表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】桜吹雪レコード  作者: 山咲莉亜
桜吹雪レコード  ~失った日々をもう一度~
107/116

105 桜と仲間の晴れ舞台

 制服の胸元にコサージュを付けた私達三年生は、在校生と先生、来賓の方、保護者に見守られながら入場した。会式の辞と国歌斉唱が終われば、卒業証書授与が始まる。

 一組の生徒から順に担任の先生に名前を呼ばれ、それぞれ返事をして壇上に上がる。私達は四組だからまだ先……なんて思っているとあっという間に順番が回ってきた。


「四組。天宮海斗」


 四組の出席番号一番である海斗くんの名前が呼ばれ、彼は元運動部らしいよく通る声で返事をした。一人、また一人と返事をして壇上に上がって行き、蓮くんの番が回ってくる。続いて藍那、真紀ちゃん……私の名前が呼ばれるまであと三人くらい、というところで緊張と共に背筋を伸ばした。


「瑠衣咲良」


 橋本先生に呼ばれた後、一拍おいて返事をし、その場に立ち上がる。卒業証書授与はこれで終わりではない。前の女子と一定の距離を保ちながらレッドカーペットの上をゆっくりと進み、壇上に上がる。この学園は一クラス三十人、五クラスと決まっているから一つの学年の人数があまり多くない。だから全員壇上に上がることになってるんだって。

 学園長先生の『おめでとう』という言葉に頭を下げながら受け取り、自分の席へ戻る。まだ式は終わっていないけれど、卒業証書授与で自分の番が終わると一気に気が抜けちゃうよね。それだけ緊張してるってことだし、こればっかりは仕方ないと思う。


 それから約二十分ほどの時間をかけて五組も終わり、『以上男子七十五名、女子七十五名、計百五十名』という言葉を最後に次のプログラムへと移った。ここからは学校長挨拶、送辞に答辞、式歌斉唱、校歌斉唱と流れるように進んでいく。卒業式とはいえ、式は楽しいものではないから早く終わってほしい気持ちもあったけれど、その気持ちは終わりに近付くにつれて変化していく。卒業式が終わってしまえば、あとは本当に帰るだけ。もう二度とこの学園を訪れることはない。そう思うと寂しくなってくるもの。


 すでに周りの何人かは泣いているようで、校歌斉唱のあたりから鼻を啜る音が聞こえていた。当然のように、レッドカーペットを挟んで隣に座っている蓮くんはそんな素振りも見せていないけれど。


 私はこの三年間、誰よりも努力をして誰よりも全力で生きてきた自信があるよ。きっと私の望んでいた未来はそこまでしなくても手に入れることができたけれど、中途半端で手に入れるのは私のプライドが許さなかった。やり直すと決めたなら、なりふり構わず全力で頑張りたかった。そうして有言実行できたから、大学ではもう少し自由に生きようかなと思ってる。もしかしたら私は大学院まで行くことになるかもしれないのだけど、どちらにしてもこれからの数年しか自由時間は残されていない。仕事を継いだらお父さんのように多忙になる。だから、今度の目標は『やるべきことはやって、その上で今を全力で楽しむ』かな? でもその前に、私は約束を果たさなければならない。話すよ、自分の過去のことを。藍那、海斗くん、蓮くんの三人に。どう思われてもいい。もう、十分すぎるほどに幸せをもらったからね。

ご覧いただきありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