幸福
君とあれる幸福
「私は幸せだ」
君は傷だらけの体でそう言った。
そして嘘偽りのない笑顔で僕を見た。
「なぜそう思うの」
僕には君の言っていることが理解できなかった。
なぜなら、君も僕もボロボロだった。
そのうえ、君なんて僕より重傷で、死にそうになっているのに。
それなのになぜ、幸せだなんて言えるのか。
君は少し悲しげに微笑んで僕の頬に手を添えた。
「いつかあなたにもわかる日が来るわ。だから、生きて、その時が来るまで。
そう言い残して、君は息を引き取った。
それから僕は必死に生きた。
君との約束を守るために、どれだけ苦しくても生き続けた。
でも、そんな日々も、もうすぐ終わりそうだ。
体から熱が失われていっているのがわかる。
視界はかすみ、指一本動かせない。
それでもぎりぎりまで考え続けた。
必死に過去の中から幸せを探す。
そして気づいた。
幸せな過去として思い出されるのは、君との思い出ばかりだった。
もしかして、君もそうだったの?
だから、君は僕を見て微笑んだの?
あぁ、君ってホントに意地悪だ。
「僕は幸せだった」
ある朝物乞いの少女は、穏やかに微笑む血まみれの遺体を見つけた。
君とあれた幸福