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森のエルフです。追放されましたが貰った砂漠で幸せに暮らします。

「お前たちはこの土地から出てってもらう!」


 突如、エルフの森に大きな声が響いた。

 エルフの歌うような心地よい声とは違う怒鳴り声に、周りは眉をひそめる。


 事情というのはこういう事だった。

 人間が、どうしても話し合いたい事がある、との事をエルフの森の入り口で言うから連れてきた。

 エルフの王リュート様の御前にだ。

 そうしたら、いきなり魔法契約書を広げて怒鳴ったのだ。5人程の騎士の男たちだが、人間はマナーが悪い。

 王の周りの人間は、人間を魔法で吹っ飛ばそうと構えたが、王が手を上げて鎮める。

 私も人間を土魔法でぺちゃんこにしよう、としたがリュート様に目線だけで止められた。


「よい、この地を出ていこう。やむ無くな」


 契約書を読んだリュート様が、複雑な顔で頷いた。

 サクッとサインする。

 そして、精神魔法でエルフ族全体に、


『人間の要望で、この土地を出て新たな土地カンカラ砂漠へ行く事になった。移動が終わって、人間との契約が成立するまで何も言うでない』


 私も含めて、エルフ族からは疑問の精神魔法が返ってくる。

 いや、本当に何故こんな人間の意味不明な言い分を聞くのか。


「この豊かな森とダンジョンは我ら人間のものだ! ミリアリア王国の敷地内なのだからな! お前らエルフは誰のものでもない砂漠で朽ち果てるがいい!」

「我ら人間の奴隷となるなら残ってもいいがな!」


 エルフ族は無礼な人間の声を背に移動を始めた。

 意味不明で理不尽な事でもリュート様の命令だ。

 カンカラ砂漠はだいぶ遠いが、飛べば1時間ぐらいだな。人間なら2日以上かかる距離だ。


 1時間が経った。

 エルフ族が荷物を持ち、全てカンカラ砂漠に入った。

 うん、日差しが強い。

 ちょっとこの気候はエルフには受け付けない。

 しかし、まだだ。まだ何も言ってはいけない。


 その時、リュート様の持っている魔法契約書が光った。

 それと同時にカンカラ砂漠と他の土地の境に、天まで届く光の柵が現れた。

 私たちを砂漠から逃がさないようにする為だろう。

 結構広い砂漠だ。


『もう喋って良い。好きにするがいい』


 リュート様の精神魔法がエルフ族の皆に届くと、エルフ族には珍しく一斉に話し始めた。

 リュート様に向かってではない。


「我が友なる木よ。ここが俺とお前の約束の地だ」

「太陽の光よ。少しほんの少しだけ避けてください。避けてもらった光は元の住まいの方へどうぞ」

「我が大いなる謎、我が迷宮よ。ここで謎の続きも解こう。来たれ」

「水の精霊さん。私の動物さん達に湖を良い感じで作ってください。皆で水遊びしましょう」

「はわわ、ここは暑いの〜。ここらの火の精霊さんはなるべく一つの所に集まって、お料理研究の続きだよ〜」

「では、私が。風よ。貴方の友はここです。お話しましょう」


 ものの15分程で、元の森のようになった。


「光よ! あの人間の柵を強化してくれないか。人間がもう我が土地に入らないように。ん、そうだな。我らを害する者でなければ入れて良い」


 リュート様が光の柵を強化して終わった。

 それから、リュート様は人間から貰った魔法契約書を精神魔法でエルフ族全体に見せた。


 魔法契約書は驚きの内容だった。


『一つ、ミリアリア王国内のエルフの森を引き渡す事

 一つ、エルフ族はカンカラ砂漠を新たな土地とする事

 一つ、上記が嫌な者は人間の奴隷になるなら森に残る事を許される

 一つ、上記の契約を破りエルフが森に残っていた場合は光の矢に打たれ死ぬ

 一つ、カンカラ砂漠にエルフ族が一人残らず移動し、砂漠に光の柵が出現したら契約は完了する』


 驚きのガバガバ内容だった。


「我が妃ルビーよ。相談も無しに移動を決めてすまなかった」


 リュート様が私に話しかけてくる。

 私はゆるく首を振る。


「いいのです。急がないと人間の中の賢い者が気づいて止められるかもしれないし、私が騒いでこの契約を台無しにするかもですしね」


 大体、ミリアリア王国内の森は私たちがいるから繁栄していた。ダンジョンもそうだ。私たちの優しさでもって、人間達も入れるようにしていたのに。

