表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/55

23 旧王都の調査

魔獣 マーナガルムの件から60日が経過した。

経過してから、アンナさんの家で魔導書グリモワールを読み始め、約1時間。

今日はローズとカメリアも家にいており、ランスは王宮内にいるとの事。

アンナさんはいつものように、ランスの護衛役として王宮内に入っていた。

ほとんど毎日のように、ローズとカメリアはランスと一緒に王都は遊びに出かけているところを見ると、子供って元気でいいね〜という気持ちになった。


「2人は今日はどうするの?」

「……ヴィーゼさんって、ギルドに入っているんですよね?」

「私たちもギルドに加入したいです!」


と、言い始めた。

正直驚いた。今まで外で元気よく遊んでいたこの子達が、そう思い始めた事を。

だが、俺に拒否する権利はない。そうなると、ギルドの方へ行き、新規申請をしてから、初の魔物退治……となるな。


そこで思い出す。新規申請には銅貨5枚必要。

2人となると、銅貨10枚。変換して銀貨1枚としたほうがいいか。

お金に関してはかなり溜まっているほうだと思うし。


座っていた椅子から立ち上がり、布袋を手に持つ。

袋を開けてみると、そこには大量の通貨があった。

まぁ、当たり前だが…。

これを使って2人にギルド申請させるか。


(あれ、でも待てよ?2人って魔法とか放てたっけ?見た事ないんだけど……)


俺は2人の方向を見る。

首を傾げており、キョトンとし顔をしていた。

仮に魔法を扱えないとなると、アンナさんみたいに剣で戦うか、防御兵みたいに盾を用いるか。


考えても仕方ないため、一応2人を連れてギルドの方へと歩いていく。





「おぉ! ここがギルド!」

「カメリア、大声出しちゃダメ」

「あの、ヘイルテさん。この2人を新規申請させたいのですが」

「はい、もちろんいいですよ」


ニコッと微笑んだ。

俺は2人を受付の方へと連れて行き、名前を書く。

ギルドカードを渡され、必要事項と説明。禁止事項を言われたのち、掲示板の方へと行く。


「わぁ! たくさんある!」

「ほんとだ。どれ受けるんですか?」


掲示板には色んな依頼が載っていた。


・ドラゴン退治


・川に潜む魔獣退治


・旧王都の探索


(色々あるな…。だけど、この“旧王都の探索”って…。この間あの人が暴れていたところだよね? 奴隷だとかの……。そういえば、この2人の故郷の人たちとかは、いいのか? それは絶対やらないとだよな)


肝心な事がすっかりと頭から離れていた。

それじゃあ何のために、この子達を助けたのか意味がなくなってしまう。一先ずは、この旧王都の探索だ。


申請した後、先に武器屋の方へと寄った。

始めてくる武器屋。今まで来た事ない分、嬉しさが倍だった。

扉を開けると、真っ先にカメリアが中に入る。田舎に住んでいたというこの2人は、武器屋を見たことがないかのようだった。

まぁ、俺もだけど。


「よぉ、いらっしゃい! なにをお買い求めかな?」


気前のいいおっちゃんが店主をしているようだった。

頼れるおじさん感が溢れ出しており、俺が前世の姿であっていたら友達になろうと誘っていただろう。

それはどうでもいいとして、流石は武器屋。

防具に盾。剣も短いものから、長いものまで多種多様だ。


(この子達が持てそうな剣……。盾は流石に無理そうだな。身長見る限り……。って、俺も一緒ぐらいじゃん)


成長しない種族なだけあって、めちゃくちゃ不満である。

成長しないということは、これから先ずっと子供扱いされるのだろう。40歳生きて来た俺が、子供扱いされるのは正直嫌。

小学生の時におも◯ししてしまった時より、嫌。

その時は小6。ホント今となっては笑い話だわ。


「…んじゃあ、これお願いします」

「あいよ! でもお嬢ちゃん、流石にお嬢ちゃんの姿では無理じゃないのか?」

「うぐっ!」


おっちゃん、痛いとこ突くなぁ。

その場は苦笑を浮かべたが、一先ず短い剣を買う事にした。

重さ的にもちょうど良く、2人が持っても振り回すことができるぐらい。


金貨1枚というのは、まぁまぁいい値段じゃないか?

と思いながら。


準備も整え、いざ出発。

パーティーメンバーとなった為、俺は一応2人のギルドカードを見る為、2人に貸してもらえるように頼んだ。

簡単に貸してもらい、俺は2人の名前のところを指で触れる。

本来なら、ステータス画面が表示されるのだが、なぜか表示されていない。


(どういうことだ?)


