24 王宮内
「え、ランスの? ですか?」
突然アンナさんからそう言われた。
何故そうなったのか。この間のマーナガルムと旧王都の件で、騎士団指揮者のハズキの耳に入り、騎士団入団、もしくはアンナさんとの護衛役を。と、言うわけだった。
俺、剣なんて扱った事ないんだけど…。
と言っても、どうやら拒否権はないらしい。
ナンテコッタイ。
「ごめんなさいね。騎士団指揮者の命令は絶対なんです」
「は、はぁ…。まぁ、いいですけど」
「と言っても、私が動けない時、ですけどね」
(なんだ、それならいけそうじゃん)
とか思いながら、俺はアンナさんと一緒に王宮へと行く。
俺に護衛なんてできるだろうか?
正直不安だ。騎士団でもない俺が、王女の護衛役など烏滸がましいにも程があるんじゃないか?
拒否権はない。ほんとナンテコッタイ。
王宮の門に着いた時、逞しい門が目の前に広がる。
重たそうな門が開かれ、アンナさんと共に入る。
流石は王宮というべきか。庭も広く、そもそも敷地面積次第が広すぎる。
王宮ともう一つの建物と、広すぎる庭と、綺麗な噴水。
王宮だけでも大きくて、見上げなきゃ全体を見渡せない。いや、視界全体で王宮全体を見ることは出来ない。
それぐらい、建物はでかい。
「ヴィーゼ! いらっしゃい!」
「あ、うん」
出迎えてくれたのは、ドレス姿を着ているランスだった。
フリフリが着いておらず、シュッとなっている。
こう見ると、本当に王女様なんだと改めて認識させられた。普段着の格好は王女だったバレないように、庶民寄りの服を着ているせいか、多少の違和感がある。
「さ! 行きましょう! お父様から許可は降りているわ!」
と、俺の腕を掴み王宮の方へと引っ張られる。
改めて見ると、本当にお嬢様だ。
王宮の扉が開かれ、ビビるぐらいに王宮内はキラキラと輝いている。
靴を履いたまま、王宮に入り、メイドさんや執事の人がせっせと働いていた。
長いワンピースの上に白色のエプロンが重なり合い、リボンの装飾品が付いていたり、頭にはメイド服とセットである頭飾りもついていた。
執事の人たちは黒色のタキシードを、身に纏い、日本ではなかなか見られない光景だ。
「いらっしゃいませ! お嬢様のご友人様の、ヴィーゼ様ですね?」
「あ、はい。えと、あなたは?」
「私はお嬢様の専属メイドの“メーア”と言います!」
元気一杯に挨拶する、メーアさん。
赤茶髪の髪色で、低い場所に三つ編みをしていた。
「メーア。ヴィーゼを部屋に案内してくれる?」
「畏まりました!」
メーアさんは俺をランスの部屋へと案内し、その間にアンナさんとランスとは別行動。
アンナさんはランスさんについているため、俺は大人しくメーアさんの後ろをついていく。
「ここがお嬢様のお部屋です。お飲み物を持ってきますので、どうぞ座っていてください」
ランスの部屋につき、俺はメーアさんからそう言われる。
豪華すぎる扉のノブを捻り、部屋の中へ入ると、流石は王宮内。あるもの全てがキラキラ輝いていて、眩しいくらいだ。
ベットにはカーテン付きであり、レース状。色んなぬいぐるみがあり、女の子らしい部屋だ。
(座っとけってあそこだよな)
見たことないぐらいの豪華な椅子。
目の前に広がっている光景に圧倒されていた。ひとまず俺は、椅子の方に座る。なんとも座り心地が良いような気がして、滅多に座ることができないこの感触を、堪能していた。
ここに来る前の廊下も、赤い絨毯が敷かれており、周りには肖像画や、高そうな壺も置いてあった。
入ってきたホールには、この国を象徴するものなのか。ドラゴンの紋章が壁に描かれてあり、そこに騎士団を象徴させる、盾と剣、そして弓。それが一つに重なった姿が壁にかけられていた。
(…普通に緊張する)
俺の体も珍しくガチガチに固まっており、緊張していた。社会人だった俺が、こんなにも手に汗を握るぐらい、緊張しているのは、多分初めてだ。
♢♢♢
「お待たせいたしました。どうぞ、紅茶とクッキーでございます」
やってきたメーアさんは、湯気が出ている紅茶が入っているコップを2つと、モザイククッキーの乗った皿がトレイに乗せられており、それを一つずつ丁寧にテーブルの上に置いた。
「お嬢様は今、着替えておりますのでどうぞお寛ぎください」
と、一礼してから再び部屋を出ていく。
お寛ぎ…と言われても、こんな凄すぎる部屋で寛ぐことなど出来無さそうが、まぁ待つことにした。
それから約10分後。
ランスがアンナさんと共に、やって来た。先ほど来ていたドレスから着替えたらしく、着やすい服に着替えていた。庶民寄りな服を着ているランスに、呆れを催しているアンナさんがいた。
(まぁ、この国の王女様がそんな格好していたらね……)
と、少しアンナさんの気持ちがなんとなーく、わかってしまう。
「あら、待っていてくれていたのね。ごめんあそばせ」
(さっきの口調と全然違くない!?)
謎な口調に驚きを見せた。最初出会った時はそんな口調のはずだったのに、今まではお嬢様らしい口調なんてしていなかった。
「……バグよ」
「へー、そうなんだー、バグってすごいなぁ(棒)」
(いや、ぬなわけねぇだろ)
人体にまでバクるなんて、聞いたことも見たこともない。ここはゲームの世界じゃないため、人がバグることなんてあるわけ無い。
って思いたいのだが、“ゲーム”なんて単語を出したら、少し怪しまれそうだ。
「それで、なんで自分に? 護衛役を」
「それは私から説明させていただきます。お嬢様はこの歳であられながら、政略結婚が決まっておりました。ですが、トラブルにより、お嬢様のプライドをズタボロに刺さられる事態が起こったのです」
政略結婚というのは貴族界では当たり前な気がしてくる。それはアニメなどを見過ぎでなのかは不明だが。だが、トラブルというのは一体何なのか?プライドをズタボロにさせられるまでの事態とは?
「その為、ヴィーゼさんには私と一緒に、お嬢様の元婚約者がおられる国へと、一緒に行ってもらいたいのです」
「あ、アンナ!? ヴィーゼに何でそんな事を!?」
「お嬢様とて、未だ13歳。3年前のことをお忘れになられたのですか?」
(10歳の時に何があったんだよ……)
正直、不穏なことが起きそうな予感だ。俺は初めてランスの年齢を聞いた。10歳の頃から婚約を結んでいたのだとしたら、何故“元”婚約者なのか。
そこら辺は話を聞かないといけない気がして来た。
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