 サービスだ、サービス。


 後、エルフ族は光の精霊とも友達だし、精霊に属さない光とも直接会話できる。

 友の光に打たれて死ぬはずがあるまい。


 奴隷などもっての他だ。

 少し残念そうにしているドMのルリィ以外は。

 まあ、あいつは自分の夫に踏んで貰えば満足だから良いだろう。


 そもそも、魔法契約書は、約束が好きな精霊の力で成り立っている。

 ある程度双方に利益がある契約にしか魔法が成立しない。

 それなのに、人間はこんな契約書が作れる時点で疑問を抱かなかったのか。

 私たちを強制的に位置をずらしただけの、妙な契約書だ。


 そう考えると、人間の意図が掴めない。

 私たち元のエルフの森の下に何か財宝でも埋まっていて、それを掘り出したかったか?

 いや、森とダンジョンを独占するような事を言っていたし、まさかな。

 我が友の土の精霊もあの土地にはめぼしいものはないと言っていたし、


『ルビーちゃん。ここの下には宝石や鉄の原料がいっぱいだよ』

『うん、ありがとう。後で土の魔法具の研究の続きに使うよ』


 この砂漠は砂漠だから未開発だったからなのか、人間が喜びそうな資源がいっぱいなのだが。


 私が考えにふけっていると、リュート様が寄ってくる。


「我が妃ルビーよ。引っ越し記念に今日は光のワインを大量に作るから宴会にしよう」

「え、宴会。光のワインっ」


 私の頭から今までの考えが吹き飛んだ。

 リュート様の作る光のワインはとにかく美味い。

『飲める光』の上に、二日酔いもない。

 ただ、私がワインを飲むと服を脱いで踊り始めるので、あまりリュート様は作ってくれないのだ。

 服を脱ぐのはマナーが悪いが、私の舞はエルフ族で随一と自負している。

 土の精霊の中でも宝石の精霊達と踊る舞は、キラキラと輝いて綺麗と評判なのだ。


 森も元通りだし、エルフ族専用の広い土地も決まったし、もう人間の事は忘れよう。

 なんてったって『光のワイン』飲み放題だ。


 そんなはしゃぐ私をリュート様が優しく見守ってくださっていた。


 ---

 リュートの視点


 エルフは長い時を生きる森の妖精族だ。

 だから我が、ソレを計画し始めたのはだいぶ前からだった。


 人間が森を狙い、ダンジョンを狙い、エルフ族の魔法の力を狙い、我が妃ルビーや他のエルフの女を狙っているのに気づいたからだ。


 我が操る光と精神の魔法は、光と精神を直接操れる。

 人間の国を光の魔法で覗き、権力と力に強い人間に飴を与えるように誘導して、不思議な魔法契約書を作らせる事に成功した。


 我らを強制的に移動させる代わりに、エルフ族に新しい広い土地を代わりとして割り当て、人間は立ち入れなくなる契約魔法書だ。

 我の意図のバランスが強いので、約束の好きな精霊に契約書が突っぱねられるかと思いきや、あっさり通ったようだ。

 基本的に精霊の教えは『皆仲良く』なので、人間側から言い出させたとは言え、通らない可能性もあったから契約書を受け取ってこの目で見たら複雑な気持ちにもなった。


 実際、ミリアリア王国は我々エルフ族の国があり、立ち入れていた為に、他の国よりも資源に恵まれていた。

 エルフの森の不思議な魔法の実や生き物、ダンジョンの財宝に魔物のドロップ品等だ。

 分けてやった物だけでは満足出来なかった愚かな人間達。


 今はどうだろう。


 我は光の魔法で、ミリアリア王国の元の敷地が一瞬で砂漠になり、ダンジョンが消えるのを見た。

 我らエルフ族がこちらに森を移動したからだ。


(余談だが、この星全てのものは光を反射して色が見えているので、光を操る我はこの星の光が届く所見たいものが見える。)


 砂漠になった森の周りで騒いでいる人間達がいた。

 これからミリアリア王国は国力が低下し、沈むだろう。

 我が精神魔法で洗脳しておいた周りの国の者たちが攻めてくる。

 さようなら、隣人よ。

「森の」というキーワードを入れてラジオの賞に応募しようと思ったが、字数が膨れ上がった。応募できる字数ではない。が、せっかく書いたから投稿するし、面白かったら星の評価を押してくれると誠に嬉しいです。

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