31 桜の花びら一枚目
明日こそ藍那に声を掛けて、しっかり話をしよう。そんなことを考えていたらいつの間にか日付けは変わっており、それどころか上の空のまま登校してしまっていた。『してしまっていた』と過去形なのは我に帰った今、自分の席に座っていたからです。
「咲良、まだ一限目まで時間あるぞ。行かねえのか?」
「……行ってくる」
「ん、応援してるから」
不安から一瞬だけ唇を噛み締めてしまったけれど、その後すぐにいつもの笑顔で蓮くんの言葉に返事できたと思う。私の答えに頷いた蓮くんは、頬杖をついたまま優しく微笑んで手を振った。
藍那のこと、大切に思っているからこそ些細なことでのすれ違いも怖かった。これから先、普通に話しかけても今まで通りに接してくれることはないんじゃないかと思って。最初に距離を取られているのだと分かった時は心臓が凍り付くかと思ったよ。
藍那とこんな感じになったのは初めてで今更話しかけるのは気まずいし、もう嫌われているかもしれない。手遅れだったら、と考えると足が竦む。でもそれ以上に、このまま疎遠になってしまう方が嫌だ。喧嘩別れなんて絶対に耐えられない。それなら嫌われたままでも仲直りできている方がマシ。
「藍那」
「ん?」
やっぱり、まだ距離を取られてるね。最低限の言葉しか返してもらえない。藍那も思うところがあったからこの態度なんだろうし、藍那を悪く言うつもりは決してないけれど、それでも心が折れそうにはなってしまう。
……腹を括りなさい、瑠衣咲良。今動かなければ大切な親友を失うかもしれない。憶測で立ち止まっていてどうするの。いつからそんなに弱い人間になったの? ちゃんと向き合いなさい、今すぐに……!
「────今日のお昼、私に時間をちょうだい」
「……分かった。お昼ご飯は一緒に食べる?」
「藍那さえ良ければ」
「了解。待ってるよ、咲良」
「うん……!」
『それじゃあ、四限目が終わったら屋上で待ってる』と小声で伝え、私は自分の席に戻った。恐らくクラスのほとんどが私達の話に耳を傾けていたから、堂々と場所を言うと覗かれる可能性がある。それではゆっくり話ができないから、場所は勝手に決めさせてもらった。
「頑張ったじゃん」
「もう泣きそう。久しぶりに名前を呼んでもらえた気がする……」
「ははっ! 名前を呼ばれただけでそれだけ感動してんなら、仲直りした時はどうなるんだろうな。海斗もまた四人で一緒に過ごすのを楽しみにしてんだ。しっかり話し合って来いよ」
教科書を机から取り出し、一限目の準備をしながらそんなことを言われる。そういう蓮くんだって、すごく楽しみにしているんでしょう? いつも通りに接しているようだけど、最近ずっと優しかったからね。普段あんな感じだから蓮くんの変化は分かりやすいよ。蓮くんのいざという時は優しくて頼りになるところ、私は好きだな。
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