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初めて時間を戻した時から、お姉様が死ぬことをきっかけに何度も"1年前"に戻りました。ちょうどスヴェンとお姉様の婚約が決まった辺りに。


時間を戻すには条件があって、条件は今話すと長くなってしまうから、とりあえずスヴェンに協力してもらう形で無理やり条件を達成させたという事と、時間を戻すことに関わった人間は、記憶を保持したまま時間を遡ることが出来るという部分だけ話しておきますね。


そもそもどうして時間を戻したかって?それはお姉様が妹……元々私にあった花の印を移す身代わりになったという事実を知ったから。

花の印についての概要を知るまで結構苦労したんですよ。その間に何度もお姉様の死に間に合わなかったし……。


まぁ苦労の冒険譚は後にして、お姉様が死んだ原因が"本当に"花の印せいかもしれないと思い始めた頃に、その印を持って産まれてくる子どもは200年前、聖女のいた時代から続く貴族の血縁に現れている。と共通点が見えてきたんです。







アーリアの話を聞きながら、私は今口がぽかんと空いてないか慌てて口元に手を当てて確認する。別に呆けていた訳では無いが、少し整理しなければならない。


「えぇと……今まで1年前に何度か時間を巻き戻していて……その間に、花の印について幾つか分かった事があったと」


「お姉様は、お気付きでしょうが今回は初めて"2年前"に時間を戻しています」


「本来なら第一王子は巻き込まれる形で殺されて、被害も多く、実行したもの達の最後も凄惨なものでした。でも今回はお兄様が出てきて自体が変わった、まさか殺し方が変わるなんて思わず、捕まえることが出来ませんでした」


「私がお兄様に手紙を送ったからでしょうね間違いなく……」


変に関わってしまったせいで、アーリアやスヴェン様の計画を狂わせてしまったのかもしれない。本当にお兄様が動くのは特に予想外だったから。


「それはいいのです、結果的に殿下の生存と接触という目的は果たせましたから」


自害した彼らを思い出してしまう。


「……花の印について聞こうかな」


「先程も話したように花の印は、それを持って生まれた子から別の子に移して赤子のままこの世から葬る事でその存在が隠され続けてきたものです。

今までは印を持っていたのは初めて生まれた初子に現れていたはずなのに、お姉様と殿下は次に生まれた子に印持ちが生まれて移されている。それが恐らくお2人が今にまで殺されていない理由だと考えています」


まさかアーリアが呪いのことを知っていたなんて。そう思いながら、どこか他人事のように、自分の死について質問をした。


「でも私は20歳には花の印で死ぬことになっているはずよね?ならわざわざそこまでして手を下す必要があるのかしら」


「そう……なんですけど……実際にお姉様のご遺体の印は大きく肥大化していましたから……でも正直なところ引っかかっている事もあって……」


今は左の胸あたりに手のひら位の花のような模様の印があるが、肥大化と聞いて何処まで大きくなってしまうのかと想像して流石にゾッとしてしまう。


「引っかかること?」


「誤差……かも……しれないんですけど、1度だけお姉様の死期がいつもよりも早かった事があるんです。

………これについては分からないので、とりあえず第一王子今回の関係について説明しますね。今まではお姉様が死んでから1年時間を戻したと言いましたよね?つまりその頃には既に騒動が起こった後になります」


第一王子の死には不可解な点が幾つもあったと、アーリアは私と同じような疑問を持っていたらしい。そうして調べていくうちに、殿下の母親の故郷は聖女プリシテラと関係がある事が分かったという。


「聖女の生まれ故郷であったため、教会の地下には聖女についての記録が沢山残されていたらしいのです。でも、殿下が殺された後に地下の書庫で火事があり殆ど書物が燃やされてしまいました」


「教会の地下、もう無くなってしまったからと、その存在自体ずっと隠されていた事を教えてもらいました。……思ったのです、聖女についての古い記録が補完された場所、今の時点では"まだ"知られてなかったのではと。知っているのはガラテ殿下と殿下の母君の家系だけでした」


「知られていないって……誰に……?」


「はっきりとは分かっていません。でもきっと意外な人物では無いと思います」


ガラテ殿下が言った、何かに握られている命、その人物が呪いについて知っている。


「そういえば、私は覚えているとは言っても全部を鮮明に知っているわけじゃないのはどうしてなのかアーリアには分かる?時間を戻す事に関わった思い出も無いのだけれど……」


「……1年、戻していた時には、時間を戻すための条件のせいなのか奇跡的にお姉様にも記憶が残っていたことがありました。でも今回、2年戻せたのはお姉様のおかげなんです。それが原因で記憶が半端になってしまっているのですけれど……」


なんだか歯切れの悪いアーリアは話すのを恐れているのか、口篭る。するとただ静かに話を聞いていたスヴェン様がアーリアの代わりに言葉を繋げた。


「アーリアにはもう時間を戻すための力が残っていなかったんだ。覚えているだろうか、魔力は記憶に相当するという話を。……時間を戻すのに必要な力をラシェルの記憶で補ったんだ」


「!!」


「誰かの記憶で代用するのは、1度だけ出来る最後の手段なのだと。……大切な記憶から食されていくものらしい」


「誰かの、というか私と近しい関係性がないと代用出来ないけどね……だから、今回お姉様が何処まで覚えているのか、スヴェンと手紙でやり取りしながら探っていたんです。……全部の記憶を食べてしまったかもしれなかったし」


アーリアは俯いて、その声はとても震えていた。


(そうか、だから記憶が曖昧ではっきりしなかったんだ)


「……うん?だけど、そんな探らなくても初めから教えてくれても良かったんじゃない……?」


「それは……それはね、お姉様、初めから説明したこともあったの。でもどんな記憶がトリガーになってしまったのか、今までの事を一気に思い出すせいなのか、とにかく今までの事を話したのが原因でお姉様の精神が壊れてしまった事があって……そうなってしまったら、もう手の施しようがなくて……記憶のせいで壊れてしまったお姉様はまともな会話すら出来なくなってしまうくらいの状態で………私達が1番恐れていたのは、思い出したことによってお姉様の精神が壊れてしまう事だったの」


アーリアは今にも泣きそうになりながら一生懸命に言葉を紡ぐ。

公爵家にいた時に、突然アーリアがルーゼイン侯爵家について話した事を思い出した。あれは私の記憶が何処まで残っているのか確認するため、そしてスヴェン様との出会いを確認したのは何の記憶を失ったのかを探り、どの話が精神を壊すきっかけになってしまうかを見極めるためだったのだと納得する。


「もう、時間を戻すことは出来ません、全部使ってしまったから。だからすごく怖かった。もう取り返しのつかない今、あの時のようになってしまったらって」


「……ありがとうお姉様、聞いてくれて。今日はそろそろ休みましょうか、時間が必要でしょう?」


「うん………そうだね、でもそんなに時間は要らないわ。あなたの言葉を全部信じるからきっと」


気がつけば外がほんのり明るくなってきていた。まだまだ話すべきことがきっとアーリアにもスヴェン様にも残っているのだろう。

そしてこれからについての事もある。きちんと休んで、今度は紅茶でも飲みながら話しましょうと、アーリアは当たり前のように私の部屋で一緒に寝るのだった。妹はスヴェン様に羨ましいだろうと舌を出しながら。2人は一体どういう関係性なのだろうか……。


そして私は重要なことに気が付いた。


殿下の悪しき印という言葉で勝手にアーリアもそう話していると思い込んでいたが、よくよく考えてみれば


一度も"呪い"だなんて、アーリアは言っていないということに。


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