表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/31

襲撃者と唖然

 不意に、アルトの腹がグ――、と鳴る。


「そう言えば、お腹空いたな」

「確かに、もう夜だし……」


 夜、と言う言葉に反応して、窓を覗いてみる。確かに青い空は黒色に染まっている。その事に驚きつつも、アルトは納得する。

 成程、道理で腹が減る訳だ。


「ど、どうかしら。これから、その……私と、一緒にご飯でも食べに行ってみたりする?」

「そうだな俺も飯を食べに行きたいのは山々なんだが、実はお金が無くて。悪いが、一人で行って来てくれないか?」


 昨日、クランを追放された時に、所持品は全て奪われた。

言わずもがな、そこには金品も含まれる。幸いにも、宿屋に一部のお金を置いていたおかげで、宿代を払う事は出来るが、その時点で一文無しだ。


「別に、そんな事、気にしなくても良いわよ。何なら、私が全額払っても良いし」

「いや、それは流石にちょっと……」

「ほら、さっさと行くわよ。グズグズしない」

「えっ⁉ いや、ちょっ、待っ!」


 有無を言わさず、首根っこを掴まれて、ノエルに連れ去られるアルト。宿屋の女将さんの含み笑いや、周囲の目が無性に恥ずかしかった。





「おい、ノエル。しっかりしろ。あ、コラ! こんな所で眠るな」

「五月蠅いわねぇ! アンタに、私の何が分かるっているの。私はぁ、こんなに頑張ってるのに、全く気付いてもらえないなんて」


 頬を別の意味で朱色に染めて、何故か泣き出したノエル。そんな彼女に肩を貸しながら、アルトは『黒猫亭』へと帰る途中だった。

 ノエルに連れて来られた食事処は、とても美味しかった。が、間違ってお酒を飲んでしまったせいで、この有様だ。


 ノエルは、お酒にはめっぽう弱い。一口飲んでしまっただけでも、酔ってしまう。もしも、全部飲み干してしまったら……それは余り考えたくない事だ。

 兎にも角にも、そんなノエルと一緒だから、と言う理由もあってか、『黒猫亭』への帰宅は困窮を極めていた。


 気が付けば、夜は一層深くなっていき、人気も少なくなっている。民家と道を隔てる、左右の壁に沿う様に、等間隔で設置された街灯だけが鈍く光っている。

 そんな時、ノエルが地面に倒れてしまう。


「あ――、もう、何やってるんだお前。全く」


 呆れながらも、ノエルを起き上がらせようとしゃがみ込んだ瞬間、キーーンと言うけたたましい金属音が聞こえてきた。

 発生源は、とある壁。そこは、先程までアルトの頭が在った場所だった。壁に突き刺さっていたのは、鈍く輝くナイフ。


「ッツ! 誰だ!」


 反射的に、そう叫んだ。


「チッ! 外したか」

「『荷物運び』の癖に、手間を取らせやがって」

「まあ、雑魚だし簡単に片付くだろ」


 闇夜の中から現れるのは、いかつい顔をした、ゴロツキ三人組。一人はナイフを手に持ち、一人は片手斧を持ち、一人は大剣を背負っている。

 アルトを侮っているのが、気持ちの悪い笑みを浮かべている。


「お前ら、一体何のつもりだ」

「何のつもりって、見て分からねぇのか? 今からテメェをぶっ殺すんだよ。なんせ、お前を殺したら、お金がたんまり手に入るんでな」


「一体誰の仕業だ」

「言う訳無いだろ!」


 アルトの眉間に向かってナイフが投げられる。間一髪、アルトは避けるが、体勢を大きく崩してしまう。

 ソレを見逃してくれる訳も無く、片手斧を持った男が突進してくる。とっさに、アルトはポケットから小瓶――本来の使用用途は、魔物除け――を取り出して、振りまく。


 鼻を突き刺すような刺激臭。

 アルトは匂いを嗅がない様にしているが、男は違う。小瓶の匂いを思いっきり、鼻から吸い込んでしまって、悶絶する。


 だが、安心する暇など無かった。

 ゴウッ、と言う空を切る音。発生源を確認することは出来ない。しかし、本能的に危機を察知して、咄嗟にアルトはしゃがみ込む。

 瞬間、砂埃をまき散らしながら、壁の一部が粉砕された。


「ケッ! 本当に運の良い野郎だ」


 壁にめり込んだのは、大剣。ロクに手入れもされていないのか、錆びているが、もしも直撃してしまえば一溜りも無いだろう。

 大剣を引き抜き、三人組の片割れがもう一度、大剣を振るおうとしたその時。


「……ん? 一体何なのよ、これ」


 騒がしさで目が覚めてしまったのか、地面に放置されていたノエルが起き上がった。

 これに、焦るのはアルトだ。


「何してるんだ! 早く逃げろ!」

「お、何だ? 起きたのか」

「なあなあ、お嬢ちゃん。俺達と一緒に遊ばないか?」


 だが、投げナイフと片手斧は、武器を片手ににじり寄り、ノエルに逃げる隙を与えない。アルトはノエルを助けようとするが、大剣がその行く手を阻む。


「? 何なのよ、アンタ達。って、ちょっ、こっちに来るな! 気持ち悪い!」


 近づくゴロツキ達に、心の底からの、嫌悪感を露わにする。


「気持ち」でノエルの腕が動く。

「悪い!」で投げナイフの顔にビンタが炸裂して、投げナイフは吹っ飛ばされる。


「へボッ‼」「ゲボッ‼」「ブッ‼」


 ついでと言わんばかりに片手斧を巻き込み、ついでのついでに大剣を巻き込む。そして、そのまま壁にめり込んで、三人組は苦悶の声を挙げながら、轟沈してしまった。

 


「面白そう」「次に期待しよう」「ふーーん、まあ良いんじゃね」と思った方は、ポイントよろしくお願いします。それだけでも、励みになります。

 また、よろしければ感想やブクマもよろしくお願いします。それもしていただけると、もっと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