1 桜舞う
初めての青春小説です! よろしくお願い致します!
────当たり前の日々は、たった一瞬で壊れてしまうことを知った。現実から目を逸らし、失った日々に縋った。『あの頃に戻れるなら』と、ありもしない幻想に思いを馳せた。
春の日差しに満ち溢れる今日、校舎横の並木道では私達卒業生を祝福するように桜吹雪が舞い散っていた。チームで力を合わせて優勝した体育祭。直前まで上手くいかなかったけど本番では金賞を取ることができた合唱祭。たくさん学び、たくさん遊んだ修学旅行。
桜の花びらが一枚、ひらひらと舞って私の手のひらに落ちた。誰もが懐かしそうに楽しかった思い出を語り合い、寂しそうに他愛のない話をしている。そんな中で私はたった一人、手の上の花びらを握り締めた。
◇
「咲良おはよー!」
「おはよう藍那。今年も同じクラス?」
「そうだよ! ついでに海斗と蓮も同じだった……と言ったら驚く?」
「……本当? 三年連続で四人一緒はすごすぎない!?」
「だよね!」
四月九日。今日は私、瑠衣咲良が通う桜華学園の始業式の日。新入生は昨日が入学式だったらしく、教室に来るまでの間に見覚えのない顔をたくさん見た。そわそわしている生徒が多く、この時期にしかない雰囲気だから新鮮で少し嬉しい。
校舎の玄関口で今年のクラスを確認して教室に上がると、私の席には親友の藍那が座って周囲の子達と楽しそうに話していた。
「二人はどこに行ったの?」
「先生に呼び出されて職員室。何かやらかしたんじゃない?」
「楽しそうな顔で言わないの。そういえば藍那、春休みの課題は終わってる?」
にやにやと笑っている藍那に聞くと、予想通りその笑顔が固まった。藍那は小学校の頃から中学校を卒業するまで陸上をやっていたらしく、運動神経は女子学年一位になるくらい良い。だけど運動ばかりしていたからか頭を使うことは苦手みたい。本人曰く、『嫌いではないけど進んでやろうとは思わない』だそう。それなら課題を後回しにする癖、何とかしようね?
「……春休み中、咲良や他の友達と遊ぶことに夢中になりすぎて課題があることを忘れていました」
「そっか。ちなみに思い出したのはいつ?」
「昨日の……夜」
「最悪だね」
「咲良ぁ……」
助けて……と泣きついてくる藍那。今まで私達と同じクラスだった人は見慣れている光景だよね。長期休暇前に課題を忘れないよう複数人から注意され、長期休暇を楽しみ、学校が再開したら課題の存在を思い出して半泣きになる。
「……次回は忘れないようにしようね」
「恩に切ります。ありがとう咲良……!」
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