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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~

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51 海の強さを桜は知らず

 今年の体育祭では入退場時、少し前に流行った有名アイドルの曲が流れることになっているみたい。本日何度目かの音楽を聞きつつ、選手である私達は入場する。流れるのはサビだからみんなも一緒になって歌っていてすごく楽しそう。こういう何気ないワンシーンを後で思い返した時に青春だったと懐かしく思うんだろうな。

 桜華学園の体育祭、私が出場する競技はこのリレーが最後になる。これが終わればもう二度とこの学園の体育祭で競技をすることはなくなる。全力で、でも最後までしっかり楽しまなきゃ……!


「────これより団対抗最終、完全推薦型競技『リレー』を開始します! ルールはシンプル、順位ごとにポイントが付きます。ポイントは男女混合であり、ポイントの高い順に全体での順位が決まります。推薦型競技は通常の競技よりも配点が高くなりますので、最後まで諦めずに頑張ってください!」


 推薦リレーは男子から走ることになっている。青団男子は第一走者が海斗くん、第二から第五走者が一、二年生の子達、そしてアンカーが蓮くん。順番は練習の時と変わっていないけど、まさか本当にこの順番で来るとは思わなかったのかな? 海斗くんと同じ第一走者は一、二年生の子ばかりで驚いてる。これなら余裕で差を付けられるだろうな。


 今までと同じく、スタートの合図となる乾いた破裂音が響き、大勢に見守られる中で五人は走り出した。各団のテントでは生徒が全力で声援を送り、団長や代理の副団長は今まで以上に大きく団旗を振っている。テントはグラウンドを囲うように設置されているからこうして並ぶと色合いがすごく綺麗なんだよ。

 雲一つない快晴の下、緑や白、黄、青、そして赤色の団旗はそれぞれが掲げるテーマと共に大きく揺らめいていた。


 圧倒的な速さで青色のハチマキをはためかせ、二周目に突入した海斗くん。一周の差を付け、最下位で走る男子と海斗くんの姿が並ぶ。待機中の私達の前を通り過ぎようとした時、突然視界から最下位を走っていた男子の姿が消えた。一瞬なぜかと考えてしまったけれど理由は明白。転んだから。きっと海斗くんと一周以上の差が付いたことに焦ったんだろうな。

 海斗くんも急に視界から人の影が消えたことに気付き、後ろを振り返った。でもそのまま走り去るのだろうと誰もが思ったその時、彼は僅かにも悩む素振りを見せずに転んだ子の前まで戻ってきた。そして絶望の表情を浮かべていた他チームの彼の手を引き、激励の言葉と共に背中を押す。


 それだけの時間があれば余裕で半周以上走れる。今の転んだ子を助ける間、海斗くんは二位から四位を走っていた全員に抜かされた。バトンパスまで残り数メートルを切っている。


「遅れてごめん、後は任せた!」

「はい!」


 第一走者の間での逆転は普通に考えて無理。海斗くんもそうだった。でも一気に差を開かれたことを確認した海斗くんは諦めることなく、思いっきり地面を踏み込んで先ほどまで以上のスピードで一気に距離を詰めたんだよ。そんな一部始終を見ていた青団はさらに盛り上がり、第二走者の子も笑顔で頷いて走り出した。


「海斗くん、お疲れ様」

「ありがとう。さすがにあの追い上げは体にくるね……」

「海斗らしいとは思うけど、なんであの場面で転んだ子を助けようと思ったの?」

「うーん……特に理由はないかな。反射的なやつ。長年スポーツやってると体に染み付くものがあってね……期待を裏切ることになったのは申し訳ないと思っているけど、士気も上がったし後悔はしていないかな」


 海斗くんの言う『体に染みつくもの』というのはスポーツマンシップ、ってやつかな? 正々堂々とした精神や態度、フェアプレー、その他諸々……

 もしもこれで青団が一位を取れなかったら陰で海斗くんを責める人も出てくると思うけど、そうならないよう残りの五人が頑張ってくれるんだろうな。誰かのために動いた仲間を敗北の原因として標的にさせたくはないでしょうし。蓮くんも少し離れたところから海斗くんに向かって『後は任せろ』とでも言わんばかりの余裕な笑みで親指を立てている。何より、現在二位まで戻ってきているから青団の盛り上がり方もすごい。結果オーライってやつかな? 私の友人は本当に尊敬できる。さすがだよ、海斗くん。

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