111 桜が輝ける場所
◇
「────それでは改めて、全員志望校合格おめでとー!」
「いえーい!」
今日は藍那の受験の結果も出たということで、私の家で打ち上げ兼お疲れ様会をしている。結果は本人も行っているように『合格』。つまり、春からは全員第一志望の学校に通えるということになる。大丈夫だろうとは思っていたけれど、やっぱり結果を聞いた時は大喜びしてしまった。安心したよ。
「それで、聞きづらい雰囲気だったから咲良だけどの大学を受験したか聞いてないんだけど、良かったら教えてくれない?」
「いいけど、たぶん藍那が思うほどすごい場所ではないよ? 国内だし」
「それは当たり前だろ」
「そう? すごく期待されてる気がしたから、留学ではないとだけ先に伝えておこうと思って」
アメリカの有名な大学とかではない。さすがにそこに比べたら私の受験したところもすごくないからね。何もしていないのにがっかりされるのも嫌で、先に報告すれば、見事蓮くんに突っ込まれた。
「別に普通でしょ。で、どこなの?」
「東都大学医学部脳神経医学専攻」
「……なんて?」
「東都大学の医学部だよ。脳神経医学が専攻」
「どうしよう海斗、咲良が呪文を言ってる」
「俺も呪文に聞こえるよ。咲良、そんなすごいところ受けてたんだ」
「……マジ? 専攻は違えけど、学部一緒じゃん俺ら」
「まあそうなるね」
なんで医学部? という質問に答えるか一瞬迷い、まあいいかと思って口を開こうとすると目の前のテレビから着信音が鳴りだした。ちなみにうちのテレビは最新の技術を使ったものだから通話ができる。そしてこれは最新型なので上流階級の家庭にしかまだ普及していない。藍那も海斗くんも蓮くんも、今日はずっと驚いてるね。無理もないけれど……
ここまで来たらもう誤魔化さなくていいか、と思い三人に断りを入れ、そのまま電話を繋げた。
「お父さん」
『おはよう咲良。あっ……ごめん、絶対今ダメだったよね』
「ううん、もういいよ。遅かれ早かれバレてそうだったし後で話しておく。用件は?」
きっと三人は見覚えのない私の『お父さん』に困惑してるだろうな。奥にはお母さんもいるし。さすがに私一人だと思ってたからか、二人は変装していない。いや、家にいるのに変装してる方が頭の心配をしたくなるけれども。
『家について。この前合否が出たら決めると言っていたからね。大学の近くのマンション買っておこうか?』
「うーん……じゃあ今は引っ越しシーズンでドタバタしそうだし、夏くらいにお願いしてもいい? それまでは家から通おうかな」
『本当!? また咲良と一緒にいられる時間が増える~!』
「夏までだけどね」
奥で喜ぶお母さんに冷たく言い放ち、再びお父さんと目を合わせる。今更だけど、わざわざマンションを買い与えてくれるなんてありがたいことだよね。しかも私名義だから、将来そのまま住むこともできる。この家も同じく。まあ普通に本家で暮らすことになるでしょうけど。
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