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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~

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48/116

48 桜のみぞ知る

 ◇


 いつものリボン代わりに巻いたハチマキをほどけないよう強く結び直し、指で軽く唇に触れた咲良は一度目を閉じてからいつも通りの笑みを浮かべた。咲良は今、対戦相手である四人と共に合図があるまで白線の数歩後ろで待機している。


 本人は気付いていないようだが、指を軽く唇に触れさせるのはあいつが緊張している時の癖だ。緊張の種類は様々だが、咲良は大勢に見られているくらいで緊張するタイプじゃねえ。何か気になることでもあるのか?

 あの緊張が何なのか気になるが、咲良の思考を読める奴なんて恐らく存在しねえ。俺以外で咲良の傍にいることが多い海斗、伊島でも無理だろうな。会ったことがない以上断言はできねえが、あいつの両親でも厳しいんじゃね? それくらい隠し事が上手いのが瑠衣咲良という女だ。


 親で思い出したが、咲良はなんであそこまで頑なに自分の親と俺らを会わせようとしねえんだろうな。後ろめたいことでもあんのか?

 今日は呼んでいるらしいが、咲良に似た保護者は見当たらなかった。いっそお題で『親』とか出ればいいのに。あいつの親のことを考えると、何かが頭に引っかかって余計に気になってしまう。


「蓮、瑠衣から睨まれてるよ? 凝視しすぎ」

「ん? あー、わり」


 凝視していたせいで視線を感じたんだろうな。あいつが睨めば必然的に目も合っているはずなのに、何の反応もないから今度は困惑していたらしい。考え込んでいたせいで海斗に言われるまで気付かなかったな。


 咲良に顔の前で手を合わせておけば、小さくため息を吐いて前に向き直った。そしてちょうど合図があり、白線の前に並ぶ。スタートの合図を知らせるピストルの音と共に走り出し、二位で走る女子と大きく差を付けたまま最初にお題のある場所まで辿り着いたのは咲良だ。

 一番手前にある紙を手に取り、中身を見た咲良はこの距離でも分かるくらい、思いっきり嫌そうな顔をした。咲良のあんな顔見たの、ほとんどの奴が初めてだろ。まあ一瞬で取り繕ったから多くの生徒は気のせいだと思ってるだろうが。


「青団のお題は……『自分の親』です!」


 ……マジか。いや、ほんとに出るとは思わねえだろ。しかもちゃんと『自分の』と書かれているらしい。仮に俺の考えていた通りのお題が出たとして、あいつは平気で他の生徒の親を誑し込んで連れて行くだろうと思っていた。だがそれさえ許さない完璧なお題が出たな。


「……お母さんどこ!?」


 覚悟を決めたような顔で叫んだ咲良のあの顔。間違いなく『なるようになれ!』とか思ってる。


 どれだけ運が良いのか、他の四人も『物』ではなく『人』に関するお題だったおかげで、あいつを抜かしていく奴はいなかった。そしてすぐに現れたのはシンプルに『美女』。だが咲良には似てねえな。まさか血が繋がってないのか……?


 他の生徒も初めて見る瑠衣咲良の母親の姿に困惑しているが、見事一位でゴールした咲良は母親の耳元で何かを囁いた後、光り輝く綺麗な笑みを浮かべた。あれは脅してんな。


「一位でゴールしたのは青団です! では瑠衣さんのお母様、一言お願いします!」

「瑠衣咲良の母、瑠衣麗……母です。いつも娘がお世話になっております~!」


 今日本語おかしかったぞ。何か言いかけて、咲良に睨まれたことで我に返って言い直した、って感じだな。それと口を開けば美女ではなくなった。どちらかと言うと柔らかい雰囲気の方が似合ってるタイプだ。色々と緩い。語尾にハートでも付いてそうなテンションで、さすがの咲良も額に手を当てている。あれは何というか……あいつも苦労しそうだな。


 ◇

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