保健室
※残酷描写あり
※鬱描写あり
「こら!動かないのっ!もう、受験も控えてるのにこんな傷なんか作って」
「す、すみません…」
呆れ気味な表情で傷口の消毒をしながら、保健の先生こと和田琴花先生は俺を叱った。
傷は、さっき奪取した鋏を投げ捨てた時に先端が手の平を切っていて出来たものだ。床には左手から血が滴り落ちていた。
まったく気付いてなかったわけだけどな。
『ちょいちょい。手、大丈夫?』
へっ?手?
な…なんじゃこりゃあああっ
『小椋くん!先生、早く手当てを…』
…
それから数分後、俺たちは保健室に来ていた。来ていたというより、連れてこられた。
(図書室の床に落ちた血と髪の毛は掃除用具の雑巾と箒で片付けた)
密室のはずの図書室に現れた和田先生は、どうやら俺達が今日そこにきていることを最初から知っていたらしい。二重扉のうち2つ目の扉のすぐ内側で一部始終を聴いていたことを明かしてくれた。
もっともそれは楓も同じで、俺に大切な話をするにあたり、先生に見守っててもらう予定だった とのこと。
事情を聞いた後、楓から何度も「ごめんね」と謝られたが、先生が来る時間が予定より遅れていたことや、互いに感情が荒ぶって起きた出来事の色々は明らかに想定外なのだ。腹なんて立つはずもなかった。
「手の傷はこれでよし、と。あくまで応急処置だから、あとの手当てはお家の人にお願いしてね」
「ありがとうございます。もう治りました」
「いや、だから応急処置だって…」
俺が勝手に作った傷で楓に負い目を感じてほしくなかったので、包帯の巻かれた左手で強めにグッパーと動かしてみる。
傷口よ。今しばし耐えていてくれ。
「先生、楓は…」
「制服に付いちゃった血は今日のうちにすぐ処理すれば大丈夫だけど、髪はそうはいかないわね…」
「すみません」
「先生、小椋くんは悪くないんです。これはボクが…自分で…」
乱暴に切られた楓の髪を見た先生の反応に、あらためて事の大きさが感じとれた。
先生の髪は普段、腰まで届きそうなロングで緩いウェーブがかかっている。今は傷の手当の邪魔にならないように綺麗な紐でポニーテールに束ねられていた。
"髪は女性の命"と耳にしたこともある。世のシャンプーのCMの凝りぐあいからしても、女の子の髪は男以上に手入れが必要な印象だ。
楓がどういう心境で毎日自分の髪を手入れしてきたかは本人にしか解らないが、そこに何の思い入れも無いはずがなかった。
「あー、こんなにボサボサになっちゃって…」
「ごめんなさい」
先生は楓の大切な保護者である。他の教師のように学校から命ぜられた業務としての責任ではなく、己個人の意志で楓の学校復帰に関わってきた強い責任感があるのだろう。
多くを語らなくても、母親のような眼差しから楓のことを想う気持ちが伝わってきた。
「まあ…切っちゃったものは仕方ないわ。知り合いの美容師さんに話はつけておくから、そこで整えてもらいなさい。あとでお店の住所送るわね」
「あ…ありがとうございます」
左右が極端に歪になってしまった楓の髪型は、やはり一回ハサミを入れて全体を整え直すしかないようだ。
名残惜しいけれど今の楓には、むしろその方が良かったのかもしれない。
「で、小椋くん。いえ、翔太くんと呼ばせてもらおうかしら」
「なんですか?改まって」
「さっきの君の話、続きを聞きたいんだけど。というか、ちゃっちゃと話して頂戴」
やはり、そう来るよな…。
楓の悩みを聞くはずの俺は自分の汚れた秘密を明かしかけた。そのことで逆に要らぬストレスを発生させたかもしれないし、先生の立場からしても見過ごす訳にはいかないのだろう。
親殺し、人殺し、いずれも聞かなかったことにできるような言葉ではない。
