53 幼女誘拐とかって
書き直しました
皇御国から王国へ戻り、一週間が経過する。
ミラ、アイヴィーはアンナさんの元へ暮らすようになり、アンナさん宅はかなり人が多くなった。
大所帯となり、かなり狭くなってくる。
「多くなりましたね」
「そうだね……」
人がかなり多くなった、アンナさん宅で俺は魔導書を読む。
固有魔法の項目を見る。ペラペラとめくり、それだけでも体は休めることができた。
最近は本当に疲れた。竜王退治だったり、大蛇と戦ったりと。
(まぁ、団子は美味しかったけど)
今アンナさん宅にいるのは、俺とアンナさん。今日は仕事がお休みらしく、普段着のアンナさんの姿を見ることができた。
なんとも新鮮さ。甲冑を着ていなかったら、大人の女性としか思えない。
ローズとカメリア、ミラにアイヴィーは外へと出かけていた。ランスと遊びに行くためのようだった。
「ヴィーゼさん、コーヒー飲みますか?」
「あ、うん。ありがとうございます」
今俺は、食卓にて魔導書を読んでいる。そんな中、アンナさんが俺にコーヒーを飲むか尋ねてきたため、俺はそれに応える。
台所らしき場所から、食器類の音が聞こえ、そこからコーヒーの匂いが漂う。
それは良い。それは良いのだが、なぜか俺の後ろから足音が聞こえてくる。
アンナさんは俺の視界に入っている。そのため、後ろには誰もいないはず。なのに、何故か。
俺はゆっくりと後ろを振り向いた。だが、誰もいない。
そんなホラーでよくあるやつとか良い。むしろ、この時に出てきて欲しい。
(なんだ……)
振り向く前まではかなり心臓が脈を打った。安堵の息を吐き、再び魔導書を読もうとした時。何かで口が覆われる。
「………!?」
抵抗しようとしたが、何故だが瞼が重く感じる。視界が少しずつ狭ばり、体に力が入らない。
あれ、これかなりまずい?
この咄嗟のことのせいで、かなりの俺の心臓は高鳴りを表した。恐怖が俺の心を蝕む。
誰だ?
誰だ?
と、懐疑の心が出現する。
アンナさんは未だに気付いていないようだ。やばい、助けを求めなきゃ。
(………………だ、だめだ……)
助けを求めるのもを虚しく、俺はとうとう気絶してしまう。
瞼が確実に閉じ、力に体が入らなくなった。そして、意識も———失っていった。
♢♢♢
「ヴィーゼさん、コーヒー……。ヴィーゼさん?」
アンナはコーヒー注ぎ、食卓のテーブルに置こうとした時、振り向くとヴィーゼの姿がなかった。読んでいたはずの魔導書も無くなってしまい、扉が開いていた。
不自然に思うが、もしかしたらヴィーゼが外に出たのではないか。と、予測してしまう。
「せっかくコーヒー淹れたのに……」
と、残念に思いながら、コーヒーのマグカップをテーブルに置き、外へと様子を見に行く。
実際、アンナはヴィーゼとあまり喋らなくとも、仲良くなりたいとは思っていた。
初対面で会った時、あんなに警戒心が剥き出しになってたのに、今となってはかなり信頼を置いている。
理由としては、時間の流れの解決だ。
ヴィーゼと一緒に過ごすにつれ、自身の仕えているランスがかなり信頼を置いていることを感じ取り、いつしか自身も仲良くなりたいとは自然と思った。
その決定源が皇御国の時、ミラを助けに行く時、アイヴィーを助けに行く時。
何故そこまで他人のために頑張れるのか。それが不思議で堪らなかった。それを知るため……とも言える。
「一体、どこへ行ったのでしょうか?」
♢♢♢
「ん……、ん?」
目を覚ますと真っ暗な場所にいた。ここはどこなのだろうか。先程までの場所と全く違う。
視界が暗く、全く分からない。立ち上がろうとした時、何故か立ち上がれなかった。
(え、な、なに?)
手を動かすこともできない。動揺が混乱を招く。手を動かすことも、足を動かすことも。感覚そのものを縛られているようだった。
(もしかしてだけどさ………誘拐?)
考えられるとしたら、それぐらい。俺が幼女だから?幼女だから連れ去ったのか……。そうだとしたら、ロリコン野郎の仕業ということが安易に想像がつく。
仮に俺がただのおっさんだった場合。誘拐するメリットがない。だが、今は幼女。誘拐するメリットはある。
「お目覚めか、お嬢ちゃん」
「………誰、おじさん」
「俺の名前は、ハンター。盗賊団の一味だ」
(………それ、自分で言う?)
どうやら俺は、盗賊団に誘拐されたようだった。
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