曲がり角でイケメンとぶつかったのですが、なんか思ってたラブコメと違います((泣))
やばい!遅刻しちゃう!!!
私サファイアはいまとても急いでます。
5分と思ってお昼寝をしていたつもりが、つい…
この王立学校は貴族の学舎であるため、とても厳しいのです。
一度遅刻してしまうと、その日のうちに家に連絡がいってしまいます。
こないだも遅刻してしまい、おやつを1週間も抜かれてしまいました。
まぁ、私は同年代の子と比べ背が高く足が長い方なので、鬼ごっこで最後まで残れるくらいには足が早いのです。授業開始の鐘がなるまでには第二講堂につけるはず。
先生方にいつも走るなと怒られてしまうのですが、今は仕方ないでしょう。
おやつを一週間抜かれるよりは、一時間ばかり説教を聞くほうがましです。
ああ、学校が広いのが恨めしい。
足が早くても体力はないのです。
あとあそこの角を曲がれば…
曲がり角に差し掛かったとき、ドンっ、と強い衝撃が私の顔を襲いました。
衝撃を受け止めきれず尻もちをついてしまうと、目の前には銀色の髪をした男の子がいました。
その男の子は頭を抱えうずくまっています。
大丈夫ですかと言おうと口を開けたとき、口の中に鉄の味がする液体が入って来ました。
ハンカチで顔を拭うと、どうやら鼻血がでているようです。
確かになんかじんじんと痛みを感じてきました。
とりあえず血の止まらない鼻をハンカチで押さえ、男の子を心配し「大丈夫でしょうか」声をかけました。
鼻を塞いでいるので、貴族令嬢らしからぬ酷い声です。
あ、廊下を走っている時点で違いますか…
私の声が聞こえたのか男の子がこちらを向きました。
物語の中から出てきたのではないか、と思うくらいとても綺麗な子でした。
透き通ったターコイズブルーの瞳で私をまっすぐ見て、
「…おでこが痛い…」と言いました。
確かにその額には赤い跡がついていました。
ぶつかったとき、なにか髪飾りでもあててしまったかしら…
そのとき、授業開始を告げる鐘がなりました。
遅刻確定です。
私のおやつ…
○○○
今、私と男の子は保健室にいます。
鼻血もようやく止まりました。
男の子の額の跡は私の歯だそうです。
確かによく見ると、くっきりと歯型がついています。
男の子の名前はエラルド様と言うそうです。
エラルド様も授業に遅れそうで走ってた、とのこと。
『曲がり角でイケメンとぶつかる』というのは一度はやってみたかったラブコメの王道のはずなのに、この状況はなんか違うと思います。
まず、そもそも身長がヒロイン(私)のほうが高いのです。
もうここから違う気がします。
次に、王道だと
「おっと…大丈夫かい?怪我は?」と、イケメンにそっと抱き抱えられるというものなのに、私とエラルド様の場合は絶妙に身長差が合わず、私の顔に下から突っ込むような感じで鼻にエラルド様の頭部が、悲鳴をあげようと半開きになり空いた口に歯めがけて額がきたのです。
歯、折れなくてよかった…
○○○
というわけで、ものすごくラブコメの王道と違いますが、『曲がり角でぶつかったイケメン』と私は仲良くなり、家どうしの婚約も結べ、恋人同士として今も一緒に居ます。
私はラブコメもどきの事件後もどんどん背が伸び、エラルド様より身長が高いままです。
なので口づけを交わすときは、彼が背伸びをしてくれます。
曲がり角でイケメンとぶつかったのですが、なんか思ってたラブコメと違いましたけど、とても幸せです。
読んでくださり、ありがとうございました。
自分が小学校でやらかしたことをもとに書いてます。
恋への発展はありませんでした((泣))