「先生、あの…小椋くんにも事情があると思います。無理に今ここでやらなくても…」
「何言ってるの。あなたは彼を信頼して自分のことを話した。その彼が自分の口から、どうしてあんなことを言ったのか、お互いの為にもハッキリさせておくべきだと思うわ」
「で…でも…」
「ありがとな。でもこれは先生の言う通りだ」
本音を言うと先生にまで話そうとは思ってなかった。だが、先生の言うことももっともだと思った。
それに楓の最大の理解者かもしれないこの人に、今さら背を向けたくなかった。
「ざっくり話すけど、いいか?」
「うん」
俺が楓の目をみて言うと、楓は目を逸らさず頷いてくれた。嬉しかった。
「もし途中で辛くなったら遠慮なく言えよ。すぐ止めるから」
「うん。ありがと」
***
俺が小5の7月、大好きなお母さんは病を患った。ALS、筋萎縮性側索硬化症という全身の筋肉が失われ動かなくなっていく進行性の病気で現在も原因や治療法は見つかっていない、いわゆる難病というやつだ。
(症状を止める薬の研究も進んではいるが、まだ人体に投与できる段階ではない)
進行の程度には非常に個人差が大きく、10年以上自力で動ける人もいれば、数ヵ月で寝たきりになり眉一つ動かなくなる人もいる。
後者の多くは横隔膜や肺の筋肉も動かせなくなり、呼吸には首の根本あたりを切開し、人口呼吸機という機械の肺を管で繋ぐ。お母さんは発症から3ヶ月でこの状態になった。
気管にはすぐに痰が溜まり、これを専用のカテーテルと吸引機で吸引しないと肺炎になったり窒息死する危険も伴う。
機械の力で強制的に永遠に一定の呼吸を強いられる苦しみを避け、呼吸機の装着をせずに死を選ぶ人もいる。
呼吸機を装着してからは他の人がこれを外すことは如何なる理由があっても許されず、業務上過失致死や殺人の罪に問われる。
それらを同意の上で親父と姉ちゃんと俺は自宅でヘルパーさんの助けを借りながらお母さんの介護を始めた。
姉ちゃんは病院に勤める看護師だったこともあり、お母さんに関わる時間が取れなくても存在自体が心の支えになっていた。医者ほどではなくても、医療現場の専門職だからな。
しかし、夜間から朝までは自分たちだけで食事、排泄、体位変換(床ずれ防止)の介助と気管の痰の吸引までを行わなくてはならず、その辛さは想像を遥かに超えていた。
特に気管吸引は毎回自分の手を綺麗に洗い、アルコールで消毒し、医療用の手袋とを付け、カテーテルや機械と切開部のカニューレ(人工気道)にバイ菌が入らないよう病院と同じく細心の注意を払わねばならなかった。
この医療行為はヘルパーでも許可されているが、その責任の重さから畏怖してできない人や事業者も多い。
1年後、姉ちゃんが付き合っていた彼氏との間に子ができた。俺と親父は姉さんはお母さんのぶんまで幸せになるべきだという考えで合致し、姉さんは彼氏の家に嫁いで介護から離れた。
お母さんの体は瞳すら全く動かなくなり、完全に意思の疎通が出来なくなっていた。
多大な介護費用を捻出すべく親父は遅くまで働き、介護は全て俺が引き受けた。
ある日、介護のことで親父と口論になった俺は半ば自棄になり、お母さんに何かあれば呼吸機の警告アラームが鳴るから直ぐ判るだろうと別の部屋でゲームをしていた。
そのまま寝てしまい、警告アラーム音で飛び起きた時にはすでにお母さんの呼吸と心臓は止まってしまっていた。
俺は直ぐに痰の吸引と心臓マッサージ、手動器具による人口呼吸を繰返し行った。奇跡的に心臓は復帰、病院に搬送され一命を取り留めた。
だが、肺の片方は重い肺炎で壊死してしまい、残りの肺によりできる呼吸と生きられる時間にも限りがあった。
また、この入院中の検査でお母さんは末期の子宮癌だったことも判明し、俺らの希望は絶たれてしまった。
