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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~

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49 桜は光に照らされて

 お題でまさかの『自分の親』を指定されるなど、途中で非常に焦ったところはあったものの、私は無事に一位でゴールすることができた。今は蓮くんのターンで、さすがリレーの練習中私を息切れさせただけあって、余裕の一位で走っていた。お題も『携帯』という簡単すぎるものを引いている。あれですか、運も実力のうちってやつですか……?

 このお題はポケットから取り出した自分の携帯でクリアしていた。あれはもう借り物じゃないと思うし、そもそも休み時間以外で携帯を使ったら駄目っていう校則があるのに、なんで競技中にポケットから取り出せるんだろうね? 少しも隠さず開き直っているから、先生も困惑している。今までもこれで指導されることなく乗り切ってたんだろうな。相変わらずずる賢い男だよ。


 蓮くんの後に続いたのは藍那。私、蓮くんと連続で一位を取っていてモチベーションも上がったのか、やる気満々で屈伸をしていた。スタートの合図と共に走り出した藍那は、三年生各クラスの女子で一番足の速い人が集まっているグループなのに余裕の笑みで一位を獲得した。


 そして青団最終走者は恐らく学園で一番足が速いであろう、男子カーストトップの天宮海斗くん。足の速さに限定すると、恐らく彼はこの学園内で一番優秀。天才肌である蓮くんを上回るのは海斗くんだけ。彼は小学校の頃からバレーをやっているらしく、小中高すべてでエースなのだとか。さすがは運動部エース、って感じの運動神経なんだよね。海斗くんが人気者なのはスポーツ男子だからっていうのもあると思う。女子は運動ができる男子を好きになる人が多いので……


「────さあ始まりました、三年生学年別競技借り物競争! 現在、最終走者の皆さんがトラックを走っています! 最初にお題を手にしたのは青団……!」


 ずっと思っていたんだけど、あの実況者の人すごく楽しそうだね? 微笑ましいけれど、たまに笑わせてくるような発言をするから上手いなと思うよ。さすがは放送委員。

 実況によると、海斗くんが手に取ったお題は『歌が下手な人』。他の四人もお題がある場所まで辿り着き、『逆立ちができる人』とか『自分と同じ名前の人』なんかを引いている。この借り物競争、最終走者は特別ルールがあるんだよね。

 それは『最終走者の人に限り、三年生も協力可能』、『最終走者は全員難しいお題を引く』というもの。だから全員声掛けが必要なものばかりになっている。


 借り物競争は足の速さよりも何のお題を引くかが大切だから、普段どんなに足が速くても最下位になる可能性は当たり前にある。でも海斗くんは『歌が下手な人』というお題に対して声掛けすることも悩むこともなく、走り終えた三年生が並んでいる方バッと見た。視線の先は私の後ろ、思いっきり顔を引き攣らせている結城蓮くん。


「蓮! 歌、下手だろー!」

「うるせえ!」


 この会話を聞いた途端、二人の一瞬のやり取りが聞こえる場所にいた人が一斉に吹き出すか、何とか堪えて肩を震わせながら俯く。最後の最後で面白すぎるやり取りをありがとね、二人とも。私も今、必死に笑うのを堪えてるよ。声を出した瞬間笑いが止まらなくなりそう……!


「海斗お前な、なんでわざわざ俺を選ぶんだよ!」

「一瞬で頭に浮かんだのが蓮だったから!」

「もういい、お前黙れ!」


 文句言いながらも海斗くんのところへ駆けつけた蓮くん。その直後、走りながらだからか大きめの声で話す二人の声がまた聞こえてきて、今度こそ私含む耐えてた組が限界を迎えた。藍那なんてお腹を抱えて笑ってるよ……! あの二人、タイプは違うけどこういう時長い間一緒にいるだけあるな、といろんな意味で思う。


 天才肌で何でもできる蓮くん、実は歌だけは絶望的に下手なんだよね。悔しくて練習していた時もあったらしいけど、今はもう諦めたのだとか。知ってる人も多い情報だけど、改めてこういう場所で叫んでいるのを見ると面白い。


「ということで! 最終走者、一位は青団です! 愉快なやり取りを見せてくれた二人に拍手を!」


 笑いと同時に巻き起こる拍手。蓮くんは不満そうではあるものの、最終的には呆れつつみんなと同じように笑顔を見せていた。


 全グループが走り終わり、担当の生徒が集計した結果────三年生学年別競技『借り物競争』は見事青団が一位を獲得した。

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