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おっさん転生〜異世界へ転生したおっさんは、かっこいい幼女になりたい〜  作者: 猫屋敷
三章 元おっさん、竜王退治へ
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37 蟷螂の斧

マーナガルムの魔剣を手にし、時間稼ぎをする俺は、他の魔物たちと力を合わせて【破滅竜】と【竜王】の称号を持つ、ロヴィーナを相手にする。


気迫があるこの瞬間。足がすくみそうになるが、勇者が来れないのなら、俺がやるしかない。


理由?そんなの簡単。一度は勇者になってみたいじゃん!!


勇者に憧れ、強きものを倒す。そんな勇者に憧れていた。

そんな俺からしてみると、この機会は絶好のチャンスと言っても過言ではない。

今この瞬間こそが、俺の追い求めていた瞬間でもある。


そう考えてくると、心臓の鼓動が早く脈を打つ。


———ドクン、ドクン


張り裂けそうなこの思い。そして冷や汗が顳顬こめかみから伝い、頬へと渡っていく。

魔剣をしっかりと両手で持ち、持ったことのないこの重量を感じさせる。重たい。これを勇者達は必死に持ち、そして戦うのか。


そう考えるとどうもワクワクしてくる。勇者がいないのなら、誰かが勇者になればいい。


「だぁ!!」


地面を思いっきり蹴る。

俺の放った氷攻撃が効き、まだ地面へと居座っているロヴィーナ。

その隙を狙い、ロヴィーナとの高低差が空いた。

そこを狙い、マーナガルムの魔剣を大きく振り落とす。


『ギャオオオオオオ!!』


幼女の体ではかなりの重量は限界がある。

今でも力を精一杯放ったかのように、気疲れする。

だが、やはり。魔剣だとしてもロヴィーナの鱗はとてもじゃないが、固すぎる。

魔剣の刃をもろとも食らっても、全く歯が立たない。


(くそ、流石にこの体じゃ無理か? だが、大蛇と竜王、どちらかを選べと言われたら、答えは簡単)


——もちろん、ロヴィーナを選ぶ。何故なら、“ドラゴンだから。

俺の嫌いなものは虫と蛇など。あいつらはほんとお断りしたい。虫の中に関しては、ゴキ◯リ、蜘蛛、蜂。あいつらは本当に無理だ。


『ギャオオオオオオ!!!』


雄叫びを上げながら、翼を羽ばたかせる。それで起こった強風が巻き起こる。山に生えている木が強風で荒々しくなる。

轟々と音を立てながら、唸っているように聞こえる。再びドラゴンの得意分野である、空中戦。こうなった場合、魔法で撃ち落とさないと、どうにも出来ない。


だが、魔力は無限じゃない。魔力は有限。魔力切れになれば、確実に詰みだ。だが、魔物達が力を合わせてくれている。


「ふぅ……」


一息、息を吐いた。集中せざる終えない。今目の前にいるロヴィーナに集中する。意識を深く集中させる。

少しずつ、自分の鼓動だけが聞こえてくる。先程まで聞こえていた魔物達の鳴き声。それが全く聞こえなくなってくる。


———ふぅ、集中集中…。


やったろうぜ!と言う気持ちをグッと堪える。

集中を乱せたくなかった。それが一番の理由だ。


意識全体を集中させる。今体内にある魔力全部を、手に集中させた。

魔力が手から伝わり、魔剣に注ぎ込まれる。飛んでいるロヴィーナに一歩近づく為、右足を前に出す。


それと同時に展開される魔法陣。紫色の光が神々しく光る。体全身に伝わる、その活気。


「行け。———【毒刃ベネノ・ラーミナ】!!」


目の前にいる強靭な体を持つ、ドラゴン。固い鱗を持つ体に攻撃を放った。猛毒を纏った魔剣を振り翳し、紫色の刃がロヴィーナの元へといく。だが、それを跳ね返した。


強靭な体は毒の塗られた刃をも跳ね返す。これは困った。


(くそ、だめか……)


体内にある魔力がほぼ枯渇した。最悪とも言えるこの状況。


———どうしたらいい?どうすればいい!


別の意味で心臓がバクバクする。時間稼ぎはした。あとは、騎士団が来るのを待つだけ。

だが、まだ魔物達が戦っている。あきらめると言う言葉を知らないようなほど、気合満々となっていた。


「まだだな……」


ほぼ魔力が枯渇している状態。MP10ほど。もう使える魔法と魔力がない。

どうしたらいい?どうすれば……。

困惑状態に陥る。再び冷や汗が顳顬から頬に伝っていく。


魔剣を両手でギュッと握り、ロヴィーナは炎のブレスを吐く。

その攻撃を躱す。炎のブレスが山全体に広がり、炎が一瞬のうちに広がった。


「くそっ! しまった!!」


周りの木に次々と炎が回る。山火事になったら、まずい。不味いことに越したことはない。

最悪だ。最悪すぎる。


近くには村がある。ミデール山に存在するミデール村。あそこには村人達が存在している。

このままだったら、ジリ貧だ。どうする事も出来ない、このままだったら———。


———そう。このままだったら……。




♢♢♢





山を登る騎士団達。山には轟々と栄える炎とその煙。騎士団達の間には、重たい空気が流れる。一緒にやってきたローズとカメリアは不安そうな顔を浮かべる。

2人の心の中には、黒い渦が巻き起こる。不安と、心配。ヴィーゼはどうしているのか?そればかりだった。


「早く行かないと!」

「えぇ、あそこにヴィーゼさんがいるのですよね?」

「はい! そうです!」


2人のその言葉にアンナは騎士団達ともに、その場所まで慎重にいく。黒煙が上る。炎は一斉に広がり、騎士団は二手に分かれた。


竜王・ロヴィーナを倒すための班と、ミーデル村の救助に行く班と分かれる。

アンナ達の目前に見えるのは、竜王・ロヴィーナと戦う魔剣を持ったヴィーゼと、その周りと共に戦う魔物達。


その光景に違和感を覚えるアンナと騎士団達。そして、ローズとカメリア。


「くそっ!」


マーナガルムに乗り、ロヴィーナとの高低差を何とかして縮める光景。

ヴィーゼの横顔からは、綺麗な肌色がオレンジ色に輝く。そしてヴィーゼの目からは、敵対心が溢れ出ていた。


「———よし。騎士団、私たちも竜王・ロヴィーナを倒すため、ヴィーゼさんに協力するわよ!!」

読んでくださりありがとうございます!


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