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【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~
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106 桜の人望

 ◇


「一年間ありがとうございました。この中には二年以上一緒に過ごさせてもらった生徒もいます。皆さんの成長を、そして門出を見届けることができること、とても嬉しく思います。改めまして三年四組の皆さん、保護者の皆様、ご卒業おめでとうございます。これからの未来が明るいものであるよう、心より祈っています」


 卒業式後、教室に戻った私達は教室の後ろで保護者が見守る中、一人一言ずつクラスメイトに向けてコメントをした。それはお礼だったり、思い出話だったり、応援の言葉だったり様々だけど、今まで笑っていた人もこのタイミングで一斉に泣き出したかな。やっぱり小学校から中学校、中学校から高校、高校から大学と少しずつ友人と離れる人が増えていく。友人と同じ大学に行ける生徒なんて、ほとんどいないでしょうね。そういう私だって、藍那や海斗くんとは離れ離れになってしまう。

 それが悲しくないはずがないけれど、学校や住む場所が変わったからと言って縁が切れるわけではないからね。四人ともそれがよく分かっている。だからかな、現時点で私達四人は誰も泣いていない。寂しそうではあるけれども。


「それでは最後の号令を坂井、お願いします」

「はい」


 先生の言葉に頷いた真紀ちゃんが『起立』と合図をする。一瞬間を置き、いつも通りの『姿勢、礼』という号令を聞こえると、今までで一番大きな『ありがとうございました!』という声が教室中に響き渡った。

 これから私達は下級生の祝福の拍手を浴びながら花道を通って校舎を出る。この時、下級生は花やら手紙やらプレゼントやらを渡す許可が出ているため、念のため私は紙袋を持ってきておいた。こう言っては何だけど、嫌な予感しかしないので。


「藍那」

「うん。真紀ちゃんも一緒に!」

「いいんですか?」

「もちろん」


 海斗くんと蓮くんも他の男子に混ざるらしい。ここからは人によって進むペースが変わってくるので、大体友人と一緒に外に出る。先生は最初に外に出ておくらしいので、見つけたら声を掛けようと思う。


「……咲良、追加の紙袋」

「ありがとう! あっ、ちょっと待ってね!」

「人気者って大変だね」

「藍那ちゃんも人のこと言えませんけど」

「咲良ほどではないよ~!」


 ちょ……っと、助けてほしいかもしれない。下級生がいるゾーンに入った瞬間、両サイドから一度に声を掛けられた。とりあえず受け取ってお礼を言って微笑んで次へ、って感じなんだけど、二十分以上経過してまだ半分くらいしか進めていない。ここまでとは思わなかった。花束は持ちきれなくて藍那や真紀ちゃんに持ってもらってるし、自分の両手はパンパンの紙袋が複数。今までバレンタインとかもすごかったんだよ。だからそれなりに覚悟はしていた。でもまあ……卒業するとなれば、こうなるのも仕方ない……のかな? それすらも分からないレベルで色々いただいている。


「買い物用のカートがほしいな……」

「さすがにそれをプレゼントする人はいないでしょ」

「うん、知ってる」


 それくらい大荷物になってしまってる、というだけ。あとでお父さんとお母さんに持つのを手伝ってもらおうと思う。


「瑠衣先輩!」

「あら、日向くん?」

「はい! ご卒業おめでとうございます! 本当は花束でもお渡ししたいところですが、絶対こうなってると思ったのでこれだけ。これからも応援しています!」

「あ……ありがとう」


 日向くんが紙袋に差し込んでくれたのは小さめのメッセージカード。一瞬見えたそれには『ご卒業おめでとうございます』という言葉ともう一言くらいしか書かれていなかったけれど、彼の配慮はものすごく助かる。その気遣いこそが私への祝福であること、しっかり伝わってるよ。


「ふぅん……咲良のことを一番に考えてくれる後輩くんもいるんだね? 今のところあの子が一番好感度高いかも、私」

「咲良先輩」

「あすちゃん!」

「ご卒業おめでとうございます……! 私もさっきの彼と同じく、こうなるだろうと思っていましたので、家に帰ってからお祝いをしてもよろしいですか?」

「いいの? ありがとう、楽しみにしてるね!」


 お兄さんのこともお祝いしてあげてね、と声を掛けてると一瞬だけ嫌そうな顔をして、また笑顔に戻ったのが横目に見えた。

 私もあと少しで校舎から出られそう。すでに大きめの紙袋が計五つ、花束大量、その他紙袋に入らない系って感じ。これ、片付けも大変じゃない? ……うん、今は何も考えないでいよう。

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