免疫力も体力も失われた寝たきりの患者にメスを入れることはできない。心臓も掌以下の大きさに弱りきっていた。
それから退院して、家に戻り、自宅での療養を再開した。自責の念、贖罪の気持ちも強かったと思う。
1年後、お母さんの体は限界を迎え、病院で息を引き取った。子宮癌による永続的な出血や、免疫の低下による肺炎、内臓を含めた全身の機能不全など死因は複合的なものだったと医者は言う。
親父と姉ちゃんにも連絡したが間に合わず、死に際に立ち会ったのは俺だけだった。
最期の瞬間まで握っていたお母さんの手の温もりは今も俺と共にあり、消えない。
その2ヶ月後、親父は末期の膵臓癌だと判明。全身への転移も確認され、病院で息を引き取った。
***
話を終えると、楓と先生、二人の顔はさっきよりずっと真剣になっていた。
最後まで聞いてもらえただけでも感謝の気持ちでいっぱいだった。
「俺はもう、どう生きようとも許されない。法律で裁きを受けることもできない。大切な人を死にまで追いやった罪の意識の中にあるはずなのに、心のなかではもう苦しみたくないって思ってしまう。介護の日々が終わって、自分自身それを痛感したよ……。身勝手だよな」
「小椋くん……」
気遣ってくれる楓にも申し訳ない気持ちになった。
「ずっと黙っててゴメンな。怖かったか?」
「ううん。大丈夫…。謝らなくていいよ」
「およそ想像はしていたわ。でもそんなことがあったとはね…」
先生に頭を優しく撫でられると、楓は少しだけ和らいだ表情になった。
そして改めて聞いてきた。
「きみの事情はわかったけど、話の中身からして誰にも口外する気は無かったのよね?」
「そうですね。たしかに、心臓マッサージまでの経緯でお母さんを1度死なせてしまったことは姉ちゃんも知らないし、生涯誰にも言わず墓場まで持っていくつもりでした」
「なら……どうして?」
先生は多分、楓が俺に聞けないと配慮して代わりに質問している。
「先生、俺、両親の死後いろいろ考えたんです。自分のことを振り返ったり、周りの友達や大人のことも観察して…。みんな大なり小なり人に言えないことや後ろめたいことがあっても、それでも苦しみたくなくて、安らいだり、ふとしたことで笑えたり、感動したり、無意識に幸せな時間がほしいんだよなって…ヒトってそういう生き物だよなって」
悪人の言い訳で、甘えてるだけかもしれない。
みっともないことかもしれない。
それでも、隠さず、ちゃんと伝えるんだ。
「俺なんかよりずっと両親を大切に想っている友達が、周りのやつらのせいで自分を責めたり、罪を感じたりする必要はない。傷ついてほしくない、幸せになる権利だってある、そう思いました」
「小椋くん…。そういうの良くないよ。"俺なんか"とか、そんなこと言わないで」
「そうね。天国のお母さんも悲しむわ」
うん。それも言われんじゃないかと思ったよ。
だから…
「そう思ってくれるのなら、楓も自分のことを悪く言ったり責めたりしちゃダメだ。違うか?」
「う……」
「過去がどうであっても、楓は楓、俺は俺だ。男だとか女だとか、良いとか悪いとか、全部ひっくるめて俺はお前を大切な親友だと思ってる…。思い続けるよ」
開き直りと取られてもいい。一番大切なお母さんがこの世から去った時から、失って困るものなど何もなくなって、今もただ餌を欲する獣のように目先の感情に従って他人のお節介をしているだけなのかもしれない…。
それでも…俺は決めたんだ。
「俺だって、いつ何処でこの命が終わるかわからない。だから、できるだけ自分の気持ちに正直に生きて、大切な誰かの力になりたい。それが……俺の答えです」
「えっ告白?」
!?
