24 愛に始まる桜嵐
◇
「おはよう藍那」
「うん」
「真紀ちゃん、どこにいるか知らない? 教室内には……いないみたいだけど」
「中庭で花に水やりしてたよ」
「ありがとう、ちょっと話があるから行ってくるね」
今日で四日目。何の日数かって、それは藍那が私に対して少し距離を取るようになってから。今まではかなりの時間を一緒に過ごしていたのに、ここ数日は一日に二、三回も会話があれば良いくらい。
心当たり? そんなのあるに決まってる。絶対そうとは言えないけれど、やっぱり火曜日の出来事が原因なんじゃないかな。クラスの子に体育祭の練習について聞いた時のこと。あの時、私が血が滲むほど手のひらを握りしめていたのは『今回も瑠衣咲良でいることを求められているんだな』と理解してしまったから。正直、私に期待してる暇があればその分みんなも努力してくれればいいのに、って思うよ。私だって何でもできるわけではないからね。
最近、誰かの期待がすごく重く感じる。だからつい笑顔の仮面に隠して、思い切り手を握りしめてしまった。あの時は言葉よりも表情よりも、行動が一番正直だったね。その一部始終を藍那は見ていたのでしょう。
「真紀ちゃん」
「あら、咲良ちゃん。おはようございます」
「おはよ。今日は少し用事があって、放課後の体育祭練習に参加できないんだけど大丈夫?」
体育祭の推薦型競技の選手を決めた日はまだ学級委員がいなかったんだけど、後日うちのクラスの学級委員が真紀ちゃんに決まった。だから何かあれば彼女に相談することになっている。花壇の手入れをしている真紀ちゃんにそう言うと、悩む素振りもなく了承してくれた。
「分かりました。良ければ何の用事か聞いてもいいですか?」
「うん。急ぎで実家に帰るよう両親から言われてね。たぶん仕事が多すぎて手が回らなくなったんだと思う……」
苦笑しながら説明すれば、納得したように頷かれた。私が東京出身なのはほとんどの人が知っているからね。
私がこうして呼び出されたということは、お父さんの仕事が大変なことになっているんだろうな。お母さんは手伝いに行ってるだろうし、私は家での書類仕事を任されているんじゃないかな?
私はまだ学生だけど、お父さんの仕事を手伝える資格を持っている。将来仕事を継いだ時の練習も兼ねて手伝えるよう、取るように言われたから。だから忙しい時は報酬ありで仕事を変わっていた。
「……あ、もしかして咲良ちゃんのご両親って経営者さんですか? 普通の家庭で親の仕事を手伝うことは中々ない気がするのですが」
「父はそんな感じ。母はただのカフェ店員だよ」
「それはすごいですね。初めて聞きました」
「初めて誰かに話したからね。みんなには内緒だよ?」
じゃあよろしくね! と言い、手を振ってから私はその場を離れた。この学園には経営者の子息令嬢くらいいくらでもいるから、私もその一人だと知られたところで今更何も思われないでしょう。学園に通い始めて三年目、ようやく誰かに話したことだから新情報に驚かれはするかもしれないけどね。
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