108 繋がる桜の縁
「俺は昔、瑠衣と同じような境遇の親友がいたんだ。瑠衣のように表面上は平気なふりをしていたが、ずっと一緒にいた俺はどんどんやつれていくのが分かった。だがそんな相手に響く言葉はないに等しいだろ?」
おっしゃる通り、少なくとも私は言葉より行動を信じるようになった。だけどそうじゃない人も当たり前にいると思う。言葉があった方が安心できる人、とか。
「そう思うと俺は何もできなかったんだ。親友なのに、話一つ聞いてやることすら……だからせめて、自分の生徒の心くらいは守りたいと思ってな。その友人は瑠衣と同じ東都大学に行って、そのまま疎遠になってしまったから今どこで何をしているか分からないんだが」
「……先生、その人の名前ってもしかして、」
「瑠衣凛久、だったりしますか?」
突然背後から聞こえてきた声に思わず勢いよく振り返る。そこにいたのは瑠衣凛久本人……つまり、私のお父さんだった。驚く私の頭を軽く撫でたお父さんは、柔らかく微笑みながら首を傾げている。だけどこれ、確信している時の顔だね。
「珍しい名字だから、そうかもしれないとは思っていたが……!」
「久しぶり、裕大。少し話をしようか」
「お父さん……私もう行くね。それとお母さんにも伝えておくけど、これから藍那達と出かけてくる。それでは先生、またいつかお会いしましょうね!」
これは私がいては邪魔だと思う。それにしても橋本先生とお父さんが知り合い……というか親友だったとは思わなかった。
「咲良、もういいの?」
「うん。私、これから藍那達と約束があるの。夕方まで遊びに行ってくるね」
「いってらっしゃい。楽しんでおいで~!」
藍那に海斗くん、蓮くんはすでに校門のところで待ってくれている。全員親に荷物を預けて、このまま遊びに行こうって話してたんだよね。詳しい予定は決まっていないけれど、じゃんけんで勝った藍那の意向でゲームセンターに行って写真を撮ることは確定している。制服のまま記念写真を撮りたいとのこと。海斗くんは意外と抵抗していなかったけれど、蓮くんが本気で嫌そうだったね。この後も必死の抵抗を拝ませてもらおうと思う。
「みんなお待たせ」
「全然待ってないから大丈夫! じゃあ行こうか!」
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