第2夜:仮
少し熱すぎるくらいのお湯が降り注ぐシャワールームで、俺はバスタブの中にうずくまっていた。
『兎にも角にも、風呂! 気づいてるか? アンタ相当色んな臭いするよ』
ワンルームに着くなり、ギャリーという男がそう言った。着替えとバスタオルを手早く用意してくれ、無理やり俺に持たせてバスルームに押し込んだのだ。
シャワーを浴び始めると身体中にある傷がじんじんと痛み、俺はまた涙を流した。
目的やゴールを失って、次の目標を見つけるまでの間、人はどんな風に日々を過ごすものなんだろう。どこに向かって歩けばいいのか解らない状況でも、立ち止まっていたらこの街の深い闇に飲み込まれて死んでしまう。とりあえずでも、亀のようなスピードでも、歩き続けなければいけないけど、じゃあどこを目指す?
こんな風にしか考えられない俺を、クソ真面目は早死にするぞ、とバーで言い捨てた男がいたなぁと思い出す。まったくもってその通りだ。
シャワーを終えてバスルームから出ると、レコードが流れている中でギャリーがトマトを切っていた。手つきが慣れていることを見ると、もしかしたら彼は厨房に立つ仕事でもしているのかもしれない。
「さっぱりしたな!