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仮性彼女な私とボクと  作者: オーシャン
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真実の守護者

前話(11話)で投稿ミスがあり内容を大幅に訂正しております。状況がわからない方はお手数ですが、もう一度前話(11話)をご覧くださいませ。

爺ちゃんと曾祖父ひいじいちゃんの実家はハワイで観光ホテルや民宿を経営していて、親父が生まれるよりもずっと前から外国に知人や友人も多かったらしい。

親友たちとは家族ぐるみの付き合いを続けていたが、親父が日本人の母さんと結婚したのを機に疎遠になっていった。


それでも祖父世代同士の親睦と交流は続いていて、俺が小学4年生の春頃に外国人の親友の孫たちが日本へ移住してきた。


「それって……、この写真……、あ、こっちにもいる。小椋くんの隣に写ってる金髪の子?」


その少女が楓の目に留まるのも当然。

人形のように可愛らしい、などという月並みな言葉に留まらないほど、子供たちの中でも異彩を放っていた。

国際化が進んだ日本でも、その大きな碧眼は見るものを魅了するに十分過ぎた。


「名前は、サラちゃん。俺よりひとつ年上で、金と銀が混ざったような髪だから、いわゆるプラチナブロンドってやつだ」

「ほええ……」

「双子の弟、ソラくんもいて、侍女の龍宮さんが付いてて、半年近くこの家に7人で暮らしてたんだ」

「あ、小椋くんたちの後ろに立ってるオフィススーツの女の人が龍宮さんなんだね」


この姉弟は生まれてすぐ両親が病気で他界してて祖父母のもとで育てられた。

けど、その祖父母も既に高齢で、家庭での子育てをする体力は尽きかけていた。金銭契約での教育じゃなく、先ず家族愛を受けてほしいとの願いから盟友であるうちの爺さんの縁を頼り、2人は侍女龍宮さんの保護下で日本へ来たのだった。


「杏ちゃんはすぐ隣に住んでたのに、この二人のこと、なんでボクには話してくれなかったんだろ……?仲悪かったの?」

「当時は仲良しだったよ。でも記憶が改変されてしまってるから、仕方ないんだ」

「改変っ──?」


楓の声色が深刻なときのそれになり、

怒りとも驚きともとれない顔に見えた。


それでも話すしかないと思った。楓が自分のことを俺に話してくれたように、嫌われたくない気持ちよりも話す機会をくれた楓の優しさに応えたかった。


◇◇◇


小4の夏休み明けに水泳の全国大会に出場した俺の為に、当時所属していた地元のスイミングスクールのみんなもマイクロバスに乗って応援に駆けつけてくれた。

大会の帰りにそのバスは後続の大型トラックに追突され崖下に落下して大破した。

多数の意識不明者、犠牲者を出す大事故。


たまたま家の車に載って先行していた俺と杏はその様子を見て泣いて叫ぶしかできなかった。

犠牲者の中には身元がわからないほど損壊した遺体もあり、サラちゃんたち姉弟と龍宮さんもそのなかのひとりだった。


「ひどすぎる……。そんなの、あんまりだよ」


話を聴きながら、楓は手で口を抑えていた。


「爺ちゃんたちはお金こそあったけど、お金じゃどうにもならないことになったわけだ」

「ニュースとかでも事故による被害者遺族はPTSD(心的外傷後ストレス障害)のケアも大変だっていうもんね……」


楓の言うとおりだった。多数のカウンセラーや精神科医を手配しても、関係者が受けた心の傷は大きく、俺も杏も摂食障害や悪夢症などを起こしていたし、サラちゃんたちの祖父母は自ら命を絶ちそうなほど深刻な状態に至る。

事態を重く見た祖父母夫妻からの依頼、龍宮さんの婚約者アレクさんが来日した。

彼は外国の政府直轄の機関で働いている催眠療法士で、その技量はテレビの催眠ショーなどの見世物とは根本的に異なる、本物の記憶操作、認識改変の禁術とも言えるものだった。


「それでみんなの記憶を……」

「通夜と葬儀、告別式に来た人に術をかけて、日が経つと通常より遥かに早いペースで名前も忘れるほど遠い記憶になるように細工したって言ってた」

「でも、それなら何で小椋くんは覚えてるの?」

「うちも術をかけてもらったよ。親父と姉ちゃんには効いたけど、俺と母さんだけは何故か術が効かなかったんだ」


意図的に記憶を思い出させようとしないかぎり、つらい記憶ほど感情と結びつかないように脳がセーブをかける。

という点からみても、杏がサラちゃんたちのことを完全に忘れてしまったのは、2人と過ごした日々を大切に思っていた証なのは明白である。


「特にソラくんが杏のことを好きで、何度振られても何度も告白してた。明るくて表裏の無い良いやつで、杏も次第にその気になってたから……」

「杏ちゃんが昔ボクに話してた近所に住んでる男の子ってソラくんだった可能性もあるのかな?」

「かもしれないね」


俺たち親子は記憶の改変を口外しないことをアレクさんに約束した。

そうして日常は2人が来る前に戻っていった。


◇◇◇


「水泳も辞めた。翌年、母さんが病気に倒れて、あとは楓に話した通りさ」

「あ、ありがとう。話してくれて、小椋くんが、一番つらいのに……」


話を聞き終えて、楓は泣いていた。


「どうだろね。俺には術が効かなかったというけど、こうやって話せるってことは効いてるのかもしれないし、ただ単にサラちゃんたちのことをそんなに大切にしてなくて薄情なだけかなと、思うこともある」

「自分を卑下し過ぎじゃない?小椋くんらしくないと思うけど」

「杏の今の性格、昔馴染みの関係も、記憶の改変で空いた部分に俺が都合よく収まってるだけなんじゃ?とか考えないようにはしてるけど、ソラくんのことを思い出す度に、やっぱり俺は薄情も…」


俺の頬と口に、楓はぴたりと優しく両手を這わせて言った。


「薄情な人なら、これは何なのさ」

「あ……」


言われてからようやく俺は自分の目からも楓と同じものが流れていることに気づいた。

途端にそれは、溢れて、頬と楓の手を濡らしていった。


「悲しい気持ちはね、それだけ誰かを思ってた証。涙は、ほんとうの気持ちの、表れなんだよ」

「……」

「杏ちゃんのこと、守ってくれてて、ありがとう。もう辛いの我慢しなくていいから……。いっぱい、いっぱい泣いていいから……」

「か、楓の方が……泣いてるじゃん……」


涙と鼻水で濡れる顔を、俺たちは互いにティッシュで拭き合うのだった。

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