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第十五話 再会

 それからというもの、僕は毎日ギルマスに絡まれながらも自己のギフトの能力チェックに精を出していた。ゴールド帯のダンジョンであればほぼ全てをソロで踏破できるまでにギフトの力を出せるようになった僕は、只今全冒険者の一パーセントほどしか到達しえないプラチナランクへと昇り詰めるために昇給試験に臨んでいた。


 因みにその試験内容というのは任意のゴールドダンジョンをソロでクリア且つプラチナ帯のダンジョンをこの地域全て一層目まで踏破するというものだ。


 今日はその最後のダンジョンという訳だ。


 連日のようにプラチナ帯のダンジョンに挑んではいるが、体力そのものはむしろ昇級試験に挑む前よりも良好だ。ギルマスから毎日得る魔力よりも消費する魔力が少ないだろう。かなりの出力でダンジョンには挑んでいるはずだが、改めてギルマスの底知れなさを感じた。


「さてと、ここが最後のセーブポイントだな」


 言い忘れていたが、ほぼ全てのダンジョンには各階層に階層主が存在する。その階層主を倒さないと次の階へ進めないわけだが、僕が課せられている試験もまた次の階に進む必要はないとはいえ、この階層主を倒す必要がある。


 とは言えここまで来れば尻ごみなどはしない。それこそ一つ目のダンジョンともなれば人並みにはしたけれども、今回のダンジョンは何度も言うように最後のダンジョン。もちろん油断はしないが緊張しすぎもいけない。

 僕は深呼吸した後で階層主が待つ部屋へと足を踏み入れた。




 途端に奪われる視界。しかし冷静さは失わない。この光景に既視感があったからだ。


「ようやくここまで来ましたか。くたびれましたよ」

「結構慎重に来ましたからね。そもそも貴女ならそれぐらい知ってたんじゃないですか?」

「さあそれは分かりませんね。神のみぞ知るって奴ですよそれは」

「あなたは神ではないと?私にこのようなギフトを与えておいて?」

「その質問はまた次の機会ってことで」


 と、退屈そうな様子。生あくびまでしているところを見ると退屈していたのは事実なようだ。


「しかし、次の機会はないのでは?私が知る限りプラチナが最高ランクのはずですが?」

「おかしいですね。君はプラチナランクだけで満足するような人間ではなかったはずですが」


 ふむ。そう言われれば確かにそうだな。


 このダンジョン以外にも数多くのダンジョンがあるし、何よりこの街で一生を終えるつもりはないのだ。


「それは申し訳ありません。ここ最近はずっと昇級のことばかり考えていましたので」

「まあそれが普通の人間ですものね。まあ私は謝れる人間というのは好きですから許すことにしておきましょう」

「ありがとうございます」

「よろしい。では前の如くそろそろ時間ですので最後に一つお教えしておきましょう。実は貴方方の言うランクはプラチナが最後ではないのですよ?」

「は?それはどういう……」

「残念、時間です」


 そう言うなり僕は扉を開けた瞬間まで戻された。どうやら僕はまた不思議体験をしてしまったようだ。


 頭は混乱しているが、体は飛ばされる直前に出力されていた命令を実行しようとしていた。

 つまり、僕は何も心の準備をしないまま階層主の部屋へ足を踏み入れてしまったのだ。




 結論から言って、何とかプラチナランクに昇格することはできた。しかしそれまでの無傷記録が途絶えてしまったのは少しばかり残念ではあるけれども。


 この街何人目かのプラチナランクということでギルドをあげて宴でもしようかとギルマスからの誘いもあったが今の僕はそのノリについていけるほどの冷静さを持ってはいなかった。


 何とか宿屋へ戻った僕は軽くひと眠りして、女将の戸を叩く音で目が覚めた。


「おーい!あんたにお客さんだよ!開けとくれ!」

「はーーい。今開けますよっと」


 そうして寝ぼけ眼をこすりながらドアを開けた僕の目の前にいたのは女将だけではなく、もう一人いた。


「えっっ」

「おやおや、君は僕の顔を忘れてしまったのかい?いやその顔を見るにどうもそういう訳じゃないみたいだ。極めて優秀な僕が推測するに突然の旧友の訪問に開いた口も塞がらないってことかな」


 茫然自失とはこのことだ。

 あろうことか、僕は冒険者として最高峰に上り詰めたその日に唯一の友人と邂逅を果たしたのだった。


一月強ぶりの投稿になります。久しぶりの投稿だというのに申し訳ありませんがこの十五話を持ってグレン君のお話を一旦終了とします。


完結済みとはなりますが、万が一気が向けばこれからの物語を書くのでその時にまた読んでいただけたら嬉しいです。


十五話と短い間でしたがお付き合いありがとうございました。

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