表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/31

目覚め

遅れました。すいません。

 目覚めは唐突に。


 無理矢理叩き起こされるみたいに、目を見開く。


 やって来たのは、腹部に感じる衝撃。内側に有るモノを全て押し出す様にして、腹を殴られたのだ。


「……ゲホッ、ゴホッ!」


 次に感じたのは、宙を浮く感覚。


 飛んでいる、と感じた時には既にアルトは何度か跳ねて、無様に地面に転がっていた。


「い、一体……何が?」


 突然の事に、まだ脳は処理をし切れていない。


 断片的に起こった事を繋ぎ合わせても、現状が全く見えてこないのだ。


「何なんだ、あの魔物……いや、化け物?」


 視線が一番最初に捉えたのは、柱に何本もの触手が引っ付いた、得体の知れない生物。恐らく、と言うか確実に、殴ったのは奴だ。


「…………!」


 視線を落とすと、その傍には倒れたノエルとクロエが居た。


 瞬間、頭に血が上る。


「テメェ、ノエルとクロエに一体何をした!」


 節々の痛みなど気にしない。


 怒りによる後押しに、立ち上がる。


 目の前の化け物を倒す策などは考えてなどいない。それでも、自身の胸の内で燃え盛る憤怒に促され、『蠢くモノ』に詰め寄る。


 『蠢くモノ』は、目を細める。


 少しの砂埃をその場に残し、気が付けばアルトのすぐ近くに居た。


「……なっ」


 攻撃に有効なアイテムも、気を逸らすのに有効なアイテムも、既に無い。故に、アルトからのアクションは、『蠢くモノ』を殴ることしか出来ない。


 大ぶりな一撃。


 簡単に避けられる。


 大きな隙が出来、『蠢くモノ』の触手がアルトの腹部にめり込む。ズブズブと触手は腹の中へと沈み、勢いよく吹っ飛ばされる。


 先程と同じ様に、宙に浮かぶ感覚を味わった後に、何度かバウンド。そのまま地面の土臭い匂いを味わいながら、寝転がる。


 完全に遊ばれていた。


 当たり前と言うべきか、当然と言うべきなのか。そもそもアルトは戦闘職では無い。だからこその『荷物運び』。


 魔物などに襲い掛かられても、道具が無ければモノの数秒で命を散らす。


 にも関わらず死んでいない、という事はそう言う事だ。


「だから、だったら、どうした」


 だが、アルトは諦めたりなどしない。甘んじたりなどしない。弱音を吐いて、無様に地べたを這いつくばる事はしない。


 数回、呼吸を楽にするために咳き込む。身体は痛い。一発一発が重く、途轍もなく強烈だ。ソレを何度も喰らっている。


 それでもアルトは立ち上がる。


『蠢くモノ』は目を輝かせる。面白い玩具に出会えた、と言いたげな表情。


「来いよ、化け物。例え何度お前に殴られようとも、絶対に俺は屈しない」

 

 屈しない。倒れない。諦めない。

 

 仮にそうだとしても、攻撃できなければ何の意味も無い。だけど、だけど、たった一発でも良いから、殴りたい。

 

 まずは最初の一発。

 

 勝てないかもしれない。だけど、勝てるかもしれない。

 

 無理だと思っても、嘘でもいいからそう信じ込み、アルトは立ち上がって一歩一歩歩みを刻んでいた。


 無駄なあがきとは思わない。いや、やっぱり心のどこかで思っていた。


「んな事分かってんだよ。……だけど、ぜってぇ諦めたくない」

 

 結局の所分からない。

 

 何度殴られようと、痛めつけようと、立ち上がる。いや、正確に言えば、立ちあがることしか出来ないのだ。


 

 幾ら近づこうとしても、何度近づこうとしても、結局最後は殴られてしまう。

 

 やっぱり遊ばれる。


『蠢くモノ』にも、アルトを見て呆れた様子。

 

 諦めが悪いとか、悪あがき、と言う領分は既に超えている。身体中を何度も何度も痛めつけられ、何度も何度も地面に這いつくばらせているのに、何故かアルトは何度でも立ち上がって『蠢くモノ』を倒そうとしていた。

 

 瞳の奥に潜んでいるのは、狂喜、と言っても過言では無い執念。ゾワッ、と柱の中心に寒気が走った気がした。

 

 ソレが恐怖だという事に気が付くのは、アルトをまた殴り飛ばした後。

 

 自分がアレに恐怖している、という事が気に入らなかった。

 

 例えアルトが何年経とうとしても、決して勝つことが出来ない存在。ソレこそが『蠢くモノ』だ。

逆立ちしたって、工夫を凝らしたって、裏を読んだって勝てっこない。ソレが事実。ソレが真実。ソレが現実。

 

 小物にもならない雑魚に、魔法を使う何て『蠢くモノ』には我慢ならない。しかし、そろそろコレにも飽きた。


 さて、どうするべきか。

 

 触手を用いて周囲をまさぐると、何かにぶつかった。

 

 目玉の一つを動かせば、ボロボロになった獣人の少女。



――ああ、そう言えば、コイツが居たか。


 

 内心で、下卑た笑みを浮かべる。


「おい、何やってんだよ。止めろ……止めろ!」

 

 最初から、見せしめに殺しておけば良かった。触手で足に絡みつき、ぶら下げて持ち上げる。後は、胸を貫けば、アルトの絶望を浮かべた表情が見れる。


『蠢くモノ』は心が躍った。

 

 さて一体どんな反応をしてくれるか。楽しみだな。

 

 そう思っていた。

 

 不意に、雷鳴の様に、全身に駆け巡る鋭い痛み。

 

 一体、どういう事なのだろうか。『蠢くモノ』は自身が見ている事実が、信じられ無かった。切り裂かれ、断面を晒す触手。

 

 獣人の少女は居ない。

 

 では、何処に行ったのか。視線を巡らせて、捜す。捜す。捜す。


 

 見つけた。



『蠢くモノ』は素直に驚く。

 

 少し離れた距離に抱えられた、獣人の少女。

 

 抱えていたのは、何を隠そう、さっきまで自分が遊んでいたアルトだった。手に持っているのは、鈍く輝く水晶の剣。


「何か、カッコいい」

「『蠢くモノ』性格悪!」

「毎日投稿頑張ってるじゃねか、褒めて遣わす」

「続きが気になった」

 と思った方は、ポイントよろしくお願いします。それだけでも、励みになります。

 また、よろしければ感想やブクマもよろしくお願いします。それもしていただけると、もっと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