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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~

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21/116

21 凜麗は桜の支えなり

 ◇


「ただいまー……と言っても、誰もいないんだけど」


 体育祭の練習を終え、今日もいつも通り藍那と一緒に帰宅した。エントランスにちょうど仕事終わりであろうあすちゃんのお母さんに会い、また作り置きのおかずをいただいたから、今日の夕食はこれにしようと思う。


 そんなことを考えながら着替えていると、リビングの方で着信音が聞こえた。そういえば、お母さんに連絡するの忘れてたかも。


「はい、咲良です」

『おかえり、咲良。そろそろ帰った頃かな~と思って連絡したんだけど』

「ただいま。うん、ちょうど今帰ってきたところ。話があるんだけど、お父さんは?」

『今日はもう帰ってきてるわよ。凛久(りく)! 咲良が話があるって~!』


 テレビの電源を入れ、リモコンで操作すると予想通り電話をかけてきたのは私のお母さんだった。うちのテレビは最新の技術を使ったもので、こうして通話することもできる。今画面に映っているふわふわした雰囲気の人は私の母。そしてお母さんに呼ばれて現れたのは父。どちらも柔らかな雰囲気を纏っているけれど、頭の中はとんでもない構造になっているから油断できない。とはいっても、見た目通り優しくはあるんだけどね。こうして私を県外の学校に通わせてくれているくらいだし。


『久しぶりだね、咲良。元気にしてた?』

「見ての通り、元気いっぱいだよ。ただ、今日ちょっと日焼けしちゃってね。肌が痛い」


 キッチンでお茶を入れ、テレビの正面にあるソファーへ戻る。ジャージの袖を捲って見せると、さっきよりも悪化していたようで真っ赤になっていた。ちなみにジャージを着ているのは、この後体力づくりのために走りに行くから。改めて藍那との運動能力の差を感じちゃったからね。一週間ではどうにもならないかもしれないけど、何もしないよりはマシでしょう。


『たしかに真っ赤だね。こまめに日焼け止めを塗るようにした方が良い。これくらい言わなくても分かってるだろうけどね』

「うん。ところでお母さん、用件は?」

『英語の勉強、今日はどうするのかなと思ったの。でもその様子だと、今日は必要なさそうね』

「あー……うん、そうだね。今日はいいかな。またお願いする時に連絡するよ。それと、再来週の日曜日に体育祭があるんだけど今年は来る?」

『再来週の日曜か……ちょっと待って』


 予定を確認してみる、と携帯を開いた二人は偶然予定が空いていたらしく、『咲良が嫌じゃないなら行こうかな』と言われた。


「二人の好きにしてよ。でもお母さんはともかく、お父さんも休みなの珍しくない? 出張もなし?」

『そう、完全にオフ。咲良の体育祭を見れるのも今年が最後だし、予定が空いていて良かったよ。当日は変装して行くね』

『凛久、それ私もしなきゃダメ?』

『ダメってことはないけど、した方が良いと思うよ。顔が割れてるんだし、万が一咲良と一緒にいるところを見られでもしたら怒られるからね』

『ねーえ、咲良? まだ隠すの? もういいんじゃない?』

「駄目。絶対騒がれる」

『ケチ』


 ケチとか、そういう問題じゃないでしょうに。私は今の環境で十分だから、これ以上生徒の話題になるのはごめんだよ。

 うちの両親は二人揃ってネットに顔が載っている。芸能人とかではないけど二人とも別の意味で有名だし、ただでさえ中々聞かない『瑠衣』っていう名字を持っていて勘付かれているかもしれないんだから、両親の顔がバレたら間違いなく私の身元も割れる。藍那、海斗くん、蓮くん、最近仲良くなった生徒会長の真紀ちゃん。この四人にはいずれ話すかもしれないけれど、今はまだ早いと思う。


「とにかく、来るなら絶対に変装してきて。じゃないと入校許可証渡さないから」

『そうなったら瑠衣家の権限で、』

「職権乱用」

『うっ……』

『大丈夫、咲良。麗奈(れいな)にもちゃんと変装させるから』

「よろしく。じゃあ私、この後用事あるから切るね。また何かあったら連絡して」

『うん。咲良も無理しないように。隈、隠してるみたいだけど目が疲れてるからしっかり休むんだよ』


 ……さすがお父さん。人のことをよく見ているね。私も寝不足がどれくらい脳に影響を与えるかは理解している。まあ理解していてもやることがたくさんあって寝不足になってしまうのだけど。


「以後気を付けます。じゃあね」


 これ以上探られる前に目を逸らし、手を振って通話を切った。気を付けるよ、できればね。私だって休みたいと思っているんだからわざとではない。……でも、体育祭の前日はしっかり休もう。直接会った時に顔を見られるとすべて見抜かれてしまいそうだからね。


 ◇

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