44 敵本拠地、突入
目を覚ましたヴィーゼはアンナと合流した。アンナ自身、ヴィーゼの姿が見えなくなったとき、何か嫌な予感を感じていた。ランスたちにバレないよう、ひっそりとヴィーゼを探していると、気を失ったヴィーゼを見つけた……と言うのが、始まりである。
(ここから先、ルアの魔力が反応している)
辿り着いた場所は、洞窟の中。真っ暗で灯一つ灯さないと足元見えないぐらいの暗さ。
ここにいるのだとしたら、反響で来ていることがバレそうな予感がする。
(………それにしても、あいつは何者なんだ?)
ヴィーゼは気を失う前のことを、ふと思い出す。周りからは「兄貴」と呼ばれてた奴は、突然姿を現し、突然頭を殴ってきた。
その痛みは未だに残り、何度か殴られたであろう後頭部を触る。触ったと同時にその痛みは走った。
激痛……とまでは言えないが、確かにその痛みは感じ取れる。
微かに姿形を見たあのガタイのいい男———。
あの侍たちから慕われているような雰囲気を醸し出していた。
今は『魔力探知』でなんとか探し、目的場所に辿り着くことができた。だが、明かり一つない。このまま行くのも良いのだが、バレる確率は高くなるだろう。
(いや、でも待てよ?)
あえてバレる———と言う方法もある。
それなら、それに賭けるしかない。そう、ヴィーゼは考えている。
(うし、ふっふっふっ……それしか方法はなさそうだな)
少々危険なやり方ではあるが、あえてバレると言う策略。一つの戦略とも言える。
早速、実行開始だ———。
———ドッカーーーーーン!!
「な、なんだ!?」
「チッ! 良い所でなんだってんだ!!」
「おい! 誰か見てこい!!」
「おい、行くぞ!!」
突如の爆発音が鳴り響く。洞窟にいるだけあり、反響音が酷い。音に釣られ、男ども3人は飛び出していく。だが、もう一人の男———「兄貴」と呼ばれる存在は未だに残っていた。
(チッ、誰だ……? もしかして、あいつか? あのガキが……。チッ、だから息の根を止めておけばよかったものを)
(………何? 一体、誰が)
残った二人も混乱している。一体、誰が。どんな方法で。
だが、狐っ子の少女は誰がやったのか、検討もつかない。頭の隅にヴィーゼの姿を思い浮かべていたが、「見ず知らずの自分を助けるはずがない」と思っているから。
彼女自身、どれだけ人に疎まれているか知っている。皇御国での扱い方は、自分がよく知っている。お金を稼ぐためには、汚れ仕事を買うしか方法はなかった。
連れ去った侍たちのように、相手の欲望に従うしかなく、助けを求めても誰も助けてはくれない。だから、ヴィーゼが助けに来ることなど、知りもしないだろう。
———1つの、謎の光が一縷に光っているとは、露知らず。
♢♢♢
(作戦成功……!)
何とかして敵の本拠地? に辿り着くことが出来た。雷を投下して、爆発を起こさせ、そしてその隙に助けに行く。と言うのが寸法である。
さて、これで全員はいなくなったはず……。
そういう思いで来たのだが………。
「あ?」
「え、」
「………………………まじか」
「兄貴」と呼ばれた存在が、普通に居た。普通にそれは想定外でした。
「ヨォ、お嬢ちゃん。何か用かな?」
「………道に迷って」
「そうかい、なら、おじさんと一緒にここを出よう」
「うん!」
と言う子供のフリをすれば、なんとかなる……はず。
もう既に使役の準備は整っている。レベルが60に上がったことにより、使役できる範囲も広範囲に広がることが出来た。
この目の前の男にバレないように、使役できる手の甲を後ろに隠し、子供のフリをする。
「ふっ」
「あぁ?」
『ウォーーーーン!!』
聞き覚えのある鳴き声が、威嚇しているような声で発せられる。その声を聞いた「兄貴」と呼ばれる存在は、あたりをキョロキョロとし始めた。
だが、本来は後ろから———と思うだろう。
けど、ルアは前からやってきた。それは———。
「な、どこから来やがった!?」
「———空間移動だよ。おじさん」
今俺はきっと、良い笑顔をしているだろう。ルアにしか聞こえないように、魔物使役にしかできない芸当、使役した者たちと会話をすることだが、それでルアに言った。
『遊んで欲しいんだって』
『了解です!』
このガタイのいいおじさんを、ルアに任せ俺は狐少女の元へと行く。
「大丈夫?」
「………………」
驚いた表情をしながら、俺を見ていた。だが、この子の瞳にはたっぷりの涙と、涙を流した後の線が頬に伝っていた。
これほどまでの涙。おそらく、玩具にされかねなかったのだろう。
何とも悪党だ。
俺は「もう大丈夫」と言う思いでその子を抱きしめる。無意識的なのか、その子も俺の背中に手を回し、ギュッと握っていた。
「もう平気だからね」
その意味も込め、頭を丁寧に撫でる。頭がめちゃ柔らかかった。いつまでも触っていたい。それは今はどうでも良いとして、その子を立ち上がらせ、あのおじさんの方を見る。
「ぬわぁあああああ!!! やめて!!」
『ガルルルッ!』
「いやぁあああああ!! 許してーーーー!!」
『グルルルルル!!』
もう一度俺は、ルアと喋る。
『もう平気、帰ろう』
『分かりました!』
俺がそう言ったため、ルアはおじさんとの追いかけっこを中断し、俺とその少女はルアの上に乗る。
ルアに所々噛まれているせいか、おじさんが来ていた服が所々破けていた。
(ありゃりゃ。まぁ、仕方ないよね。女の子を自分の欲望のためだけに使うのは……。そんなの性犯罪者と変わらなさそうだし。そんなのただの強◯まがいよ)
ちょっとだけあの光景のおじさんを見て、ほんの少しだけスッキリした。
うん、無理矢理、ダメ、絶対。
アンナさんはと言うと、爆発音で釣られた侍たちの処理をしてもらっている。あ、間違えた。処理じゃなく、対処。
♢♢♢
何とか洞窟の方を出て、アンナさんと合流しようかと思いきや、洞窟の方から怒鳴り声が聞こえる。
その方向に咄嗟に向くと、先程のおじさんが追いかけてきていた。
(えー、まじか。どうする? ここにはアンナさんはいないし……。仕方ない、この子はルアに任せて、いっちょかっこいいところを見せますか!)
「オイ、コラァアア!!」
『ルア、この子頼める?』
『分かりました!』
再びルアに話しかけ、俺はルアの上から降りる。そのおじさんの元へと近づこうとしたところ、誰かに服を引っ張られた。
「……ん?」
「あ、いや、えっと……」
その狐少女の顔はとてもじゃないが、不安な顔をしている。この子にどんな事情があるのか。それは未だにわからない。分かっているのは、お母さんが倒れたぐらいしか。
だが、何故だろう。この子は、放っておくと何か危険なことをやりかねない。
「大丈夫」
そう言い捨て俺の服を掴んでいる、その子の手を振り解いた。
さぁ、行きますか。そんな小物はあっ! っと言わせてやんよ!!
目指すは瞬殺!!
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