54 ハンマー男
「ウギャアアアアアア!!」
———ビリビリッ!
あたりに電流が流れ、一人の成人男性が地面に倒れる。その状況を作り出したのは一人の少女———じゃなくて、幼女。
「ふぅ……」
(幼女誘拐って、ロリコンかよ)
辛辣なことを思いながら、倒れている男を睨みつける幼女。先程まで手足を縛られていたはずなのに、どうして動けるのか。
それは1時間前ぐらいに遡る。
♢♢♢
(クッソォ、盗賊団に捕まるとは……。って言うか、幼女誘拐って……なんに使うの?)
俺はそう言う思いで仲間と思われる人物と話している、男を睨みつける。
盗賊団のほとんどが男であるが、最初に俺に話しかけてきた人物。おそらく、俺を眠らせたのもこいつだろう。
さて、手足が縛られては何も出来ない。そこはどうするか……。
(一旦、様子見だな)
何をするのか、何をしたいのか、その目的そのものが不明な、現状。下手に動くわけには行かないだろう。
隙を見せた瞬時に、魔法で攻撃すれば良いはず。
(一旦、どうすっか)
こんな体験、生まれて初めてだ。もちろん、前世でこんな経験などしたことがない。異世界ならばそう言うのもあるのだろうが。
と言うより、おっさんを誘拐したとしても、需要なんてない。それが一番の理由だろう。
だが、俺は今は幼女。一定の層なら需要があるのだろうけど。
(あーあぁ、なんてこったい。仮に、出られたとしてもどこか分からない以上、どうすることもできなさそうだな)
「で、どうすんだ?」
「あぁ、ふっ。このお嬢ちゃんには。少しだけ、ほーんの少しだけ、痛い思いをしてもらうだけだが……」
(痛い思い? え、今から数の暴力にあう?)
と言うより、何故俺がそんな目に遭わなくちゃならない?
この人物たちとは初対面だ。なのに、何故?
いくら考えても、答えは出てこない。
(考えても埒があかない。とりあえず、ここから脱出……)
そう考え込み、俺はなんとかローブを外そうと試みているが、やはり外れない。
だが、まだ目の前にいる男どもは、話に夢中だ。
ニヤニヤとしながら、話し込んでいた。
今なら行けそうだ。思い切っていってみようか。
(こいつらがどんな力を持っているか知らないけど、不意打ちなら………)
だが、まずは。腕のローブを解かないと。この程度のローブなら弱い炎程度でやれそうだ。
(………ふぅ。よし、やるか)
「『小さな炎』」
俺は小声で言い放つ。指から小さな炎が出現し、それは瞬時にローブを焼いた。
———ボウッ!
と、音を出して。
「あ?」
「なっ!? いつの間に!?」
「———『気絶!』」
咄嗟に唱えると、成人男性どもはその場に倒れる。気絶させる魔法であり、固有魔法の一つ。
通常の属性魔法とは違い、固有魔法な為、この系統の魔法を取得する場合は、魔導書内に書かれている固有魔法項目に該当する。
それを使い、先程いた男どもはその場に倒れ込んだ。気絶させる魔法な為、急いでこの場から離れないと、すぐまた起きてしまう。
(早く、足のローブを解いて、ここから抜け出さないと)
急ぎ足のローブを解く。あたりは暗闇に近い暗さ。目が堪えたない状況じゃ、不利だ。なら、光魔法を出して、視界を確保するしか方法はなし。
「『光』」
光る球体が姿を表し、真っ暗闇を照らす。目で見えるようになり、その場から離れることにした。
———トツ、トツ、トツ
この場所がどこか。石っぽい場所だが、正確には分からない。だが、反響すると言うことはもしかしたら。洞窟……とか。
王国の近くの洞窟なら。俺がこの世界にやってきて最初の地点———だろう。
♢♢♢
そして今に至る。
「ふぅ、とりあえずかなり進んだな」
疲れが見えてきた。そもそも何故俺を誘拐したのか。それが気がかりで仕方がなかった。
何か理由があるのか……。
盗賊団の一味らしいが、俺を誘拐した理由がやっぱ分からない。
「………………クソォ、理由がわからないな」
そんな時だった。
その刹那、後ろから妙な気配を察知する。その気配に察知し、俺は瞬時に後ろを振り向く。
すると、ハンマーを持った男が振り下ろそうとしていた。
「———なっ!?」
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