俺は不思議に思いながら、2人にギルドカードを返し、自分ギルドカードの方で自分のステータス画面を見た。すると、俺のギルドカードに2人のステータスが付与されていた。

これは正直考えても、仕方がない。帰ったらヘイルテさんに聞こうと、この事は胸の内にしまった。


「さて、旧王都の方へ行くか」

「おー!」

「…元気いっぱい」

「だね〜」


尻尾を激しく振り続けるカメリアの後姿を見て、俺たちはそう思った。

旧王都へ行くには、旧王都への入り口の場所へ行かなければならない。その場所は人気がないところにポツンとあり、そこまで行くには王都を抜け、路地裏あたりの方へ行くのが、最適ルートとなっている。





旧王都へ行くために幾度の角を曲がり、やっと着く。

神聖王国リアモスは現在の王都と、旧王都の面積を考慮すれば、相当なでかい国となる。

俺たちは再び旧王都へと足を踏み入れた。

崩壊しきった旧王都の中に、今でも残り続けている当時に立っていた建物の残骸。

王都は晴れていたはずなのに、ここでは暗く感じてしまう。賑わっていた王都とは別に、旧王都は薄気味悪いほど、シーンとしていた。

ここで誰かの足音や、声が聞こえれば、それはそれで恐怖ではあるが。


意を決したローズとカメリアは、ゆっくりと足を進める。一緒に足を進めると、そこは以前来た時よりも、魔獣の根城が多い。

スライムやゴブリンなんかは、全然平気ではあるがグールなんかも住んでいるようであった。

グールはCランク魔物ではあるが、一撃一撃の追撃が致命傷を負ってしまうほど。


それにオークにオーガも存在していた。これはまさに、魔物の宝庫。と言うべきか。おそらく依頼内容はこれのこと。危険な魔物達を倒す事が、依頼の内容だと思われた。


(こりゃまずい)


そんな絶望的光景を目の当たりにし、早速も命の危機を感じ取ってしまう。

地獄が存在するのであれば、異世界での地獄はここだろう。まだBランクの魔物魔獣がいないだけマシではあるが、骨の折れる作業に違いない。


(だが、レベルアップには丁度いい場所だな。使役は……、無理そうだ。数が多すぎる。使役をしている間に噛まれて死んでしまったら、元も子もないし。もし俺が死んでしまったら、この子達をどうするか……)


使役するのが無理なほど、敵の数が多過ぎている。

こんな壮絶な光景を見ている、2人の顔も青ざめているのは、確かだ。


(ふぅ、やるっきゃないか)


目の前にわんさかといる、魔物達相手に先手必勝を行う。


「———『電流カレント』!!」


電流の蔦が次々と魔物に当たっていく。


ヒューー!     ビリビリッ!ドカン!!!


ギャーーーーーー!!


キェーーーーーー!!


ヴァアアアアアアア!!


と、魔物達はそれぞれ叫び声を出す。

ヴィーゼが先頭で突っ切り、ローズとカメリアは襲って来た魔物達を、剣で振りかざす。


だが———。


足がすくんでおり、思うように攻撃ができずにいた。これはまずい…。

隙を見たグールは2人に襲いかかる。

魔法で放つか?いや、当たったりでもしたら、意味がない。

くそ、どうすればいい?どうすれば……。


グールは餌であると思っている2人にジリジリと、近づいていく。グールは一撃のダメージが高く、人喰い魔物だ。

今から起こる未来。それは、考えなくてもわかる。

そしてここで、なにもしなければ、俺はきっと後悔する。

そんなの、ごめん被たい。


「……ふぅ。剣を振り下ろせ!! このままだったら死んでしまうぞ!!」


俺は力一杯出せる声を出した。怒鳴り声にも聞こえるだろう。だが、ここはこうするしか無い。

風魔法で距離を詰めて、魔法で身体能力を上げて、パンチ力を上げる?

その前に、食われる可能性が高い。

今、俺がいる場所と、2人がいる場所。微妙な距離だ。近くもなく、遠くもない。そんな微妙な距離だからこそ。これしか方法がない。


「……あ、あぁ…」

「……やるしか、ない…。はぁああ!!」


ローズはどうやら、意を決して持っていた剣をグールに斬りつける。

だが、あと1人。グールが残っている。カメリアはまだ、恐怖で足がすくんでいる。


どうフォローをしたらいい。


「カメリア!! やるのよ、このままだったら家族に会えない!!」

「…………! うん、わかった!」


ローズのその言葉でやる気に満ちたカメリアは、持っていた剣で大きく振り落とす。グールに襲われる前になんとか倒す事ができたが、そっちに気が取れ過ぎており、置かれている状況に目がいっていなかった。


「なっ!?」

「グォオオオオ!!」


近くまで来ていた魔獣の狼に、襲われてしまった。


「くそっ! 離れろ!!」


抵抗はしているが、ビクともしない。

やはり、この体型では力が全く持って出ない。


「ヴィーゼさん!」

「あぁ!」


このままじゃ死ぬ。

ここは異世界。ゲームとは違う。そしてここは、現実世界になったんだ。

抵抗しないと……。

抵抗しないと…………。


「ぐうっ!」


腕に狼が噛み始め、激痛が走る。

くそ、どうしたらいい。どうしたら!!


「……そんなに構って欲しいなら、構ってやるよ……。『劈く槍』!!」


至近距離からの、その魔法はかなりの威力が高い。

狼の頭を貫通し、なんとか脱出できた。だが、まだ周りに敵は多い。


「大丈夫ですか!?」

「ヴィーゼさん!」

「平気平気」


腕はかなり痛いが、動けないほどでもない。

と言うより、ジリジリとダメージが入る焼死の方が痛いわ。


(くそ、この状況をどう打破するか……。何か方法があれば良いんだが……)


考えてもキリがない。目の前にいる数え切れないほどの魔物の数々。

まさか、あれから旧王都がこうなっているとは、思っても見なかったな…。


どうすればいいのか———。


この話を気に入っていただけた方、「続きが見たい!」と思った方はブックマークや、広告の下にある評価して頂けると、モチベーションとテンションが上がりまくります!


応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