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第2章:ミノムシ少女

 このフリーディアは大きな敷地内にいくつもの施設が存在する。校長室や教室などの教育施設をはじめ、他にも戦闘訓練施設、開発研究施設、学生寮などといろいろな施設が点在する。


シークたちが目指す開発部は開発研究施設にある。普段は生徒たちも訪れる機会はないが、支給された武器の修理やメンテナンスなどパラディンともなれば多用することになる。


 シークたちがその開発部に訪れてみると、開発部の中では相変わらず研究員たちが黙々とパソコンを叩いている。すると、シークたちの存在に気がついた一人の研究員が歩み寄った。


「やぁシークさん。機械銃のメンテナンスが終わりましたから持ってきますね。少し待っててください」


「ああ、頼んだ」


 研究員は奥の部屋へと入っていく。次に奥の部屋から出てきたのは、先ほどの研究員ではなく、シークにとっては見慣れた男が出てきた。


「おう!シークじゃねぇか!それにラビーも!」


 ガハハと笑いながらヒゲ面の研究員がシークたちのもとへ歩いてきた。その豪快な笑い声に周りの研究員たちが迷惑そうに見ている。


(また厄介なやつが来たな・・・)


「サダのおっちゃんお久しゅう」


「なにか用ですか?」


 シークはめんどくさそうに聞いた。


「なんだそのめんどくさそうな感じ?俺といるとめんどいってか?」


 このサダという男は一応この開発部の室長であるが、いつもへんなものを勝手に開発してシークたちに見せびらかしている。解雇されないのが不思議なくらいだ。


「で、なにか用ですか?」


 シークは再び聞いた。こんな人と世間話をしたくないという心の現われだろうか。


「相変わらず無愛想だな。そんなんじゃ一生結婚できねぇぜ!」


サダは大口をあけてガハハと笑う。周りの研究員たちがまた迷惑そうにこちらを睨んでくる。


(あんたも一人だろうが)


「お、そういやまた新しいもん開発したんだったな」


「えー何々?」


期待して目が輝くラビー。


「ちょっくら待っとけよ」


そう言うと、サダはゴソゴソと自分のポケットをあさりだした。ガムを出し、小銭を出し、紙くずを次々と出していく。ずぼらな性格がポケットにまんま出ている。


「おっとコイツだ」


ようやくお目当てのものが見つかったと思いきや、それは星のデザインのバッジだった。


「なんだこれは?」


興味を示したシークはバッジを手に取り眺めてみる。バッジの裏側にはなにやら精密な機械が組み込まれている。


「聞いて驚くなよ。そいつには小型カメラが搭載されていて、そのカメラに写った映像を俺のパソコンで見ることができるんだ。しかも、盗聴器&発信機付きにさらにトランシーバー機能も付けているんだ!」


 サダはエヘンと胸を張った。


「へぇーこんなちっこいのにすごいな〜」


 高性能なバッジに関心するラビーとは裏腹に、シークは一つの答えにたどり着いた。


「あんた、これって使ってストーカーでもすんのか?」


「えっ・・・」


 サダとラビーの顔が一瞬にして固まる。


「ウソ!?マジ!?キモッ!」


 さっきまで関心していたラビーだったが、シークの一言により、バッジを汚いもののようにに放り捨てた。


「いやいや!ちがうちがうちがう!!そんなんじゃねぇって!!!」


 サダは誤解を解こうと、首と両手を横にぶんぶん振っている。


「あんたまさか今まで渡してくれたもんにも・・・、キャー気色わる!近寄んなー!」


「だから違うっていってんじゃねぇかぁ!信じてくれよ!」


「痴漢や!痴漢!訴えてやるからな!」


「本当にそんなつもりじゃねぇんだよぉ・・・。信じてくれぇって・・・」


 ついにサダは膝から崩れ落ちた。よく見ると、うっすらと涙を浮かべていて、目が赤くなっている。どうやら本当にそんなつもりで作ったわけではないようだ。思ったことを素直に言ってみただけなのだが、自分のせいでこんな混乱を招いてしまったんだと、シークは少し反省した。