先生の一言に目が点になった。
「ちがいますよ!茶化さないでください…。真面目に答えたんですから」
「あら、ごめんなさい。あんまり男前なコト言うもんだからつい…、ね?楓ちゃん」
「あっ…いえ、ぼ・・ボクは…」
ほらみろ。ヘンに茶化すから余計返し難くなってるじゃねえか。
ね?って何だよ。
しかしまあ、あれだな。この楓の左右非対称な髪型も見慣れてくると結構可愛いような…。
「小椋くん、ボクも1つ……」
「ん?何だ?」
1つと言わず1000でも聞いていいぞ。明日になっちまうけど。
「小椋くんは、ボクと一緒に過ごしてて楽しかった?」
「ああ。 楽しくて、ワクワクして、幸せで、ずっと一緒にいたいって思ったよ。今もな……、おまえの顔見てると、すごく安心する」
「そっか…」
楓は俺が渡したハンカチで再び目元を拭うと、小さな声で「……ありがとね」と呟いた。
ほんの少しずつだが、瞳にも温もりが戻ってきたようだ。
俺の後ろめたい記憶を知ってもなお向き合ってくれる。その眼差しと声に救われた気がした。
「楓はどうだ?図書室で言ってた……ずっと前に、本当の自分になれて嬉しかったって言葉……、今も同じか?」
楓は首を横に振って、そして言った。
「今の方が、ずっと嬉しい」
***
時刻は夕方6時を回っていた。
昇降口の鍵が閉まっていたので俺たちは職員用の玄関から外に出た。楓には俺のパーカーを着せてフードでできるだけ頭を見られないようにした。
先生たちに知られず遅くまで居残っていたことで、事務の職員さんからきつく叱られそうになった。が、和田先生の弁護もあって軽い注意だけで済んだ。
また、今日は特別に家まで送ってもらえることになり、俺達は先生の車に乗せてもらった。
「え?じゃあこの包帯ってこんなに巻く必要無いんですか?」
「私も立場そんなに強くないからねぇ。生徒が大ケガしたように見せれば他の人も変わるでしょ?怖そうな先生も、あんがいそういう優しさは持ってるもんなのよ」
「はぁ…」
計算高いのか胆が座ってるのかわからないけど、この女すごいな…。
マイペースでいて実は考えてるというか、いろんな生徒から信頼されるのも少し解る気がする。
先生の身長は推定170㎝位。脚もすらりと長く、セーターにコートを羽織った上からでも明確に胸やお尻の位置が判るほどスタイルが良い。顔立ちもいわゆる美人の類で、姉ちゃんやお母さんとはまた違った、いわゆるオトナの女性の余裕と覇気があった。
さっきの事務の人も、おそらくこの覇気にたじろいだものと思われる。
一方、楓はバックミラーで自分の髪を確かめていた。大きな寝癖(アホ毛)にもようやく気づいて、恥ずかしそうに手でそれを押さえていた。
俺も先生も、寝癖については敢えて言わずにいたことを知って楓はますます赤面した。
「もぉぉーっ。二人とも気づいてたなんて……早く教えてよー」
「まぁまぁ、言わない方が良いこともあるし」
「うむ。味わい深い、レアな可愛さがあった」
ここは先生と非常に意見が合致した。
「可愛っ………! か、 可愛くないしっ……。もぉっ、こうなったらいつか小椋くんの髪もとびっきり可愛くしてやるんだ」
「ちょっ!?」
「あはは」
そんな会話をしていると、あと10分位で楓の家というところまで来た。
「小椋くん、ハンカチとパーカーありがとね。洗って返すから」
「ああ、何ならやるよ。それ」
パーカーは冗談だ。ハンカチは小学校の頃から使ってるものだからそれなりに愛着はある。
だが大切な涙を拭い、こっそり鼻チーンまで許し受けた時点でこのアイテムは楓を新たな主だと認めていてもおかしくはあるまい。
