109 零れ桜
◇
「私達本当に卒業しちゃったんだねぇ……実感が湧くような、湧かないような」
「俺も、藍那と同じく」
卒業式を終えた私達は四人で遊びに行こうという話になっていた。具体的なことは何一つ決めてないけど、ひとまず近くのショッピングモールへ行こうという話になり、学園から徒歩十五分ほどの場所にあるので現在目的地に向かって歩いているところ。
「ずっと気になってたんだが、俺らっていつから一緒に過ごすようになったんだ? きっかけとなるような出来事は記憶にねえけど」
「たしか……私と藍那は入学式の初日、校舎内で迷ってた私に声を掛けてくれたことがきっかけだよね」
「俺と蓮は中学が一緒だったからかな」
「この後の男子組と女子組の繋がりが分からないよね。海斗に話しかけられたような気がするんだけど……」
藍那の言葉に『いや、それ逆じゃない?』なんて言いながら、でも結局分からなくて二人とも首を傾げている。まあ三年前のことなんて、中々覚えていないものだと思うよ。
「……ん!?」
「っちょ、咲良!?」
「え……腹でも壊したか?」
「ちが、ごめ……っ、ごめんね。時間差でいろんな感情が……」
彼らに出会ってもう三年も経ったのかとか、すごく大変だけど楽しい三年間だったなとか、あっという間だったなと思えば思うほど涙が溢れてきた。私の高校生活は三人がいてこそのものだったし、三人がいなかったら全然違う未来になっていたと思う。それくらいたくさんの時間を一緒に過ごした。私の考え方だとか、価値観だとか、そのあたりに変化を及ぼすくらいに。
「あの、大丈夫だから気にしないで……し、しばらく涙は止まりそうにないけれど……っ」
「……咲良が泣いてるの、初めて見たよ」
「泣く一歩手前くらいなら稀にあったがな」
ちゃんと泣いてる姿を見るのは初めてだからさすがに焦る、と言う蓮くん。たしかに私の聞き間違いじゃなければ、『腹でも壊したか?』って言われたような気がするね。
「そうだな……いい機会だし、ちょっと暗い話になっちゃうけど、私の過去を聞いてくれる?」
ショッピングモールに到着するまでまだ少し時間がある。涙が落ち着いてきた頃、ついにこの話を切り出してみることにした。すると三人揃って驚いたように目を見開き、一斉に私の方を向いた。きっと三人とも『いいの!?』って思ってるんだろうね。三年間沈黙を貫いてたくせに、唐突にこの話を始めたんだから。私としては『卒業までに』と言って、卒業式後に話そうとしてるんだから怒られても仕方ないくらいだと思うのだけど。
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