拙い反逆1
毎日投稿が最近難しくなってしまい、話数を削る事にしました。楽しみにしていてくれた方には、大変申し訳ありません。
ですが、毎日投稿はこれからも極力続けていきます。
また、時間的に余裕を持ってますので、やっと別の話の修正目途が立ちました。修正しないのかよ、と思っていた方々。大変お待たせしました。
「さて、それでは行きましょうか」
あどけない笑みを浮かべながら、全く笑えない無い事を口にしながら、ラムテールはアルト達の下へと向かおうとする。
が、クロエは動かない。
ラムテールの笑顔は曇る。
「さて、これは一体どう言った真似でしょうか? 私の花嫁」
口調こそ紳士的だが、自身のペースを崩された事に対して苛立が込められている。額には青筋が浮かび、向けられた浮き出る怒りを隠す為の作り笑顔。
余りにも短気すぎる。
たった一瞬で膨らんだ殺意に、思わずクロエは悲鳴が漏れ出てしまう。
本能がここから逃げ出せ、と叫び、自然と身体はソレに従って後ずさる。だが、理性は従わない。
「どうしたこうしたも、従う訳無いだろ。アイツらは私の大切な仲間なんだ。普通、どうにかして止めるにきまっているだろ」
恐怖に押しつぶされそうになりながらも、精一杯の反抗。
しかし、すぐにそれが愚行だった事に気が付く。
不意に伸ばされる手。
クロエはそれに気付かず、気が付いたのは自身の首が絞められた時だった。
「あ、ガッ⁉ ヒュッ、コホッ」
そのまま持ちあげられ、苦悶の表情を浮かべる。肺は酸素を欲し、何とか自身を縛る楔から逃れようとするが、占められた手はビクともしない。
マズイ。このままでは死んでしまう。
そう危惧した瞬間、
「誰が、旦那様に口答えしても良いって言ったんだ、テメェ!」
思いっきり、顔面を壁に突っ込まれる。
「ガハッ!」
くぐもった声。
一瞬意識が失う。
が、幸いにもすぐに取り戻す。
ラムテールの言動がノエルには理解できなかった。
さっきまで、花嫁だ何だと言って、まるで壊れモノを触るかの様に、丁重に扱っていたのに。今は、自身のストレスを発散させる為の、八つ当たりの道具でしかない。
まるで、とても珍しいモノを貰った子供みたいに大切にしていたが。ソレが自身に牙を向いてしまった事から、癇癪を起してしまった子供みたいだ。
もう一度、壁に打ち付けられる。
「ウグッ!」
木々の独特な香りと、ざらついた感触を味わいながら、声がこぼれ出てしまう。それを快く思わなかったラムテール。
先程までの丁寧な口調を崩し、怒気が強まっている。こちらが素なのだろう。
「お前、何、何声出してんだよ。何逆らってんだよ。分かってんのか? 俺だって本当はこんな事したくないよ。でもさ、旦那様に逆らったんじゃん。だったらさ、躾が必要だろ? なあ、そう思うよな」
思う訳が無い。
壁に何度も何度もぶつけられる中、抱いた感想は否定。
それはそうだ。そもそも二人は愛し合っているからこそ、そう言う間柄になったのだ。クロエは当然、ラムテールに恋愛感情など抱いていない。
おまけに、花嫁とは名ばかりで、その扱いは粗暴の極み。
暴力を振る何て論外だ。
躾が終わり、クロエはその場で投げ出される。ようやくまともな呼吸。咳き込みながらも、空気を取り込んで何とか落ち着かせる。
近づいてくるラムテール。
顔に感じる痛みは堪える。
また、さっきの様な事をされてしまうのか。と、思わず目を瞑ってしまう。だが、与えられたのは「痛み」では無く、くすぐったさ。
見ると、何故かラムテールは慈愛心に満ちた笑みを浮かべて、ついでに涙を流しながら、クロエの頬をさすっていた。
「本当に。ごめんなさい。本当にごめんなさい。暴力何て振ってしまって。私は最低だ。花嫁に手を挙げてしまう何て。本当にごめんなさい。本当にごめんなさい」
さっきまでとは打って変わって、しおらしい態度。
先程までの猟奇的な面影は微塵も感じられない。まるで、自分が先程取った行動を悔やんでいる様、反省している様だった。
余りにも気持ちが悪く、得体が知れず、背筋が凍ってしまう。
もしもここで快く思わない言葉を発してしまえば、先程みたいな地獄が待っている。流石のクロエでもそんな事は分かっていた。
だから、「大丈夫ですよ」と声を掛けようとするが、
「さて、それじゃあ、下に居る奴らを殺すとしましょうか」
唐突に表情が変わる。
泣き顔は消え失せ、最初に出会った時と同じ様にあどけない笑みを浮かべている。当然、泣いていたという面影は何処にも無い。
気味が悪かった。
こうもころころと顔が変わる事が。対応が変わる事が。考え方が変わる事が。だが、一つだけハッキリしている事がある。
「断る。お前なんかに、私の大切な友人を殺させるわけが無いだろう」
目の前にいる奴が、どうしようもないクソ野郎と言う事だ。
「ああ? まあ、これは躾が必要ですね」
先手必勝。
「アイスニードル」
唱えられた言葉は、大気中の水分を氷へと変える。
不揃いだった氷は段々と形を変えてゆき、刺の様な形に変わっていく。それが数十本。眼前で佇む敵を穿つ為、一斉に掃射される。
素人がこの光景を目の当たりにすれば、クロエが勝利したと思うだろう。しかし、結果はそう上手く事を運ばない。
「全く。本当に困りましたね」
何処からともなく現れるのは、靄がかかった何か。
壁をすり抜けた現れたソレは、氷の刺を次々に打ち砕いて行く。
「……ッツ!」
そう一筋縄では行かない。
しかし、先程のアレは一体何だったのだろうか。クロエの知っている職業の中には、あんな防御方法を取る職業は存在していない。
(まさか……希少職?)
職業の中には、オーソドックスなモノもあれば、レアな職業もある。そんなレアな職業を総称して、希少職、と呼んでいる。
希少職だとすれば、『魔術師』である自身とは分が悪い。
一旦体制を立て直すか……と。そう、考えてしまっていたから、本人が気付かぬうちに隙が出来てしまった。
「良いんですか? 集中しなくても」
「……!」
『魔術師』特有の魔法発動時の膠着。ソレを利用して、ラムテールは一瞬で距離を詰め、尚且つ鳩尾に重い一撃を叩き込む。
クロエの身体に拳はめり込み、そのまま衝撃は身体中全体に広がっていく。思わず空気を吐き出し、そのままくの字になって膝をついてしまう。
速すぎる。
「全く。まだ躾は終わってませんよ。私に牙を向いた罰を受けないと。ほら、後数十回は殴らないと」
にっこりと笑うラムテール。
しかし、その裏には途轍もない邪悪さが滲み出ている。
「面白そう」「次に期待しよう」「ふーーん、まあ良いんじゃね」「さっさと修正しろ」と思った方は、ポイントよろしくお願いします。それだけでも、励みになります。
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