「ほんまサイテー!もう声かけんといて!」


 ラビーはそう吐き捨て、メタルブレードを走らせ、さっさと開発部から出ていった。


(なにしにここに来たんだよ・・・)


 取り残された二人の間には気まずい空気が流れていた。「本当にちがうんだぁ・・・」と、泣き崩れるサダと、めんどくさいことになったとため息をつくシーク。


(仕方ない・・。励ましてやるか・・・) 


このままでは周りの迷惑になると思い、とりあえずサダを励まそうとシークは泣き崩れるサダの肩に手を置いた。


「こ、こういうの前からほしかったんだよな」


 もちろんウソである。


「ほ、本当かぁ・・・?」


 サダは顔を上げた。その顔は涙や鼻水などでグシャグシャであった。大の大人がみっともないことだ。


「あ、ああ、任務などで使えそうだからな。もらっとくよ・・・」


 シークはそう言い、バッジをポケットの中に入れてみせた。それを見たサダはさらに目から涙を溢らせ、シークの腰に抱きついた。


「やっぱりお前はいいやつだな〜!好きだぞぉ!」


「お、おい!なにをする!離せ!」


 シークはサダを引き剥がそうとするが、理系男とは思えない腕力で掴まれていて引き剥がすことが出来ない。


「離せと言ってるんだ!」


 仕方なくシークは隙だらけのサダの首筋に手刀を食らわせる。ギャッと怯むサダをすかさず引き剥がし、そのまま地べたに叩きつけた。


 サダはそのまま地べたに寝そべる形でピクリとも動かなくなった。どうやら気絶したらしいのだが、悲しいことに、この光景を見ていた周りの研究員たちはサダを助けようともせず、無視してパソコンを叩き続けているのだ。サダがこうして静かに寝ているほうが研究員にとっては仕事がはかどるようだ。


 しばらくして、奥の部屋から先ほどの研究員が「お待たせしました」と、シークの機械銃を持ってやってきた。途中、気絶するサダを見てうわっと声を上げて、シークに「どうしたんですか?」と聞くが、シークは「そこで寝るのが好きなのだろう」と、適当にあしらった。やはりこの研究員もサダを起こさせようとせず「そうですか」と、あまり深くは聞いてはこなかった。


「ではこれはお渡ししますね。ご要望のように従来の6発の弾倉から8発の弾倉の変えておきましたから、前よりさらなる連射が可能となりました」


 渡された機械銃の弾倉を見てみると、確かにレンコン状の穴が8つある。確認し終えたシークは機械銃を腰のホルダーに差し込んだ。


「手間をかけさせたな」


「いえ、またなにかありましたら、お申しください」


 シークが開発部を出るときもサダは目を覚ますことはなかった。




 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。いろいろなことが起きて、貴重な昼休みが潰れてしまった。


 次授業は一般カリキュラムの数学と国語。


 シークはフリーディアを卒業した後は軍隊に入るつもりなので一般カリキュラムは自分には必要ないと考えている。そのためシークはよく授業をサボることがある。今日もそのつもりでいるのだろう。


(今日はサボるか・・・)


 シークの足は教育施設ではなく、学生寮のほうに向いていた。


 フリーディアの学生寮はA棟、B棟、C棟の三つの棟に分かれており、シークの部屋はA棟の1階の一番奥の部屋。学生寮の部屋は普通相部屋制なのだが、パラディンになると一人で部屋を使うことができる。


 棟の玄関には学生証をかざさないと入れないセキュリティシステムがあり、学生や教師以外の部外者は入ることはできない。


 A棟の学生証認識センサーに学生証をかざすと、ピッという電子音という音とともに電子扉が開き、シークは中に入った。


 入ってすぐ右に上の階への階段があり、前には奥まで伸びる通路に電子扉が連なっている。


 シークは奥の自分の部屋を目指してコツコツと歩いてると、自分の部屋の前にでかい金のミノムシのようなものが見えた。


(なんだあれは?)


 そう思って駆けつけてみれば、それはミノムシなんかではなく、白い修道服を着た長い金髪の少女であった。

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