表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第4話 夢か現実か

 「よし、行くぞ」


 嬉しそうにマイケルさんが、穴をくぐる。それに続きミーチさんもくぐった。

 僕も行かないとダメだろうか。


 「おい、荷物持ち。お前も来いよ」

 「だから荷物持ちじゃないって」


 文句を言いつつ、僕も穴をくぐった。立って歩けるものの二人ならんでは歩けない横幅。なので荷物を持って歩くのが大変だ。


 「うん? 行き止まりかよ」


 10分程一本道を歩くと行き止まりになった。


 「えぇ。何それ」

 「うーん。きっと荷物持ちが何かスイッチを触って穴が開いたと思うからここら辺にもスイッチがあるかもな。みんなで探すぞ」


 探すって言われても今いる場所を探すしかないんだけど。


 「それにしても今までよく見つからなかったわね」

 「ここまでの一本道には、ゴブリンはいなかった。サーチではまず探せないだろう。マップの魔法とかでも通った道がマップとして出来上がるみたいだからなぁ」


 なるほど。この一本道にもゴブリンがいればサーチでモンスター検索した時に、ゴブリンがいる隠し通路を発見できた。けどここにはいなかったので、それでは探し出せないって事か。

 マップの魔法って、通った道が記載されるのか。マップを覚えれば迷子になる事はなさそうだ。魔法持ちっていいなぁ。


 「おぉ、あった! さっきも低い位置にあったんだろうなって思って足元を探したらあった。よっと」

 「え? 押したの?」


 この人、警戒心ゼロなんだけど!

 ここで罠でも発動したら逃げようがない。

 ガガガ……。

 後ろから何かが動く音がした。まさか、穴が塞がった?


 「あ、もしかして向こうの扉のスイッチだったか?」


 マイケルさんが、少し焦ったように言う。

 ガガガ……。

 と、後ろの音がおさまると目の前の壁が動き出した。


 「おぉ! 向こうを閉めてからこっちが開く仕組みか!」

 「やったわね!」


 二人は大喜びし、開いた先を覗き見た。

 ぽっかりと広い空間。その奥の壁の一か所が黄金に輝いている。


 「あれって、小さいけど宝箱じゃないか!」


 マイケルさんが走り出した。ミーチさんもその後を追う。

 僕一人、恐る恐る一歩を踏み出す。扉が勝手に閉まってしまわないかと、ドキドキしたがそれはないようだ。


 「まさか、ここで宝が手に入るなんて!」


 罠があるかもしれないというのに、マイケルさんが宝箱に手を伸ばす。ダメだ! それを手にしては!


 「ダメー!!!!」


 僕は、大声で叫んでいた――。


 うん? あれ? ここってどこ……。ダンジョン内ではない。外だ

 大声で叫んで……いや違う。ゴーレムに……。大声で叫んだのって夢か。うん? あれ? ちょっと待って! どっちが夢?


 僕は、ガバッと上半身を起こす。自分の体を見渡すも怪我した個所は見当たらない。もちろん痛い場所もない。

 どこからが夢?


 「あ……」


 僕の横には、マイケルさんに持たされたソロテントに食料が入ったリュックが、そして僕の顔面に当たった黄金の小さな宝箱もあった。


 「どういう事? 隠し通路もゴーレムに襲われたのも現実? ここはどこ?」


 目の前にぽっかりと空いた空間が見える。ダンジョンの入り口の前だ。

 た、宝箱があるって事は、隠し通路でこれを見つけた事は現実で、じゃなぜ僕はここにいる?

 僕は、冒険者カードを見てみた。夢でなければ、レベルは4になっているはず。


 「は? 2レベルのまま!?」


 意味がわからない。うん?


 「あ―――!」


 もっと意味がわからないものを発見。スキルに『帰還』という文字がある!


 「どうなっているの?」


 いつ覚えたんだろう、このスキル。あ、もしかして今が夢の中とか?

 ……だったら開けてみてもいいかな?


 僕は、宝箱を手にする。

 カパッと簡単に宝箱は空いた。

 小さな青い座布団の上に、虹色に輝く球体がちょこんとあるだけ。これってマジックアイテムとか? 触っても大丈夫だろうか?

 球体を僕はツンとつついてみる。

 硬い。水晶かな? 大丈夫そうだ。

 そうっと手に取った。ちょうど手に収まるぐらいの大きさで、思ったより軽い。

 マジマジと見つめていると、球体が眩しいほど輝きだした。


 「うわぁ。眩しい!」


 眩しさに目をつぶり、目を開けると手には持っていたはずの球体が姿を消していた。慌てて僕は、辺りを見渡す。転がった感じはしなかった。やっぱりない。光って消えた?

 パタン。

 僕は、宝箱の蓋を閉めた。うん。これには何も入っていなかった。そう、何も……。

 というか、これ夢じゃなさそう。

 二人は、どうなったんだろう。あの隠し通路からでられたのか。もしかしたら冒険者協会に戻っているかも。

 死亡届を出されたら厄介だ。戻らないと。

 荷物はどうしよう……。

 はぁ……持っていくか。うん。そうだ。これを売ってやる!

 よく考えれば、僕を閉じ込めたじゃないか!

 なぜ助かったかわからないけど、本来なら死んでいた。

 僕は、荷物をずるずると引きずりながら冒険者協会へと向かう。なんだろうなぁ。ダンジョンでゴブリンを倒しつつ荷物を持って移動してヘロヘロだったはずなのに。そこまで疲れた感じがない。

 僕は、何時間、倒れていたんだろう。街の近くのダンジョンでよかったと思いつつ街を目指すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