41 桜も蓮も、自分以外の誰かを想い
「────で、どうだった?」
「すごく良かった……! 蓮くん、予想以上にかっこよくてびっくりしたよ」
「そりゃどうも。最初は面倒だと思ってたが、終わってみればいい思い出になったかもな。それに、俺もやる時はちゃんとやるって分かっただろ?」
「うん!」
今の私、テンションが高いのが自分でも分かる。だって本当に素敵だったのだから仕方ないでしょう? 蓮くんがやる時はちゃんとやる人だってことは元々知っていたけどね。でもここまで全力でやるとは思わなかったかな。蓮くんなりに、選ばれた以上責任を持ってやりきろう、というプライドもあったのだろうけど。
「瑠衣先輩! おれも応援団の一員であの中にいたんですけど見てくださいましたか?」
「日向くんもお疲れ様。うん、見てたよ。日向くんも蓮くんと同じで注目されていたからすぐに居場所が分かった」
「こいつ、チビだもんな。そりゃ目立つわ」
「なっ……そんなの、結城先輩に比べたらほとんどの人が小さく見えますよ!」
たしかに……日向くんの言う通りで思わず笑ってしまった。日向くんの身長、目測でも百六十五以上はあると思うんだけど、それで『チビ』って言われるなら私は蓮くんに何だと思われているんだろう……男女で身長差があるのは当然でしょうけど、私も少し気にしているんだからね……?
「まあな。それより日向、お前この後学年別競技だろ。そろそろ行けば?」
追い払うような仕草で面倒そうに告げる蓮くんに『後輩にはもう少し優しくした方がいいんじゃないの?』という思いを込めて軽く睨むと、何も言わずにそっぽを向かれた。二人の間に何があるのか分からないけど蓮くんも子供っぽいところあるよね。言われた側である日向くんも嫌そうな顔をしていたけど、時間が迫っていることを確認して去って行った。
今は五組赤団の応援団の人達が演舞を披露している。赤団のテーマは『限界突破』だから、やっぱり激しめの演舞だね。それも今までの団よりもう一段階くらい上の。
「蓮くん。青団の演舞は青団だけじゃなくて、全校生徒を応援するためのものだった?」
「なんで?」
「何となくだよ。他の団の演舞と対比になることを予想して、それを利用することで自分達だけに魅力を感じてもらえるような演技もできただろうに、蓮くん達はみんなのために利用したように見えたから」
違う? と隣で静かに赤団の演舞を見ていた彼を見上げると、にやっと楽しそうな笑みを浮かべて視線を合わせてきた。蓮くんは何も言わないけれど、この沈黙は肯定と受け取っていいんだろうな。
「蓮くんのそういうところ、尊敬する」
「そうか? お前以外にも同じようなこと考えた奴はいるだろ。それなら俺が『いいことをした』ってことで、より良い印象を持たせることができる。結果俺らの評価は上がるんだから、その意味では自分達のためにやったことだ」
「それでもだよ。それは結果の話だし、正直私のように深く考えてる人はせいぜい数人ってところだと思う。余計なことを考える暇なんてないくらい、みんなあの素敵な演舞に魅了されていたからね」
彼の言うこともその通りだよ。でもやっぱり、この言い方なら私の予想していた『生徒全員で作り上げる体育祭、という意味での一致団結。だから生徒全員を応援するための演舞』というのが蓮くんの考えなんじゃないかっていうこと、間違っていないんだろうな。
「まあすべてはご想像にお任せします、ってやつだな。お前がそうだと思うことを信じればいい」
「うん、そうする。改めて蓮くん、お疲れ様。忙しい中で団長としての仕事を頑張ってるところ、ちゃんと見てたよ。この後も楽しもうね」
「だな、ありがと」
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