「ダメだよ。必ず、返す」
「わかったよ。じゃあ保健室で待ってる」
「うん。保健室――…」
俺が場所を言うと、楓はハッとして口を噤んだ。理由は解っている。
‘学校には来ない’
熟慮の末にそう決めたのなら、俺や先生が今さら変えられることでもない。
それでも諦めの悪い俺は、最後に少しだけ、さりげなく足掻いてみたかったのだ。先生は黙って運転を続けている。
「いい……の…?」
「良いに決まってるだろう。楓だって、みんなと一緒に卒業したいと思うだろ?」
「うん…。思うけど…。」
そうだ。
その気持ちが一番大切なんだよ。
「女子の制服着るの辛い……か?」
「ううん。制服は多分……もう大丈夫だけど……。でも…ボクは、また他の女子と一緒に着替えとかトイレとかを…」
「それか……」
「うん」
ダメか…。
いや、まだだ。
「なあ、れっきとした事情があって今はれっきとした女の子なんだから、もうそんなに後ろめたくならなくてもいいんじゃないか?自分のことを責めるのはよくないってさっき自分でもいってただろ」
「それは……そう…だけど…」
「だけど……何だよ?」
「修学旅行のお風呂や学校の更衣室でボクが見ちゃった人の中に、小椋くんの好きな女の子とかいたかもしれないし・・・」
ファッ?
俺が好きな女の子???
ぷっ
「はははは!なんだよ。そんなこと気にしてたのかよ。あはははっ」
「わ、笑うことないじゃん。大切なことだよ!?」
「ごめんごめん。たしかにそうだな。でも、大丈夫だよ。そんな人はいないし。いるとしたら…そうだな……きっとお前だけだ。さすがに自分みて後ろめたくならないだろ?」
『えっ… ええええええっ!!!』
それはとても大きな驚きの声だった。
間違いなく今日一番の大きな声で、俺までびっくりしてしまった。
俺、なんか不味いこと言ったかな…。
先生が車を止めて、にんまり微笑みながら俺の真似をしてきた。
「イルトシタラ、キット、オマエダケダ」
―――!!!
「あっ」
「おっ……小椋くん……。あの…それって……」
「はーい着いたわよ」
先生ぇ!
空気読んでぇ!
「電話は入れといたけど、おうちの人も心配してると思うわ。早く行ってあげなさい」
「は…はい!ありがとうございました」
楓はそのまま車を降りて、先生にぺこりとお辞儀をして帰っていった。
その後、車内は先生と俺だけになり、なんとも言えない空気があった。
「先生、俺…」
「やっちゃったわねぇ」
「ひぃぃ~ハッキリ言わないでぇ!」
車を降りた時に何となく視線を逸らされたような気がして、うまくいっていたのに最後の最後でドジったという実感があった。
秘密を明かし合ったことで、心の枷が外れていたのかもしれない。そう思った。時すでに遅しなのだが。
冷静に考えたら人間いくら親しくなっても、何でもかんでも包まず隠さずストレートに話せるわけじゃないよなぁ。
たとえ親切や好意でも、贈られて困る物や言われて困る言葉もある。解っていたつもりで、まだ全然ダメだったかも…。
そんな俺の胸中を察してなのか家の前に着いて車を降りると、別れ際に先生から『男の子なんだから、シャキッとしなさいな』と励まされた。
先生の気遣いは温かくて嬉しかったが、普段周りから男扱いしてほしい俺でも、こういうときは労ってほしい…等と女々しい気持ちになった。
でも、楓はまた学校に来てくれるかもしれないし、くよくよしててもしょうがない。
いつも通りの素顔で、また会えるようにしておこう。そんな気持ちを新たに、夜は更けていった。