第6章:孤高の機械銃士
薄暗い廃ビルの中では黒カラス強盗団が騒ぎあっていた。ある者は歓喜の喜びを歌に乗せて歌い狂う者、ある者は奪い取ったお金を宙に投げ踊り狂う者、その中に人質として捕らわれの身であるティルの姿があった。ティルは両手を縛られ、口元をガムテープで塞がれ身動きのとれない状態にいた。
昨日シークの部屋を出た後、街の方まで戻ってみて、なにやら騒いでるなと近寄ってみれば、黒カラス強盗団と名乗る連中に人質として捕らわれて、今に至る。
ティルはどうにか逃げ出せないかと辺りを見回してみる。
コンクリート造りのその廃ビルの中にはビルを支える大きな支柱が所々に点在していて、二階と思われる階には壁沿いに人一人通れる通路があり、下の階に落ちないように手すりが設けられている。階ごとに大きな窓があって、そこから差し込む太陽の光が暗いビルの中を照らす唯一の光源となっている。とても古い建物のようで壁にはそこらかしこにヒビがあるのが分かり、二階の窓は石でも投げつけたのかのように割れていた。
とても逃げ出せるような状況下ではなかった。
こちらの世界に来てからというもの、本当についてない。お供の者とはぐれたり、行き倒れになったり、強盗団に人質として捕まったりと、毎朝毎晩神様に祈りを捧げてるというのに、なぜこんな不幸な目に会わなければいけないのか?
こんなんじゃ神様より行き倒ているちころを助けてもらったシークの方がよっぽど神様に見える。ああ、いけない。神様を否定することなんて思うことではない。それが私の世界の決まり。祈れば必ず願いは叶う。神様・・・どうか私に救済の手を。
すると、黒カラス強盗団の二人の男性がティルのもとに近寄ってきた。
「なぁコイツどうするよ?」
「もう必要ねぇからバラしちまおうか?」
「いや、コイツ変な格好してるけど結構かわいいぞ」
一人の男がいやらしい目つきでティルの体をなめまわすように見た。
「バラす前にコイツと遊んじゃってもいいか?」
「ご勝手にどうぞ」
「へへ、かわいいなお譲ちゃん。大丈夫だよ。やさしくしてあげるから」
その男は舌なめずりして自身のズボンに手をかけた。ああ、神様・・・私には楽に死ぬことも許されませんか。まだあの人に会ってないのに・・・。こんな所で死んではいけないのに・・・。神様・・・どうか私に救済の手を・・・。
「そこまでだ」
聞き覚えのある声が廃ビルの中に響く。黒カラス強盗団の一味の視線を独占するその男は神様でもなんでもなく、私たちと同じ人間だった。