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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~

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30 桜と藍は蓮の心に

 体育祭一週間前、月曜日放課後。今日は体育祭の練習がない。だからいつもなら藍那と一緒に家に帰るんだけど、今日の私達は別々で帰宅する雰囲気になっていた。というか、そもそもまともに話せていないのだから一緒に帰宅、なんて流れになるはずもない。

 結局、私は今日藍那と話をすることができなかった。何度も声を掛けようとはしたんだよ。でも藍那のことが親友として大好きだからこそ、反応が怖くて一歩踏み出せなかった。きっとすごく不審に思われただろうな……


「咲良、帰るぞ」

「今日は歩きなの?」

「ああ。伊島はあんな感じだし、海斗も部活だから今日は二人だ。キレんなよ」

「キレてませんけど?」


 いきなり失礼なことを言われたため、思わずそう返すと『今じゃねえ。この後の話だよ。穏やかにいこうぜ』とからかうような笑みで言われた。私が勝手に怒ってるんじゃなくて、そういうことする蓮くんが悪いと思うのは私だけかな? 他人に言う前にまずは自分の言動を改めましょうよ。


「それより蓮くん、最近お(うち)の状況はどう? 落ち着いてる?」

「いや、やっぱ忙しそうだな。今は学業に専念しろって言って手伝わせてもくれねえし、相変わらず基本あいつと二人暮らしだ」

「あら……」


 それは大変だ。蓮くんはお父様が外科医、お母様が内科医でどちらもトップの方だからすごく忙しいらしい。将来その仕事を継ぐのは蓮くんと妹さんだから練習も兼ねて手伝いたいらしいんだけど、それは許してもらえないのだと。本格的なことを学ぶのは大学に入った頃からで、それまでは高校卒業するまでは知識を蓄えるように言われているらしい。

 若い内にたくさん学んでおけ、というのがご両親のお考えなんだろうね。仕事を継いだらそんなことする暇はないからでしょう。


「だがまあ、おかげで今はそれなりに自由に過ごせてるから感謝するべきなんだろうけどな」

「うん。ところで、どこまで一緒に帰るつもり? すでに逆方向じゃない?」

「お前の家まで。どうせお前の家学校から近いし、あんま変わんねえよ」

「そう? まあ別に良いけど……」

「ありがたく思えよ? 伊島と絶賛喧嘩中で傷心のお前を慰めるべく、一緒にいてやってるんだからな」

「…………」


 そんな偉そうに言われても、私別に頼んでないしなぁ……でも大人しく感謝はしておこうと思う。こうして偉そうに言うことで悟らせないようにしているんだろうけど、心配してくれているのは本当だろうから。他のみんなもだけど、特に海斗くんや蓮くんには申し訳ないと思ってる。私達のせいで少し気まずい雰囲気になってしまっているし、心配も迷惑もかけてしまっているからね。


「ん、やっぱ近えな。もう着いた」

「じゃあ蓮くん、また明日ね」

「ああ。それと一つ言い忘れてたことがあんだけど」

「どうしたの?」

「咲良、俺はお前のことも伊島のこともずっと見てるから」

「え……」


 それはどういう意味? と聞き返そうとしたけれど、それよりも早く蓮くんは走り去ってしまった。相変わらず足が速くて困る。こっちの疑問に答えることなく言いたいことだけ言って去るだなんて、ほんっとに自由人だね……!?

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