27 桜の帰る場所
あの後、私は脳神経外科に行くためにわざわざ東京まで来たと言うおじいさんを病院まで案内した。私はこのあたりの道に詳しいからね。おじいさんが行こうとしている病院の院長はこの分野では『ゴッドハンド』と呼ばれる日本一の腕を持つ人物だから、高いお金を払って遠路はるばる訪れる理由も分かる。
先ほどのお礼も兼ねて、道案内と受付を終えるまでの荷物持ちをさせてもらった。まさか目的地が病院だとは思わなかったから驚いたけれど、『お大事に』と声を掛けて私は病院を後にした。
私の実家はあの病院から徒歩一時間くらいのところ、静かだけど綺麗な住宅街に建っている。さすがにそこまで歩いて移動するには時間がかかりすぎるため、車を呼んで家の近くまで乗せてもらった。個人情報を守るため、家の前までは行かない。車から降りて少し歩くと、ようやく家の塀が見えてきた。
「久しぶりの帰省だ……!」
私はこの家が好き。普段は高い塀に囲われているから見えないけれど、門を通るとすごく綺麗な庭が広がっているの。お母さんと庭師さんが丁寧に手入れしてくれているからね。
「────咲良様!? お、おかえりなさいませ……!」
「ただいま。もしかしてお父さん達から何も聞いていなかった?」
「は、はい……ですがご無事で何よりです。ランチがまだでしたらお食事をご用意致しますが、いかがなさいますか?」
「軽く食べてきたからまだ大丈夫。お父さんから仕事を頼まれて帰ってきたのだけど、二人は今日帰ってくる?」
「はい。遅くなるとのことでしたが」
「分かった。じゃあお茶だけ持ってきてもらえる? 十九時くらいになったら夕食にするね」
「かしこまりました」
家の中に入るとちょうど花の手入れをしていたらしい女性が一人いた。うちにはメイドが三人、庭師が一人の計四人使用人がいる。理由は単純に、両親共働きで家のことをする暇があまりないから。メイドは私と両親に各一人で専属がついている。そして帰宅一番で顔を合わせたのは、私の専属のメイドだった。
駆け寄ってきた彼女に荷物を預けると同時に、情報の擦り合わせを行う。今から三時間くらいは仕事に集中できそうかな。
「さて、どれくらい書類が溜まっている、の……か」
……なんだろう、この山は。とりあえずお父さんの部屋に書類を取りに来たんだけど、デスクの上になぜか山ができている気がするのだけど、これまさか全部私の仕事だったりしない……よね? あ、置手紙がある。
『咲良に片付けてもらいたい仕事はすべて机の上にまとめてある。悪いけど、よろしく頼むね』
どうしよう。お父さん、私もこんなにあるとは思わなかったよ? 一体何百枚あるんだろうね。まさかこれをすべて片付けろと言われるとは……やっぱりお父さん、優しいけどたまに鬼畜。でも報酬はもらっているからちゃんとやらなければならない。
「……さっさと終わらせちゃおう」
ご覧いただきありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると嬉しいです!




