藍那との距離が五メートルほどまで近付き、藍那が走り出した。テイクオーバーゾーンの中で渡せさえすればタイミングはいつでも大丈夫。助走ではないからこそ、ギリギリでも問題ない。
「藍那!」
「おっけー! 任せて!」
何とか間に合え……! と心の中で叫びながら思い切り手を伸ばせば、何とか藍那の手にバトンを渡すことができた。驚きと歓喜が混ざった歓声が耳を突き刺す。
そっか……女子の部のリレー選手は練習で何度も私達と走っているから知っていたけど、他のみんなは藍那が助走をしない理由なんて分からなかったよね。不安にさせてしまったかもしれない。申し訳ないね。
でも今から藍那が見せてくれるのは海斗くん達に負けないくらいの大逆転劇だから、目を逸らさないよう、しっかり見ていてね?
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